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Wednesday, February 23, 2022

モバイル向け「第12世代Coreプロセッサ」の本格展開は3月から 性能はどう?(1/3 ページ) - - ITmedia

seserpeer.blogspot.com

 Intelは2月23日(米国太平洋時間)、モバイル向け第12世代Coreプロセッサ(開発コード名:Alder Lake)のうち、基本消費電力(PBP、※1)が24Wの「Pプロセッサ」と15Wまたは9Wの「Uプロセッサ」を搭載するPCが3月から順次発売される見通しであることを発表した。Acer、ASUSTek、Dell Technologies、富士通クライアントコンピューティング、HP、Lenovo、LG、MSI、NECパーソナルコンピュータ、Samsung Electronicsなどから200超の新モデルが投入されるという。

 この記事では、Intelが報道関係者向けに開催した説明会の内容をもとに、Pプロセッサ/Uプロセッサと第3世代の「Intel Evoプラットフォーム」の詳細を解説する。一部発表済みの内容も含まれるが参考になれば幸いだ。

(※1)Processor Base Power:従来の「TDP(熱設計電力)」「PL1(Power Limit 1)」に相当する消費電力

Pプロセッサのイメージ 第12世代Coreプロセッサ(Pプロセッサ)のパッケージイメージ
Pプロセッサのラインアップ 第12世代Coreプロセッサ(Pプロセッサ)のラインアップ
Uプロセッサ(大きい方)のラインアップ 第12世代Coreプロセッサ(Uプロセッサ、PBP 15W)のラインアップ
Uプロセッサ(小さい方)のラインアップ 第12世代Coreプロセッサ(Uプロセッサ、PBP 9W)のラインアップ

CPU仕様の概要

 第12世代Coreプロセッサは、処理性能を重視する「パフォーマンスコア(Pコア)」と処理効率(省電力性)を重視する「効率コア(Eコア)」を混載していることが特徴だ。モバイル向け製品はCPUやGPUに加えてチップセット(サウスブリッジ)も統合した「SoC(System-On-a-Chip)」として提供される。

 パッケージ(チップの実装サイズ)は、PプロセッサとPBP 15WのUプロセッサが「BGA Type3(50×25×1.3mm)」、PBP 9WのUプロセッサが「BGA Type4 HDI(28.5×19×1.1mm)」となる。プロセッサの機能には、パッケージごとに差異がある。

PとU モバイル向け第12世代Coreプロセッサのラインアップ。PプロセッサとUプロセッサの登場で一応の「完成」を迎えることになる

Pプロセッサ/Uプロセッサ(15W)

 BGA Type3パッケージを採用するPプロセッサとUプロセッサの15Wモデルの主要な仕様は、先行して登場したハイエンド向けの「Hプロセッサ」(PBPは45W)と近い。ただし、外部(独立)GPU用のPCI Express 4.0バスが削減されている

  • CPUコア(Pコアはハイパースレッディング対応)
    • Pプロセッサは最大12コア24スレッド(Pコア6基+Eコア8基)
    • Uプロセッサは最大10コア12スレッド(Pコア2基+Eコア8基)
  • GPUコア(Xe-LPアーキテクチャ、最大稼働クロックはモデルにより異なる)
    • Core i7プロセッサのEU(実行ユニット)は96基
    • Core i5プロセッサのEUは80基
    • Core i3プロセッサのEUは64基
    • Pentium/CeleronプロセッサのEUは48基
  • メインメモリ(最大2チャンネル)
    • DDR5-4800、DDR4-3200、LPDDR5-5200、LPDDR4x-4267の各規格をサポート
  • PCI Express/Serial ATA
    • PCI Express 4.0バス:合計8レーン(ストレージデバイス用)
    • PCI Express 3.0バス:合計12レーン
    • Serial ATA 3.0ポート:2ポート
  • Thunderbolt/USB
    • Thunderbolt 4(USB4)ポート×4
    • USB 3.1ポート×4
    • USB 2.0ポート×10
  • 映像出力
    • eDP(Embedded DisplayPort) 1.4b(HBR3対応)
    • MIPI Display Serial Interface(DSI)2.0
    • HDMI 2.0b
  • その他のポート/機能
    • Wi-Fi 6E(IEEE 802.11ax)規格の無線LAN(※2)
    • 1000BASE-T規格の有線LAN
    • ISH(Integrated Sensor Hub)
    • SPI(Serial Peripheral Interface)/eSPI(Enhanced SPI)

(※2)Wi-Fi 6Eは一部の国/地域でのみ利用可能。利用できない国/地域では6GHz帯を使わずに「Wi-Fi 6」として利用可能

Pプロセッサ Pプロセッサの構造図。Hプロセッサから外部GPU用のPCI Express 4.0バス(16レーン)を削減したようなイメージだ

Uプロセッサ(9W)

 Uプロセッサの9Wモデルは、実装面積と消費電力を削減するためにPプロセッサやUプロセッサの15Wモデルから一部の機能が削減されている。メインメモリもローパワー規格のみのサポートとされた。

  • CPUコア(Pコアはハイパースレッディング対応)
    • 最大10コア12スレッド(Pコア2基+Eコア8基)
  • GPUコア(Xe-LPアーキテクチャ、最大稼働クロックはモデルにより異なる)
    • Core i7プロセッサのEUは96基
    • Core i5プロセッサのEUは80基
    • Core i3プロセッサのEUは64基
    • Pentium/CeleronプロセッサのEUは48基
  • メインメモリ(最大2チャンネル)
    • LPDDR5-5200、LPDDR4x-4267の各規格をサポート
  • PCI Express
    • PCI Express 4.0バス:合計4レーン(ストレージデバイス用)
    • PCI Express 3.0バス:合計10レーン
  • Thunderbolt/USB
    • Thunderbolt 4(USB4)ポート×2
    • USB 3.1ポート×4
    • USB 2.0ポート×6
  • 映像出力
    • eDP 1.4b(HBR3対応)
    • MIPI Display Serial Interface 2.0
    • HDMI 2.0b
  • その他のポート/機能
    • Wi-Fi 6E規格の無線LAN
    • 1000BASE-T規格の有線LAN
    • ISH
    • SPI/eSPI
Uプロセッサ Uプロセッサの構造図。15WモデルはPプロセッサと同様の構造となっているが、9Wモデルは一部のバス/ポートの数が削減されており、特にSerial ATA 3.0ポートは一切備えていない。加えて、メインメモリのサポートもLPDDRのみとされている

Pプロセッサは「エンスージアストレベル」のパフォーマンス

 PプロセッサとUプロセッサのPBPとターボパワー(TP:最大消費電力)は以下の通り設定されている。

  • Pプロセッサ
    • PBP:24W
    • TP:64W
  • Uプロセッサ(15Wモデル)
    • PBP:15W
    • TP:55W
  • Uプロセッサ(9Wモデル)
    • PBP:9W
    • TP:29W

 パワーモードの呼称が先代(開発コード名:Tiger Lake)から再び変更されたが、PBPは先の注釈にもある通りPL1、TPはPL2に相当するものだと理解すればいい。ただし、個々のPCにおけるCPUの最大消費電力は「PBP以上TP以下」の範囲内で設定されるため、同じCPUでもメーカー(あるいはモデル)によってある程度の性能差が生じうることは先代と同様だ。

 Intelによると、PBPが15WとなるUプロセッサで最上位となるCore i7-1265U(Pコア2基+Eコア8基)は、同じ消費電力で稼働するCore i7-1195G7(2.9GHz〜5GHz、4コア8スレッド)と比べてCPUのマルチスレッド性能が上回るという。さらに、Pプロセッサの最上位であるCore i7-1280P(Pコア6基+Eコア8基)では、Core i7-1265Uをさらに上回るマルチスレッド性能を発揮できるという。

 Pプロセッサについて、「そもそも消費電力大きいじゃん」「コアの数が違うじゃん」というツッコミたくなる気持ちは良く分かる。Intelのいう「エンスージアストレベルのパフォーマンス」もちょっと大げさに聞こえなくもない。しかし「Uプロセッサだとパフォーマンスが物足りないけれど、Hプロセッサだと過剰なんだよな……」という人にとって、新たな選択肢ができたということは歓迎すべきことだろう。

エンスージアストモデル? 25Wで稼働するCore i7-1195G7を100%とした場合のマルチスレッド性能の比較。CPU自体の消費電力はさておき、モバイルできる範囲でより高い処理性能を得るなら第12世代Coreプロセッサが有利であるということを示している
Blenderで比較 「Blender 3.0」を使った3Dレンダリング時間の比較。Core i7-1280PはCore i7-1195G7の半分の時間で作業を完了できている
Webブラウジングと写真編集 Webブラウジングと写真編集(Adobe Photoshop)のテスト結果。Webブラウジングではx86系CPUのパフォーマンスの高さが伺える

 内蔵GPUは、先代に引き続きXe-LPアーキテクチャに基づくものとなる。Core i5以上では「Iris Xe Graphics」、Core i3以下では「Intel UHD Graphics」という名称になるのも同様だ。Iris Xe Graphicsなら、フルHD(1920×1080ピクセル)のゲームであればある程度快適に楽しめる。

ゲームのフレームレート Core i7-1280PでフルHD解像度におけるフレームレートを計測した結果。ゲームによっては高画質設定でも100fpsを超えるようだ

 第12世代Coreプロセッサには、IPU(Image Processiong Unit)が内蔵されている。IPU自体は第10世代Coreプロセッサ(開発コード名:Ice Lake)から搭載しているが、第12世代Coreプロセッサの「IPU6」は、第10世代と比べると最大で10倍の処理パフォーマンスを持っているという。Web会議アプリやWebカメラのデバイスドライバーがうまく活用できれば、消費電力を抑えつつ、カメラの映像品質を引き上げられる。

IPU 第12世代Coreプロセッサが内蔵するIPU6は、第10世代(Ice Lake)比で最大10倍の処理能力を備える。同じカメラセンサーを使った場合でも、画像処理にIPU6を通せば画質が飛躍的に改善するという
デタッチャブルも 9WのUプロセッサは、デタッチャブル2in1やフォルダブルPCで使うことを想定しているという。2022年中には、P/Uプロセッサを搭載するノートPCが250以上出る見通しとのことだ

Evoプラットフォームは「第3世代」に

 第12世代Coreプロセッサのリリースに合わせて、IntelのノートPC認証プログラム「Intel Evoプラットフォーム」は、前身の「Project Athena」から数えて第3世代となる。

 第3世代のEvoプラットフォームは、第11世代Coreプロセッサに合わせて登場した第2世代の要件を時代に合わせて進歩させたものだ。主要なものは以下の通りだ。

  • ハードウェア的要件
    • 第12世代Coreプロセッサを搭載すること
    • 「Intel Wi-Fi 6E(Gig+)」を実装すること
    • 「Intel CPS(Connectivity Performance Suite)」に対応すること(※3)
    • 音声ノイズ抑制機能を備えること(Intel GNAを活用)
    • フルHD(1920×1080ピクセル)以上の解像度で撮影できるカメラを搭載すること
    • Intel VSC(Visual Sensing Controller)を搭載すること(オプション)
  • 体験要件
    • 一貫性のあるレスポンスを維持すること
    • 最大9時間以上のバッテリー駆動時間を確保すること
    • 1秒未満でスリープ(スタンバイ)から復帰できること
    • 30分で4時間以上稼働できるだけのバッテリー容量を充電できること
    • Web会議に便利な4つの機能を備えること(ハードウェア要件に含まれている)

(※3)通信に優先順位を付ける機能と、Wi-Fi接続を自動的に分析して最も品質の良いアクセスポイントにつなぎ替える機能からなる

 Intelによると、100を超える第3世代Evoプラットフォームに準拠するモデルが2022年中にリリースされる予定だという。そのうち、8を超えるモデルがIntel VSCを備え、15を超えるモデルが5G通信に対応するとのことだ。

第3世代 第12世代Coreプロセッサに合わせて登場する第3世代のIntel Evoプラットフォームの要件
体験要件 体験要件の1つである「Web会議に便利な4つの機能を備えること」は、ハードウェア要件を満たせば容易にクリアできそうに見える。ただし、ハードウェアはもちろん、ソフトウェアを含めてチューニングをしっかりとしないと満たせないようだ
VSCと5G Evoプラットフォームの必須要件ではないが、Intel VSCを搭載するモデルや5G通信に対応するモデルも登場する

“周辺”にもフォーカス

 第3世代Evoプラットフォームでは、ノートPCを取り巻く“周辺要素”にもフォーカスを当てている。

 まず、2022年末をめどにスマートフォン、タブレットやスマートウォッチなどマルチデバイス間のシームレスな連携機能を一部のEvoプラットフォーム準拠モデルに実装する。具体的には、以下のようなことを行えるようにするという。

  • スマホの通話の発着信やメッセージ(SMS)の送受信
  • 写真やファイルの転送/共有
  • マルチデバイス間の情報のシームレスな共有
周辺体験 2022年末をめどに、一部のEvoプラットフォーム対応ノートPCでデバイス間連携機能を実装する

 さらに、Evoプラットフォームに最適化された周辺機器を認証する「Enginered for Intel Evo」アクセサリーパートナープログラムを立ち上げる。この認証を取得できる周辺機器はThunderbolt 3/4対応機器とBluetoothヘッドセットで、以下の要件を満たした上でIntelの認証を受ける必要がある。

  • Thunderbolt 3/4デバイス
    • スリープからの復帰が迅速であること
    • クロスデバイス利用が問題なく行えること(高い互換性を有すること)
    • (PCの)急速充電に対応すること(電源供給に対応する場合)
  • Bluetoothヘッドセット
    • 高い品質と信頼性を備えること
    • ペアリングが簡単であること
    • PCとスマホと簡単に切り替えられること
デバイス Evoプラットフォーム対応ノートPCで使うThunderbolt 3/4デバイスやBluetoothヘッドセットを認証する「Enginered for Intel Evo」認証もスタートする。現時点では既存製品が中心となっているようだ

フォルダブルPC向け要件も

 第3世代Evoプラットフォームでは、フォルダブル(折り曲げ可能な)ディスプレイを持つタブレットPCも認証対象に含まれる。第3世代のハードウェア/体験要件を全て満たした上で、以下の要件も全て満たす必要がある。

  • 新しい使い方や体験をもたらす新しい形状を持つこと
  • 16型以上かつQHD(2560×1440ピクセル)以上の表示に対応する、タッチ対応で没入感のあるフォルダブルディスプレイを備えること
  • 本体から離れて設置できるBluetoothキーボードを提供すること
フォルダブルPC向け要件 フォルダブルPC向けのEvoプラットフォームの要件

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