1803年創業の「京菓子司 亀屋良長」(京都市下京区)の一角に、円形の菓子が並ぶ。寒天と卵白で作る京の伝統菓子を乾燥焼きした「焼き
「お菓子を食べたいとき、おいしさやきれいさ以外に、体に負担をかけないという選択肢も提示したかった」。8代目当主の吉村良和さん(48)はそう話す。
吉村さんは約15年前に脳腫瘍を患い、治療の過程で肉や魚などを食べると体調を崩すようになったという。これを機に健康を考えたお菓子づくりを開始。2016年には銘菓「
次にできたのが焼き鳳瑞。二つを柱に、別ブランド「吉村和菓子店」として販売を始めた。妻の由依子さん(45)が店主となり、桜やリンゴなど使う材料を替えて季節感も工夫する。さらに「焼き鳳瑞<あづき茶>」は、卵白代わりに小豆の煮汁を泡立てて使い、菜食主義の人も食べられるようにした。
和菓子はそもそも、小豆や抹茶など植物性の原材料を主としている。吉村さんは「昔からの菓子は、健康を考えて作っているわけではない。ただ、和菓子の潜在力は非常に高く、伝統技術を使って健康に焦点を当てたものを作ることができる」と語る。
小豆の栄養価に注目
現代の日本人は食に対して健康を気にする傾向にある。日本政策金融公庫が実施する消費者動向調査の食に関する志向を問う項目(複数回答)では、ここ10年以上、健康志向が食費の節約を求める経済性志向などを抑えて1位だ。その流れで大豆ミートなど植物性食品の注目も高い。
海外で広がるビーガン(完全菜食主義者)や小麦を含む食品を避ける「グルテンフリー」も認知度が高まる。創業約300年の「大徳屋長久」(三重県鈴鹿市)はこれらに対応したどら焼きを作る。生地は卵を使わず、豆乳や米粉などの配合でふっくらと焼き上げ、てん菜糖などの甘味料であんを炊いた。企画に関わる「Enny」(東京)が7月から、ネットのみで販売している。
和菓子の需要縮小に危機感を抱く16代目の竹口久嗣さん(42)は、「植物性というもともとの下地があるのでうまくいった。挑戦しながら、海外にも広く和菓子の魅力を伝えていきたい」と意気込む。
材料自体の栄養価に焦点を当てる動きもある。全国和菓子協会(東京)は、パンフレット「和菓子ものがたり 健康編」を発行。あんの材料である小豆について、たんぱく質や食物繊維の豊富さ、ポリフェノールの効能などを説明する。
一方で、協会専務理事の藪光生さんは「健康的という長所は、二次的に付いてくるもの」と語る。いわゆる健康食品ではなく、
心身に効く和菓子を、令和の世も楽しみたい。
(岡本久美子が担当しました)
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【和菓子と令和】<中>自然共存 SDGs先取り…竹や笹の包装 一部合理化も
からの記事と詳細 ( 【和菓子と令和】<下>健康志向、心も体も喜ぶ味…植物性原料にこだわり挑戦 - 読売新聞オンライン )
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