腕を前から上にあげて、大きく背伸びの運動から、はいっ-。誰しもが、この掛け声に合わせて体を動かしたことがあるはずだ。昭和初期「国民保健体操」として始まり、現在は3代目の「ラジオ体操」。高齢化社会の進展に加え、新型コロナウイルス禍も相まって健康への関心は高まる。「いつでも・どこでも・だれでも」をコンセプトに広く普及したラジオ体操は、健康的な生活習慣への第一歩としてもってこいだ。
(中村雅和)
平日の午前6時30分ごろ。東京都千代田区の佐久間公園に人の輪ができる。中心にいるのはラジオ体操指導員の資格を持つ松島直樹さん(71)だ。「自分の健康のためにずっと続けているんです」。持参したラジオの音にあわせ、親子連れなど約10人が体を動かす。
公園には「ラジオ体操会発祥の地」の碑が立つ。全国に先駆け「早起きラジオ体操会」を発足させ、集団でのラジオ体操を全国に広げる契機を作ったとされる神田万世橋警察署(現・万世橋警察署)の面高叶(おもだか・かのう)巡査を顕彰するものだ。そんなゆかりの地で、伝統は今もつむがれる。
米国を参考にして
ラジオ体操の発祥は日本ではない。ルーツの1つはアメリカだ。
グッドモーニング、エブリバディ。目がさめたらパジャマを脱ぎ、それから部屋の窓を開けましょう-。
1925(大正14)年3月30日、起床ラッパの音とともにこんな語り出しで新番組が始まった。腕回し、背伸び、屈伸などに加え、自転車をこぐような動きなど32種類の体操だ。ピアノの伴奏にあわせ「エクササイズマン」が体操の説明をするスタイルだ。
番組はアメリカのメトロポリタン生命が提供した。当時「死の換金事業」などとさげすまれていた保険事業。健康増進への貢献によってイメージアップを図る狙いからだった。
これに逓信省簡易保険局が着目。保険事業の振興に加え、国民の健康状態改善も図れるとして日本放送協会や文部省(現・文部科学省)などに協力を依頼し、昭和3年11月から放送が始まった。ラジオ体操は日本人に浸透し、社会状況が変わっても愛され続けている。
Vチューバーとも
「たった3分で、全身の600ある筋肉のうち400を動かせます。一つ一つの動作に意味が込められているんです」
郵政民営化後、簡易保険事業を継承し、ラジオ体操の広報・啓発を担うかんぽ生命保険の担当者はこう強調する。6年後の令和10年には日本でのラジオ体操放送開始から100年を迎える。節目を前に、普及促進に向け、さまざまな手を打つ。
ラジオ体操の健康増進効果を科学的に実証しようと、3年10月、東京都健康長寿医療センターや東京医科大学などと共同研究に着手した。身体機能を強化する効果などを調べる。
また、動画配信サイト上で画面上のアバター(分身)を使って行う「バーチャルユーチューバー(Vチューバー)」による後押しもある。人気Vチューバーの不破湊さんが「健康計画」と題し、ラジオ体操に興じる動画を連日投稿。1回の配信で50万回程度視聴されるなど話題を集めた。
同社も動画配信サイト上で各地のイベントの様子を投稿するなどオンラインでの啓発に注力する。担当者は「今後は自宅からでも参加できるようなイベントの開催などにも挑戦したい」と話している。
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