テレワークの普及で一気に注目が集まったリモートデスクトップだが、以前からその利便性を有効活用していた企業も多い。ポルシェの正規販売店となるショールーム「ポルシェセンター」を都内に展開している、株式会社ブライトインターナショナルもそうした企業のひとつだ。
同社では現在PCのリプレイスを進めており、「インテル vProプラットフォーム」を搭載したDELL「Latitude 7320」を順次導入している。そこで、vProのリモートデスクトップ機能を使って、どのような業務を行っているのかを、ポルシェセンター銀座の支配人代理を務める株式会社ブライトインターナショナル 営業部 ゼネラルマネージャーの平林裕昭氏に聞いてみた。
個人情報の流出防止に、vPro搭載マシンをシンクライアント的に遠隔操作する
ブライトインターナショナルでは、営業担当者を各拠点に13~14人配置。「ポルシェセンター」で商談を行うほか、顧客の家などを訪ねてセールスを行っている。そこで問題になるのが個人情報の取り扱いだ。
営業部門では個人情報のセキュリティを強化するために、ポルシェ ジャパンの販売管理システムや、自社のサーバーからのデータの持ち出しを原則禁止している。その上で、システムやサーバーは会社支給のノートPCでしか利用できない仕組みにして、マシンの持ち出しにも制限を設けていた。
このため営業担当者が外出先から業務報告などを行うためには、会社にあるノートPCを遠隔操作することになるのだが、この作業フローには1つの問題がある。それが、“リモートデスクトップで遠隔操作を行うには、ホスト側のPCの電源がオンになっている必要がある”ということだ。
「ほかにも、お客様のご希望を反映した見積書の作成、営業用の資料作成に必要となる車体情報の引用、その案内を送るためのお客様の連絡先の確認など……。システムにアクセスしないとできない作業はいろいろあります。このため、営業担当者が外出しているときも、オフィスではノートPCの電源が24時間点けっぱなしになっていました」(平林氏)
とはいえ、ノートPCは基本的に常時起動するような運用を想定していないため、ここ最近は故障などのトラブルが相次いでいた。この状況に危機感を覚えていたのが、同社のPCを管理している株式会社イー・ビー・アイ・マーケティングの鈴木直哉氏だ。PCにトラブルがあった時は、鈴木氏がオフィスなどの現場を訪ねて対応しているのだが、中にはバッテリーが膨張する症状が見られたPCもあったという。
そこで、鈴木氏が提案したのが、“リモートで電源をオン・オフできる”vProプラットフォームを搭載したマシンへのリプレイスだった。こうしてvPro搭載PCが支給されたことで、最近では営業担当者が外出する際には、マシンをシャットダウンできるようになった。
運用ルールでセキュリティと業務効率を両立させる
新型コロナウイルスの感染拡大は、ブライトインターナショナルの営業活動にも大きな影響を与えた。営業担当者がテレワークを行うようになったことに加え、顧客に来店してもらう機会が減ったことで、客先に伺ったり、ビデオ会議でセールスを行ったりする機会が増えているという。
このような環境の変化に伴い、同社ではノートPCの持ち出しについて、柔軟な対応を進めているようだ。また、従来はモニターの大きい、オールインワンのノートPCを営業担当者に支給していたが、今回のリプレイスでは持ち運びを意識して、2in1タイプのモバイルマシン DELL「Latitude 7320」を採用している。
平林氏のような管理職のほか、ポルシェセンターに所属する営業担当者は、このDELL 「Latitude 7320」をいち早く利用して、日々の業務に役立てている。営業部 販売課に所属している樋口瞬氏もその一人だ。
ポルシェでは、顧客のニーズに応じて、車両のさまざまなカスタマイズを行っている。たとえばシート1つとっても、レザーの色からステッチの色、シートベルトの色まで自由に選ぶことが可能だ。こうした細やかなオーダーに応えるため、樋口氏をはじめとする営業担当者は、セールスを行う際にポルシェの販売管理システムを利用している。
そこには、あらゆる車種の情報がグラフィカルに表示され、300を超えるパーツの素材や色などを、3Dモデルなどに細かく再現。オーダーの際には、画面上で一つ一つのパーツを確認しながら、最終的な仕様を決めている。そうしてお客様が理想とする1台を組み立てたら、完成したデータをもとに仕様書などを作成できるため、発注ミスの予防にも役立っているようだ。
このシステムは、リモートデスクトップを使って別の端末から操作することもできる。ただ、樋口氏によると操作の遅延などが気になるため、お客様を目の前にした営業では使いづらいとのこと。スマートに画像などをお客様に見せられるようにと、客先に訪問する際には、システムにアクセスできる会社支給のPCを持ち込むことが多いようだ。
新たに会社から支給されたDELL「Latitude 7320」について、平林氏は「2in1なので、モニターを裏返せば、お客様にスマートに映像を見せられるのがいいですね」と話していた。「ポルシェのオーナーはこだわりが強い方が多いので、時計や靴といった営業担当者の身だしなみだけでなく、接客に利用しているツールなども観察されています。我々はセールスに関わる全てのパーツで、高いクォリティを保つことを大切にしています。何か1つ欠けているものを“ポルシェのクォリティ”だと、お客様に見なされることは絶対にあってはいけないんです」と。どうやらvPro搭載のDELL「Latitude 7320」は、ポルシェオーナーのお眼鏡にもかなうノートPCといえるようだ。
最近では持ち出し条件が緩和されたことで、セールスを会社支給のノートPCで、バックオフィスの報告や連絡などはリモートデスクトップで行うといった、業務の棲み分けができるようになったという。厳格なルールでセキュリティを守りながらも、仕事のクォリティは維持する。そのためにも今後は同社のように、会社支給のマシンの使いこなしが1つのポイントになってきそうだ。
接客のリモート化とvProプラットフォームの可能性
ビデオ会議での商談が増えたことで、営業担当者と顧客との付き合い方が変わりつつある。営業担当者は移動に時間を取られることがなくなり、まとまった時間を取りにくい顧客を相手にしても、アポイントが取りやすくなった。特に、リアルでのコミュニケーションを苦手とするような相手には、ビデオ会議の積極的な活用を検討しているという。
これを一歩進めるためのアプローチとして、ブライトインターナショナルでは「ポルシェプロ」という、新たなスタッフの配置を進めている。彼らの役割は“営業”ではなく“ポルシェの良さを、1人でも多くの人に知ってもらう”こと。セールストークは一切なしでポルシェについての疑問に答え、その魅力を理解してもらうのが彼らの仕事で、その先でお客様が本格的に購入を検討する段階になったら、営業担当者へとバトンを渡す。いきなり営業が前面に出ないことで来店のハードルを下げ、もっとカジュアルにポルシェへの興味を喚起させることが狙いだ。
こうしたケースで、平林氏はセールスの部分をオンラインで提供したいと考えているようだが、「そこで、vProやリモートデスクトップの仕組みを活用できないか?」と、色々な手法を検討しているという。
「これからのセールスは、『ツールをどう活用していくか?』を考える時代になってくると思います。大事なのは五感に訴えかけられるような場を作り、ポルシェに興味を持ってもらうこと。資料の作成やSNSでの情報配信など、お客様にご契約いただくまでにはさまざまなプロセスがあって、営業担当者が対面でやり取りするのは、数ある工程における1つのパーツでしかないんです。近年では営業担当者にあらゆるスキルが求められるようになっていて、その活動をサポートするツールの重要性が高まっています」と語る平林氏。それは時代が変わっていく中で、セールスの仕方が多様化していることを示唆していた。自動車のセールスにかかわらず、今後はあらゆる顧客サービスにおいて、ツールの重要性が高まっていくのかもしれない。
vProというと「システム管理者がPCを遠隔でメンテナンスするもの」というイメージがあるが、優れたリモートデスクトップ機能を有効に活用すれば、テレワークの現場でも強い味方になる。その利用が広まれば、今回のように新たなビジネスへの活用も見えてくるだろう。今後より多くの人がリモートデスクトップを日常的に使うようになった時、vProの新たな可能性が見えてくるのかもしれない。
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