神戸市須磨区に本社を置くナガタ薬品は、「アルカドラッグ」などを、兵庫県内外にグループで約100店舗展開している。同じ神戸発祥のスーパーダイエーとの価格競争などを乗り越えて事業を伸ばし、現社長の中島康伸さんは新型コロナウイルス禍をきっかけに、空気清浄機の開発にも取り組む。開業医だった祖父の故紀一さん、前身の薬局を創業した父の故一誠さんと、親子3代で感染症対策などまちの健康づくりに尽くす物語を紹介する。(大橋凜太郎)
ナガタ薬品は1954年、一誠さんが同市長田区で創業した。当時は薬剤師による対面販売が主流だったが、消費者が直接手に取る「セルフサービス」を取り入れて、安価で販売した。
創業店の近くにはダイエーが3号店を構え、激しい価格競争が起きたが、地元企業の良薬を自社のプライベートブランドとして売り出すなど、差別化して軌道に乗せた。
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薬を扱う原点は、「クリニックと薬局の両輪で地域に尽くす」という紀一さんの志にあった。紀一さんは薬学部の学生時代、スペイン風邪の流行を目の当たりにした。毎日のように葬儀の車が往来し、「直接患者を治療したい」と医学部に入り直した。
医師免許取得後は地元・長田で開業し、周辺の在宅医療などに当たった。当時猛威を振るったインフルエンザなどに東洋医学の知見を駆使して立ち向かい、亡くなる直前まで現場に立ち続けたという。
康伸さんは、祖父と父が歩んだ道をたどるように薬学部に進んだ。腸炎ビブリオ研究の第一人者から薫陶を受け、自らも感染症と闘う意志を固めた。卒業後は医薬品メーカー勤務を経て、89年に35歳で父の会社に入った。店頭に立ち、地域性や需要を把握して2016年に社長に就いた。
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コロナ禍では、感染防止対策に欠かせないマスクの不足に苦しんだ。1枚5円前後だった価格は一時、60~90円ほどに高騰し、全国の店頭から消えた。マスクがなければ、何も始められない-。
救いの手を差し伸べてくれたのは、生まれ育った長田の地場産業、ケミカルシューズの業界団体だった。製靴のノウハウを生かしてマスクを量産してくれたといい「ごちゃごちゃ言わんと、なんぼで売ってほしいんや」。1枚25円での販売にこぎ着け、地元メーカーの心意気に涙を流した。
そして康伸さんは、コロナに限らない感染症との長期戦を見据え、照明器具製造のフェニックス電機(姫路市)に依頼して、吸い込んだ空気に紫外線を照射してウイルスを除去する空気清浄機「アルカディエアー」を昨年完成させた。
「コロナ禍収束後も、間違いなく別の感染症が流行する。感染症に強い社会をつくらないといけない」。まなざしの奥には、祖父と父から受け継いだ健康増進を通じた地域貢献の志が宿っている。
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