グーグルが手がけるモバイルOSの次期バージョン「Android 15」の詳細が明らかにされつつある。このバージョンには数々の新機能や改良が盛り込まれており、グーグルは生産性の向上やプライバシーとセキュリティの強化、より滑らかなパフォーマンスを約束している。また、折り畳み端末や大画面端末向けのアップグレードもいくつか用意されている。
Android 15は一部端末向けのベータ版としてのみ提供されており、最終リリースはまだ数カ月先になる見込みだ。そんなAndroid 15のベータ版を実際に試してみたなかで、現時点でおすすめできる15の新機能を紹介していきたい。
かつてグーグルはAndroidの開発に際してスイーツに由来するネーミングを採用していたが、この手法を公式には「Android 10」で廃止した。しかし、いまも社内ではコードネームとして使用しており、昨年の「Android 14」は「Upside Down Cake(アップサイドダウンケーキ)」、Android 15は別名「Vanilla Ice Cream(バニラアイスクリーム)」とも呼ばれている。
Android 15のベータ版をインストールする方法
グーグルは今年4月にAndroid 15の最初のベータ版をリリースしており、8月か10月に見込まれる最終的な一般公開に向けて5月と6月、7月にベータ版の追加リリースを順次予定している。これらによって開発者は次期OSを実際にテストして新機能を理解し、アプリやゲームが正常に動作するよう準備を進めることが可能だ。一方でアーリーアダプターたちにとっては、Android 15がどうなるのか垣間見るチャンスでもある。
ベータ版は開発者プレビュー版より安定しているが、それでも若干のバグに遭遇する可能性がある。インストールにはいくつかのハードルを乗り越えなければならないので、万人向けではない。
どうしても試したいなら、グーグルのスマートフォン「Pixel」シリーズ(Pixel 6以降)か対応しているパートナー端末(Honor、Nothing、OnePlus、シャオミの一部機種など)を用意したうえで、「Android ベータ プログラム」への登録が必要になる。プログラムに登録した人の大半は自身のスマートフォンのデータを消去することなく、オンラインでのダウンロード(OTA)によってベータ版のアップデートを入手できる。ただし、ベータプログラムを退会する際にはスマートフォンのデータを消去する必要があるので、まず最初にAndroid端末のバックアップをとっておくことをおすすめしたい。
アップデートは通常は自動でポップアップ表示されるが、「設定」>「システム」>「システム アップデート」に進み、「アップデートをチェック」を選べば、いまのOSが最新バージョンかどうか確認できる。
ベータ版の利用を終了してAndroid 14に戻るには、グーグルのAndroid ベータ プログラムのページにアクセスし、下までスクロールして使用中の端末を探してから「登録を解除」を選ぶ。この操作でローカルに保存された全データが消去されるので、その前に端末をバックアップしておくようにしたい。 続いてアップデートを促す通知が表示されるので、それに従えば旧バージョンに戻ることが可能だ。
対応しているPixelやパートナー端末が手元にない場合は、Android 15のリリース予定時期を確認するためにメーカーのウェブサイトやフォーラム、ソーシャルメディアなどを頻繁にチェックしておこう。
Android 15の主な新機能
ここからは、現時点でおすすめの機能や改良を紹介していく。とはいえ、最終的に何が採用されるのかはAndroid 15が最終リリースされるまでわからない。詳しくはグーグルの開発者向けサイトを確認してほしい。
1.“秘密の空間”をつくる「Private Space」機能
Android 15には「プライベート スペース(Private Space)」という新機能が搭載され、機密情報を含むアプリをスマートフォンの残りの部分と切り離して保管できるようになる。例えば、ヘルス関連データや銀行アプリといった安全性を確保したいアプリを、端末ロックや別の暗証番号などで保護された2段階認証を設けることで安全に保管することが可能だ。プライベート スペースのロック中は、登録されたアプリは履歴や通知、設定、その他のアプリから非表示となる。
2.衛星接続で利用できる機能が拡張
Android 15では、衛星接続の機能が大幅に拡張される。一部のメッセージアプリやSMSアプリは、衛星経由でメッセージを送信できるようになっているはずだ(これまでは緊急時の利用のみに限定されていた)。また、ポップアップやその他のユーザーインターフェイスの要素を標準化し、衛星経由での接続時にはその旨が明確に表示されるようになる。
3.部分的な画面録画機能
Android 15では、画面全体を録画したり共有したりしなくても、個別のアプリを指定することで画面のその他の部分や受信した通知を表示せずに共有できる。また、ログインとワンタイムパスワードは、リモートで閲覧している人に対しては自動で非表示になる。こうした機能はPixelシリーズではすでに提供されているが、OSの機能として利用できるようになった。
4.悪意あるアプリのブロック
Android 15の新機能の一部は、悪意あるアプリをより過酷な状況に追い込むためのものだ。悪意あるアプリは他のアプリを前面に出したり、見えない状態でオーバーレイ(画面に重ねて表示)したりする方法で、ほかのアプリの陰に隠れることができなくなった。
また、実行したいアクションを指定することで他のアプリでアクティビティを開始できる「インテント」(何かを実行する意図の意味)と呼ばれる仕組みの不正利用を防ぐための変更も用意される。これはユーザーのセキュリティを高めるための隠された対策だ。
5.アプリのアーカイブ
アプリやゲームをしばらく使わなかったときに削除を促されることがあるが、将来また使う可能性があるとしたらどうだろう。Android 15の「アプリのアーカイブ」では、アーカイブすることでユーザーの設定やゲームのセーブデータは残したまま、アプリの大部分のデータを“圧縮”して保存しておける。
自動アーカイブ機能は昨年発表されたものだが、Android 15ではシステム全体で利用できるようになった。ストレージ容量が少なくなったときにアプリを自動アーカイブするよう選択できる。
6.PDFファイルの使い勝手が向上
Androidスマートフォンでは、PDFファイルを使った作業が面倒な場合がある。このためAndroid 15でいくつかのPDF関連機能が強化されるという今回のニュースは歓迎したい。
Android 15ではPDFの読み込みがよりスムーズになり、パスワードで保護されたファイルや注釈、フォーム編集、コピーによる選択に対応する。そしておそらく最もすばらしいことは、PDFファイル内での検索が可能になったことだ。
7.詐欺と詐欺対策の強化
Android 15には、詐欺を阻止することに狙いを定めた機能がいくつか含まれている。セキュリティシステム「Play プロテクト」の提供やデバイス上でのAIの採用によって、不審な動作をスキャンしてフラグを立てる仕組みだ。
例えば、一般的に2要素認証で使われるワンタイムパスワードが含まれるメッセージは通知システムから隠されるようになり、傍受することがより困難になる。また、サイドロードアプリ(アプリストアを介さずにインストールしたアプリ)を制限する設定も拡張されている。
8.アプリ間での音量の自動調整
あるアプリから別のアプリに切り替えると、いきなり音量が大きくなって耳障りに感じることがあるだろう。ありがたいことに、Android 15では「CTA-2075」と呼ばれるラウドネス標準に対応している。つまり、スピーカーやヘッドフォン、イヤフォンの特性を考慮してアプリ間の音量を比較し、いきなりボリュームが大きくなったり小さくなったりしないように音声をインテリジェントに調整してくれるのだ。
9.暗い環境での撮影が便利に
Android 15では、カメラアプリにいくつかの大幅な改良が施されている。まず、「ローライト ブースト」によって、暗い環境で写真を撮る際のプレビュー表示が改善された。このため夜間撮影する際に適切な構図を考えたり、暗い場所でQRコードをスキャンしたりしやすくなる。
また、フラッシュをより細かく制御できるオプションも用意される。これにより、フラッシュを1回だけ光らせたり、連続して光らせたりする際の光の強さを調節できるようになった。
10.表示と非表示を選べるタスクバー
Androidタブレットや折り畳み式のデバイス向けに、グーグルはタスクバーの動作方法を変更した。最初は常に表示される機能だったが、その後は一時的な表示になり、現在は表示方法を選べるようになっている。充電用ドックに置いたタブレット端末のようにタスクバーを常に表示したい場合には便利だが、タスクバーを非表示にする選択肢があることもありがたい。
また、分割画面モードに対応したアプリの特定の組み合わせを固定することも可能だ。Android 15では「エッジ ツー エッジ機能」によってアプリを画面の隅々まで表示できることから、背後にタスクバーなどがある場合も利用可能な画面領域をさらに活用できる。
11.バッテリー持続時間の向上
Androidがアップデートされる際には、バッテリーの持続時間にプラスの影響を与えるような効率性の微調整や改善が常に施される。Android 15ではフォアグラウンド サービスのチェックが強化され、アクティブな状態で実行され続けるアプリを厳しく管理するようになっている。
容量の大きいRAMを搭載したデバイスでは、より大きなページサイズに対応することで消費電力が少なくなり、アプリとカメラの起動時間も短縮されるはずだ。
12.振動の最適化が容易に
Android 15では、キーボードの設定画面を開くことなくシステム全体でキーボードの振動をオンまたはオフにできるようになった。「設定」>「音とバイブレーション」>「バイブレーションとハプティクス」には新しい設定項目が設けられ、スライダーによって触覚の強度を調節することもできる。セカンドベータ版では豊富な振動パターンも導入されており、画面を見なくても振動だけで通知の種類を判断できるようになった。
13.折り畳み端末のカバー画面の選択肢が増える
折り畳みスマートフォンのなかには、折り畳んだ際に実行しているアクションの表示をカバー画面上に自動的に移行してくれる機種もある。こうした機能をグーグルはAndroid 15に統合した。折り畳んだときのカバー画面表示を固定しておきたい場合は、それも可能になっている。コンパクトなフリップ式スマートフォンでは、小さなカバー画面に表示されるアプリへの対応も強化されている。
14.「ヘルスコネクト」に新しいデータタイプ
さまざまなデバイスやアプリから健康やフィットネスにまつわるすべてのデータを収集するアプリとしてスタートした「ヘルスコネクト」。Android 14でプリインストールされたヘルスコネクトは、Android 15で2つの新しいデータタイプが追加されている。それは皮膚温度(Oura RingやPixel Watch 2などのウェアラブル端末で収集される)とトレーニングプランだ。
トレーニングプランには、消費カロリー、距離、継続時間、レップ数、歩数などの完了目標だけでなく、できるだけ多くのレップ数(AMRAP)、ケイデンス、心拍数、パワー、主観的運動強度、スピードなどのパフォーマンスの目標も含めることが可能になっている。
15.強化された盗難防止機能
スマートフォンを盗まれたときの自動ロック機能や新しいリモートロックの設定など、盗難を防止するためにAndroidで導入される新しい保護機能の多くは「Android 10」以降のデバイスに対応する。ただし、盗んだ人物が端末を強制リセットして再設定する事態を阻止する「出荷時設定へのリセット保護」の機能は、Android 15のみで利用できる。
(Originally published on wired.com, edited by Daisuke Takimoto)
※『WIRED』によるAndroidの関連記事はこちら。Google I/Oの関連記事はこちら。
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