もとの病気によらず、腎臓の機能が低下していく状態を慢性腎臓病と呼んでいます。成人の8人に1人以上いると考えられており、進行すると最終的には人工透析が必要になります。人工透析を受ける人はこの30年で3倍に増え、現在約35万人が受けています。透析を始める患者さんの中では糖尿病性腎症の割合が多いのですが、近年では高血圧や加齢に伴う腎硬化症の割合が増えてきています。
60代後半の女性がクリニックを受診しました。若干腎機能は低下しているのですが、様子を見られる範囲でした。ただ、「腎臓は悪くなると治す薬がないと聞いているので」と心配していました。
今まで腎臓の治療薬といえるものはありませんでしたが、最近では糖尿病治療薬であるSGLT2阻害薬の一部が慢性腎臓病の治療薬として使えます。それとは別に糖尿病や高血圧をきちんと治療することが将来の腎機能低下の予防につながります。また、喫煙は腎機能を悪化させることがわかっており、腎臓を守りたければ禁煙は必須です。減塩や肥満解消も有効と考えられています。
腎臓が悪ければ安静にしなければならないということも以前はよく言われていたかと思いますが、最近では考え方が変わってきています。一般的に運動は血糖値や血圧、体重に良好な影響を及ぼし、身体機能を維持する上でも有用です。腎臓病があると心血管病になりやすく、またフレイル(虚弱)にもなりやすいのですが、その点からも運動はよさそうです。
米国の医学雑誌に高齢者に運動してもらうと腎機能の低下が遅くなるという研究結果が報告されています。70~89歳の活動的でない高齢者1200人を運動する群と健康に関する教育のみの群に分け、腎機能を2年間観察した結果、運動群は運動しない群に比べ腎機能の低下は緩やかでした。急速に腎機能が低下する割合も運動群の方が少なくなっていました。
運動が腎機能に与える影響についての研究結果はまだ定まっておらず、効果が認められなかったとの報告もあります。しかし少なくとも運動が腎機能を悪化させるという報告はほとんどありません。
女性患者さんには、腎臓を守るために血圧管理が重要で、減塩や運動などできることはあるということを伝えました。運動についてはあまり考えていなかったようで、「頑張って歩くようにします」と言って帰っていきました。
(しもじま内科クリニック院長 下島和弥)
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