「検査と隔離」のあり方全般を急いで洗い直す必要がある。東京五輪の水際対策の不備が早くも目に見える形となってあらわれた。「安心安全」をただ唱えるだけでは意味がない。大事なのは実践だ。
来日したウガンダ選手団から新型コロナの感染者が見つかった。全員ワクチンを接種し、所定の陰性結果証明書を提出していたが、ウイルスはこれを軽々と乗り越えて「入国」した。
接種や証明書は100%の安全を保証するものではなく、感染者が来日することは想定の範囲内だ。問題は、成田空港のPCR検査でコーチ1人に陽性反応が出た後の措置である。
本人は施設に隔離されたが、残りの選手らはそのまま貸し切りバスでホストタウン(合宿地)の大阪府泉佐野市に向かった。4日後、新たに選手1人の感染が判明。接遇にあたった市職員やバスの運転手らも次々と濃厚接触者に認定された。
地元の知事や市長から疑問の声が出たのは当然だ。
それでも政府は、感染者以外はあくまでもホストタウンに移動させ、管轄する保健所に対応させるとしていた。空港周辺に留め置くのは物理的に困難だというのが理由だが、要はその準備を怠ってきたという話ではないか。政府が唱える水際対策とは、全国各地が「水際」になることだと知って、驚き、あきれた人は多いのではないか。
さすがに空港でのチェック・隔離のあり方の再検討を始めたようだが、何とも心もとない。
ホストタウンには528の自治体が手を挙げた。コロナ禍で返上したり、相手国が合宿を断念したりする例が相次ぐが、それでも相当な規模だ。
宿舎の整備や感染者が出たときの調査、医療の提供は都道府県を含むホストタウン側の責任で、政府の仕事はマニュアル作りの助言などにとどまる。それが政府の立場で、説明もしてきたと言うかも知れない。だがその認識は共有されず、全体として有効に機能する態勢がとられていない現実が、今回の騒ぎで明らかになったといえる。
大事なのはウイルスの拡散を防ぎ、健康を守ることだ。対策の周知徹底とともに、強力な変異株の流行などの事態にも対処できるよう、その対策も適宜、より合理的で納得できる内容に改めていくことが必要だ。
先日最新版が公表された関係者の行動ルールをめぐっても、「動線分離を徹底する」という菅首相の約束に反するような記載があるとの指摘が出ている。
開催への疑念は解消されないまま、海外からの受け入れが間もなく本格化する。「穴」を埋める作業は待ったなしだ。
からの記事と詳細 ( (社説)五輪感染対策 「穴」次々 健康どう守る:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル )
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