NECの法人向けノートPC「VersaPro」シリーズの中で、SOHO/中小企業向けとして位置付けられているのが「VersaPro J」シリーズだ。そのVersaPro Jシリーズの中で、モバイル向けの最新モデルとなるのが、今回紹介する「VersaPro J UltraLite タイプVC<VC-B>」である。
法人向けの製品ではあるが、Ryzen APUを採用する点が特徴で、特にテレワークにお勧めのモデルとして位置付けられている。今回は、VersaPro J UltraLite タイプVC<VC-B>の標準仕様モデルとなるVK540/C-Bを取り上げる。既に発売中で、直販サイト「NEC得選街」での直販価格は14万8,720円から。
Ryzen APUを採用しディスプレイを大型化しつつ1kg切りの軽さを維持
「VersaPro J UltraLite タイプVC<VC-B> VK540/C-B」(以下、VK540/C-B)は、法人向けノートPCとしては珍しく、プロセッサにRyzen APUを採用モデルとなっている。VersaPro JシリーズでAMD製APUを採用する製品としては、2020年8月に15.6型ノートPC「VersaPro J タイプVW」が発売されたことはあるが、VK540/C-Bはそれに続く新モデルとなる。主な仕様は表1にまとめたとおりだ。
プロセッサ | Ryzen 5 5500U |
---|---|
メモリ | LPDDR4x-4266 8GB/16GB |
内蔵ストレージ | 128GB/256GB/512GB PCIe SSD 256GB/512GBはハードウェア暗号化機能対応 |
ディスプレイ | 13.3型IPS、1,920×1,080ドット、ノングレア |
無線LAN(オプション) | IEEE 802.11ax 2x2(Wi-Fi 6) |
Bluetooth(オプション) | Bluetooth 5.0 |
キーボード | 日本語、約19mmフルピッチ、静音仕様 |
カメラ | 720p対応約92万画素Webカメラ、プライバシーシャッター搭載 |
生体認証(オプション) | 顔認証カメラ、電源ボタン一体型指紋認証センサー |
インターフェイス | USB 3.2 Gen2x2(USB PD/DP ALT Mode対応) Type-C×1 USB 3.1×2 HDMI SDカードリーダ Gigabit Ethernet オーディオジャック |
OS | Windows 11 Pro Windows 10 Pro 適用済み(Windows 11 Proライセンスからのダウングレード) Windows 10 Pro |
駆動時間 | リチウムイオンバッテリ(M)搭載:約10.5時間 リチウムイオンバッテリ(L)搭載時:約15.8時間 |
サイズ/重量 | 317×216×17.9mm(幅×奥行き×高さ) リチウムイオンバッテリ(M)搭載時:約971g リチウムイオンバッテリ(L)搭載時:約1,022g |
VersaPro J UltraLite タイプVCシリーズ自体は従来から存在していたが、2021年2月に登場した従来モデルではIntel製CPU搭載モデルのみが提供されていた。また、ディスプレイサイズは12.5型で、重量は約947gと1kgを切る軽さを実現し、携帯性を高めたモバイルノートPCとして位置付けられていた。
その位置付けはVK540/C-Bも変わっていないが、プロセッサがRyzen APU「Ryzen 5 5500U」へ変更になるとともに、後ほど紹介するように、ディスプレイが13.3型へと大型化されている。
この変化は、昨今のコロナ禍によってオフィスだけでなく、自宅などでも仕事を行なうリモートワークやハイブリッドワークが浸透してきたことに対応するためだという。処理の重いWeb会議アプリを利用しつつ、同時にOffice系アプリなども利用する場合の快適性向上を目的として、6コア12スレッド処理に対応し、同等クラスのIntel Core i5よりもマルチスレッド処理能力が優れるRyzen 5 5500Uを採用。また、ディスプレイを従来モデルの12.5型から13.3型へと大型化したのも、リモートワークやハイブリッドワークの快適性を高めるためとのことだ。
ただ、それによって重量が増えてしまうと、せっかくのモバイル性が失われるが、VK540/C-BではRyzen APU採用かつディスプレイの大型化を行いつつも、重量は約971g(リチウムイオンバッテリ(M)搭載時)と1kg切りを維持。つまり、モバイルノートPCとしての機動性を維持しつつ快適性を高めたモデルというわけだ。
合わせて、モバイルノートPCに求められる堅牢性も問題なく確保している。150kgfクラスの面加圧試験、25kgfの点加圧試験、76cmの高さから落下といった過酷な堅牢性試験をクリアしており、安心して外に持ち出せる。
デザインはほかのVersaProシリーズ同様で非常にシンプルだ。天板にNECロゴが印刷されている点はNECパーソナルコンピュータの個人向け製品であるLAVIEシリーズと大きく異なる部分だ。またカラーバリエーションもブラックのみを用意。このあたりは法人向けらしい特徴だろう。
サイズは、307×216×17.9mm(幅×奥行き×高さ)。ディスプレイの左右ベゼルが狭額縁仕様となっていることもあり、13.3型モバイルノートPCとして申し分ないコンパクトさを実現。重量は先ほど紹介したように約971gからとなるが、大容量バッテリのリチウムイオンバッテリ(L)を搭載した場合の重量は約1,022gとなる。試用機ではリチウムイオンバッテリ(L)を搭載していたため、最低重量ではなかったものの、実測の重量は1,010gと公称よりも軽かった。この程度の重量なら、13.3型モバイルノートPCとしても不満はない。
13.3型フルHD液晶を搭載
ディスプレイは、1,920×1,080ドット表示対応の13.3型液晶を採用している。パネルの種類はIPS。法人向け、それもSOHO/中小企業向けとなっていることもあり、ディスプレイ表面は非光沢処理となっている。これによって、天井の照明など外光の写り込みはほとんど気にならず、快適な作業が行なえる。
ベゼル幅は、先ほど紹介したように左右はかなりの狭額縁仕様となっており、本体の小型化に貢献している。それに対し上部と下部のベゼル幅はそこまで狭められていない。せっかくならこの幅を詰めて、アスペクト比16:10のディスプレイを搭載してもよかったのではないかとも思うが、13.3型フルHDディスプレイでも大きな不満はない。
公称スペックとして発色性能についての言及はないが、写真などを表示してみても発色に不満を感じることはなく同等クラスのモバイルノートPCに搭載される液晶とほとんど変わらない印象だ。プロの映像クリエイターレベルの発色性能を求めるならともかく、一般ビジネス用途で写真や動画を扱うと行った、VK540/C-Bがターゲットとする用途であれば全く問題ないだろう。
このほか、ディスプレイを開くと本体後方をリフトアップする構造となっており、キーボード面に角度がつくとともに、底面に隙間を確保して冷却性能が高められる。またディスプレイは180度開くため、対面プレゼン時などに役立ちそうだ。
ビジネスモバイルPCらしく豊富な拡張ポートを用意
VK540/C-Bは、法人向けらしく、スペックの細かなカスタマイズが可能となっている。
先に紹介しているように、プロセッサは6コア12スレッド処理対応のAMD製APU、Ryzen 5 5500Uを採用しており、そちらは固定となっている。メモリはLPDDR4x-4266を8GBまたは16GB搭載。内蔵ストレージはPCIe SSDを採用し、容量は128GB、256GB、512GBで、256GBと512GBではハードウェア暗号化機能を搭載する。
OSは、Windows 11 Pro、Windows 10 Pro 適用済み(Windows 11 Proライセンスからのダウングレード)、Windows 10 Proの3種類から選択できる。
通信機能はオプションとなっており、Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)準拠の無線LANとBluetooth 5.0を搭載可能。ワイヤレスWANは非搭載となる。
生体認証機能は標準では非搭載だが、電源ボタン一体型の指紋認証センサーやディスプレイ上部に720p対応の約92万画素カメラとしても利用できるWindows Hello対応の顔認証カメラを搭載可能。いずれか一方、または両方搭載可能で、試用機ではどちらも搭載されていた。Windows Hello非対応の約92万画素カメラを選択した場合には、NECの顔認証技術を活用したセキュリティソフト「NeoFace Monitor」が利用可能となり、そちら経由での顔認証ログオンや、PC前に人がいなくなると自動的にスリープに移行する離席判定機能などが利用可能となる。
なお、カメラにはプライバシーシャッターが備わっており、不要時にはシャッターを閉じることで物理的にカメラを遮断できる。
外部ポートは、左側面にUSB 3.2 Gen2準拠USB Type-C、SDカードスロット、Gigabit Ethernetを、右側面にオーディオジャック、USB 3.2 Gen2準拠USB Type-A×2、HDMIをそれぞれ配置。
このうちUSB Type-CはUSB PDおよびDisplayPort ALT Mode対応で、対応モニターとUSB Type-Cケーブル1本で接続し映像出力と電力供給が可能。またGigabit Ethernetポートは薄型筐体に内蔵するため、引き出し型の特殊なコネクタを採用している。
ACアダプタはUSB Type-C接続で、出力は45W。ACアダプタの重量は付属電源ケーブル込みで実測250gだった。
このほかにも、周辺機器を豊富に用意している。まずデスクでの利便性を高めるため、USB Type-C接続の拡張ドックを用意。VK540/C-BとUSB Type-Cケーブルで接続することで、DisplayPort×2、HDMI×1、Gigabit Ethernetポート、USB 3.2 Gen2 Type-C×1(データ通信のみ)、USB 3.2 Gen2 Type-A×3、USB 2.0×2を拡張するとともに、電力供給も可能。またビジネスシーンではまだ根強く需要のある、USB接続の外付け光学式ドライブや、HDMI-アナログRGB変換ケーブル、ディスプレイのプライバシーフィルタなども用意している。
優れたマルチスレッド性能を確認
では、簡単にベンチマークテストの結果を紹介しよう。今回利用したベンチマークソフトは、UL LLCの「PCMark 10 v2.1.2532」、「3DMark Professional Edition v2.22.7336」、Maxonの「CINEBENCH R23.200」の3種類だ。結果は下にまとめたとおりだ。
VersaPro J タイプVC<VC-B> VK540/C-B | |
---|---|
CPU | Ryzen 5 5500U(ブースト時最大4GHz) |
グラフィックス | Radeon Graphics |
メモリ | LPDDR4x-4266 16GB |
ストレージ | 512GB SSD(PCIe/NVMe) |
OS | Windows 10 Pro 64bit |
PCMark 10 | v2.1.2532 |
PCMark 10 Score | 4,963 |
Essentials | 8,959 |
App Start-up Score | 11,122 |
Video Conferencing Score | 8,089 |
Web Browsing Score | 7,994 |
Productivity | 7,142 |
Spreadsheets Score | 9,058 |
Writing Score | 5,632 |
Digital Content Creation | 5,184 |
Photo Editing Score | 7,891 |
Rendering and Visualization Score | 5,032 |
Video Editting Score | 3,510 |
CINEBENCH R23.200 | |
CPU | 5,726 |
CPU (Single Core) | 1,171 |
3DMark Professional Edition | v2.22.7336 |
Night Raid | 12,836 |
Graphics Score | 14,602 |
CPU Score | 7,617 |
Wild Life | 6,781 |
Time Spy | 1,245 |
Graphics Score | 1,104 |
CPU Score | 4,582 |
結果は、なかなかの好結果となっている。競合となるCore i5搭載モバイルノートPCと比較しても同等以上の結果が得られており、パフォーマンスに優れることがベンチマークからも確認できた。特にPCMark 10のDigital Content CreationやCINEBENCHのマルチスレッドの結果は非常に優れている。
また、試用中に実際にZoomやTeamsを利用したWeb会議も試してみたが、Web会議中にほかのアプリを利用しても全く動作の重さを感じず快適な利用が可能だった。
こういったことから、6コア12スレッド処理対応のRyzen 5 5500Uのパワーが申し分なくなく発揮されていることが確認できた。これなら、確かにテレワークのメインマシンとして利用しても快適に業務をこなせそうだ。
続いてバッテリ駆動時間だ。VK540/C-Bの公称のバッテリ駆動時間はリチウムイオンバッテリ(M)搭載時で約10.5時間、リチウムイオンバッテリ(L)搭載時で約15.8時間(JEITA測定法 Ver.2.0での数字)とされている。
今回の試用機ではリチウムイオンバッテリ(L)を搭載していたが、Windowsの省電力設定を「バランス」、バックライト輝度を50%、無線LANをオンに設定し、PCMark 10のBatteryテスト「PCMark 10 Battery Profile」の「Modern Office」を利用して計測してみたところ、12時間3分を記録した。JEITA 2.0基準を下回っているものの、ベンチマークで12時間超の駆動時間が確認できたことは、モバイルノートPCとしてかなり魅力と感じる。おそらく通常利用でも8時間ほどは問題なくバッテリ駆動が可能と思われるため、外出時の利用も安心だ。
法人向けPCでもAMD製APU搭載製品が今後増えると予感させる製品
AMD製APUは、個人向けPCでは近年シェアを大きく伸ばし、特にゲーミングPCなどハイエンドPCではかなり高いシェアを獲得している。しかし法人向けPCではなかなかAMD製APU搭載製品が選択されない状況が現在でも続いている。これは、企業は導入するPCに対して安定性や継続性を重視するため、新しいPCを導入する場合でもこれまで利用していたIntel製CPU搭載製品を優先して選択してきたからだ。
AMD製APU搭載PCだからといってWindowsやアプリの動作に問題が出るということはない。Windowsが採用している64bit命令セットはAMDが開発した「AMD64」がベースとなっているのことからも、それは明かだ。とはいえ、万が一トラブルが発生すると業務が止まり損失が発生することを考えると、企業が導入に慎重になるのも理解はできる。
そういった中、個人向けPCでAMD製APU搭載製品がシェアを伸ばし、企業ユーザーもAMD製APU搭載PCを個人のPCとして使う例が増えてきたこともあって、企業で利用するPCでAMD製APU搭載製品を選択する例が増えつつある。
確かに、近年のIntel製CPUの供給不足がAMD製APU躍進の理由の1つになっていたのも事実だが、そこにはAMD製APUの優れた性能や、競合CPUに対するコストパフォーマンスの高さがあったからだ。
実際、Ryzen 5 5500Uを採用するVK540/C-Bも直販価格が14万8,720円と、競合のモバイルノートPCと比べても優れたコストパフォーマンスを実現。高性能かつ安定して動作し、価格も安価ということで、企業ユーザーにとってかなり注目の製品と言っていいだろう。
本製品も含め、AMD製APU搭載の法人向けPCはまだまだ少数派だ。とはいえ、徐々に導入が進むことでAMD製APUの良さが知られ、導入企業も伸びていくものと思われる。そういった意味でもVK540/C-Bは、今後の法人向けPCの方向性を示す製品と言えそうだ。
からの記事と詳細 ( 【Hothotレビュー】 Ryzen搭載で971gからの13.3型ビジネスモバイル「VersaPro J UltraLite タイプVC」 - PC Watch )
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