ドクタートラスト(東京都渋谷区)のストレスチェック研究所が、「健康リスク」業種別ランキングを発表した。2021年度にストレスチェックの実施を受託した940の企業・団体における集団分析データをもとにしたもので、最も総合健康リスクが高い業種は「医療、福祉」「運輸業、郵便業」だった。
健康リスクとは、「仕事の負担・コントロール」リスク、「上司・同僚とのコミュニケーション」リスクという2つの指標をかけ合わせた数値。仕事のストレス要因から起こり得る疾病休業などの健康問題のリスクを、標準集団の平均を「100」として示している。例えば、健康リスクが120の集団は、健康問題が起きる可能性が、平均より「20%多い」となる。
健康リスクが最も高くなった業種は「医療、福祉」(健康リスク:107)と「運輸業、郵便業」(同106)で、以下「製造業」(105)、「卸売業、小売業」(97)と続いた。
「医療、福祉」と「運輸業、郵便業」に大きなポイント差はみられなかったものの、「医療、福祉」は仕事の負担・コントロール面で、「運輸業、郵便業」はコミュニケーション面で高いストレス負荷がかかっていた。また、3位の「製造業」は、仕事の負担・コントロール面、コミュニケーション面の双方で高いストレス負荷がかかっていることが判明した。
「仕事の負担」「仕事のコントロール」「上司とのコミュニケーション」「同僚とのコミュニケーション」という4つリスクを業種ごとに分析した。
「仕事の負担」で最もリスクが高い業種は「教育、学習支援業」(8.96)だった。
この項目は、「非常にたくさんの仕事をしなければならない」「時間内に仕事が処理しきれない」「一生懸命働かなければならない」の3問で構成していて、数値が高いほど仕事の負担が大きい、すなわち不良であることを示している。
「教育、学習支援業」は、さまざまな形態の業務を一人でこなさなければならない場合も多い可能性が考えられ、ストレスチェック研究所は「そのような面から仕事の負担が個人に与える影響も大きく、長時間労働につながりやすいのではないか」と推察している。
関連記事
どれくらい仕事をコントロールできるか
仕事をする際に個人がどれくらいコントロールできるか、自分で決めた順序や方法でしてよいかの自由度を問う「仕事のコントロール」では、「医療、福祉」(7.28)がワースト(自由度が低い)となった。
同業種は総合健康リスクが最も高く、ストレスチェック研究所は「仕事の負担・コントロールに起因していると考えられる」と指摘する。人の命を扱う仕事では一刻を争う事態や緊急性の高い事態が最優先事項になるため、自分のペースで仕事のやり方を決めることはできない。そのため「仕事のコントロールがもっともしづらい」結果となった。
上司・同僚とのコミュニケーションリスクが最も高いのはいずれも「運輸業、郵便業」(上司とのコミュニケーション:7.15、同僚とのコミュニケーション:7.63)で、20年度に続いてのワースト1となった。
同研究所は、「まずは、社内での簡単なイベントや気軽に発信できる情報共有ツール(グループチャットなど)を活用し、ちょっとした雑談を増やしていくことが職場の雰囲気作りを行う上で最も効果的なのではないか」と指摘する。
4つの項目を20年度の結果と比較したところ、もっとも差が大きく表れたのは「仕事の負担」リスクで、悪化率が最も大きかったのは「金融業、保険業」(0.51ポイント悪化)だった。取引先企業への資金繰りの業務が増加したことや業績が悪化した事業者・企業に対する相談(事業戦略・経営企画・販路開拓など)を行う機会も増えていることから、仕事量に対するストレス負荷がかかっているのではないかと分析する。
調査は21年4月1日〜22年3月31日に実施。21年度にストレスチェックの実施を受託した940の企業・団体一部を対象とした。有効受検者数は32万4642人。
関連記事
関連リンク
からの記事と詳細 ( 仕事のストレスによる“健康リスク”が高い業種ランキング - ITmedia ビジネスオンライン )
https://ift.tt/Y1LHApk
No comments:
Post a Comment