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Tuesday, December 20, 2022

腸内環境を整えることが、健康長寿につながります - 朝日新聞デジタル

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 いつまでも若々しく、有意義な人生をおくるため、健康で活力あふれる生活が求められています。その対策の一つに「腸活」があります。朝日新聞Reライフプロジェクトは、腸活とアンチエイジングに(抗加齢)の第一人者である京都府立医科大学大学院の内藤裕二教授(生体免疫栄養学)を講師に招き、オンラインセミナー「ウェルビーイングのための腸活」を開催、内藤さんが参加者のみなさんから寄せられた質問に答えました。その内容を5回にわたって紹介します。第1回は「腸活の目的と、腸内細菌の働き」についてです。

内藤裕二先生①

生活の中で培われたものを食べることが大切

 ――世の中では「腸活」がブームになっています。そもそも、腸活の目的とは何ですか。

 これまでは、「腸を活性化する」ということが多かったと思います。

 しかし、腸内細菌叢(そう)研究がどんどん進む中で、実は、腸が脳や心臓、腎臓、皮膚などさまざまな体の器官の生理や病気のコントロールをしているということがわかってきました。

 腸活そのものの目的は、やはり健康長寿であり、ウェルビーイングだと僕は思っています。

――具体的にどのように腸活をしていけばよいでしょうか。

 僕はあまり離れたところにある食べ物を食べるのは良くないんじゃないかな、という立場をとっています。「体に良いから」といって輸入してまで食べるとか、東北の人たちが作っている食べ物が体に良いからと京都の人が食べるとかいうのは、あまり良くないのではないかと考えています。

 長い歴史の中で、日本人はその土地に根付いた食品を食べ、育ってきました。その結果、環境にあった腸内細菌が培われてきました。地産地消とまでは言いませんが、その土地にある、特に植物由来のいろんな食べ物、発酵食品も含めて食べるのが良いと思っています。

 不思議なことに、米が採れないところほど、地域の色々な食べ物、郷土料理が開発されてきています。米がおいしい土地では、米がおいしいあまりに料理の工夫はされずにきました。

 その逆の地域、たとえば京丹後地方では色々な食べ物を開発してきました。「わかめのパー」という食材があります。干したわかめと煮干しで作った佃煮(つくだに)も作れます。わかめを一年を通して食べ続け、小さな魚を骨ごと食べています。芋も保存しておくことで一年中食べることができます。生活の中で培われた地域の工夫が腸活にとっても大事なのです。

 「赤肉」も過剰に摂取しないようにした方がいいでしょう。赤肉とは、赤身肉ということではなく、牛や豚、羊など哺乳類の肉のことで、「レッド・ミート」といわれます。脂質も多く含まれています。

 甘いものや塩分を控えるということも腸活の大前提です。

 その上で植物ベースのさまざまな食事をとるということが僕は必要じゃないかな、と思います。和食が大切ですね。

腸内細菌のおかげで我々は生きていける

――ヒトの腸内には、どのくらいの量の細菌がすんでいますか。

 数字が日々かわっています。私も自分で計ったわけではないのですが、基本的には100兆個の腸内細菌がすんでいると言われています。重さでいうと1~1.5キロ。一つの臓器ぐらいの重さになります。遺伝子の数だと腸内細菌は100万ほどのレベルです。ヒトの遺伝子は2.5万しかないので、ヒトの遺伝子の50倍ぐらいの遺伝子を腸内細菌は持っていることになり、私たちは腸内細菌のおかげで生かさせていただいているということになります。

 共生という日本語も当てはまるかもしれませんが、「住んでいただいている」というイメージの方がいいのではないでしょうか。「腸内細菌のおかげで、我々は生きていけている」と言えるかもしれません。

――腸内細菌には、どんな種類の菌がいて、どんな働きをしていますか。

 大腸の中はほとんど酸素がありません。そうした環境を好んですむ腸内細菌がいます。つまり彼らは酸素がなくても生きていける菌ばかりです。その環境下でアミノ酸や脂肪酸を作ったりして、菌同士が助け合って生きています。多様な菌が共生する環境が、本当に良い腸内環境だと思います。

 体の血液の中をたくさんの赤血球が流れていて、酸素を運んでいます。たとえば抗生物質を飲むなどして腸管のバリアー機能が破たんすると、大腸内に酸素が漏れてしまいます。すると、プロテオバクテリア門という、酸素を好む菌が大腸で増えてきます。プロテオバクテリア門の菌が増える腸内環境になった人に、プロテオバクテリア門が増えるというわけです。

 最近の寿命研究では、腸内にプロテオバクテリア門がすんでいる人のグループは、寿命が短く、コロナ感染症においても明らかに死亡率が高いことがわかってきました。コロナ禍の今こそ、腸活をしてプロテオバクテリア門が増えないような腸内環境を作っておくことが大切です。ひょっとするとワクチン以上に重要かもしれないと、僕は思っています。

 腸内細菌については、善玉菌、悪玉菌、日和見菌という表現ではなく、プロテオバクテリア門とか、ファーミキューテス門とか、ビフィズス菌とか具体的な菌についてディスカッションしていくことが求められているような気がします。そうすることで、理解が進むのではないかと思います。

――腸には十二指腸や小腸、大腸、直腸がありますが、腸の場所によってすんでいる腸内細菌は違うのですか。

 2、3年前に、口から肛門(こうもん)まで小腸の中も含め徹底的に腸内細菌を調べた論文を発表しているのですが、全然違うんですね。大きく分けると、ちょうど小腸の終わりかけぐらいで、上と下で大きく違います。上の方は明らかにまだ酸素濃度が高いので、いろんな菌がいますが、大腸に入るととたんに酸素濃度がドーンと下がるので、酸素濃度の影響で全然違います。でも意外と、胃や十二指腸や小腸というところにはよく似た菌がいます。

――それぞれ、働きが異なるのでしょうか。

 免疫とかアレルギーとか血糖や脂質の吸収とかを考えると、「小腸」内の腸内細菌が大事かもしれません。みなさんあまり気づいていないかもしれませんが、「何となく、胃もたれがする」とか「何となく、おなかが張る」とか「何となく、食後にちょっとモヤモヤッという気持ちがする」と、日本人はおなかの調子が悪いという人が多いと思うのですが、これというのは小腸の腸内環境の影響かもしれないということがわかってきています。これから急速に小腸の腸内細菌研究も進んでいくと私は思っています。

 一方、大腸には酸素がなくても生きていけるファーミキューテス門やバクテロイデス門、アクチノバクテリア門が大量にすんでいます。ビフィズス菌などもそうです。腸を動かす物質を作るなどして便の排出などに欠かせない働きをしているほか、研究の結果、脳の働きにも影響していることなどがわかってきています。

 次回は「腸内のさまざまな菌を知ろう」のお話です。

※この記事はオンラインセミナー「ウェルビーイングのための腸活」での質疑をもとに、再構成・加筆しています。

  • 内藤裕二
  • 内藤 裕二(ないとう・ゆうじ)

    京都府立医科大学大学院教授(生体免疫栄養学)

    1983年京都府立医科大学卒業、2001年米国ルイジアナ州立大学医学部客員教授,09年京都府立医科大学(消化器内科学)准教授などを経て21年から現職。日本酸化ストレス学会理事長、日本消化器免疫学会理事、日本抗加齢医学会理事、2025大阪・関西万博大阪パピリオンアドバイザー。専門は消化器病学、消化器内視鏡学、抗加齢学、腸内細菌叢。著書に「消化管(おなか)は泣いています」「人生を変える賢い腸のつくり方」など多数。

  • この連載について / 腸活オンラインセミナーQ&A

    腸内細菌に詳しい京都府立医科大学大学院の内藤裕二教授(生体免疫栄養学)が「腸活オンラインセミナー」で読者会議メンバーからの質問に答えました。生活改善のヒントがあります。

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