新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、地域の住民や離れて暮らす家族との交流が減り、孤立化や体力低下が懸念される高齢者の暮らしを支えようと、ICT(情報通信技術)の活用を試みる自治体が増えている。インターネットなどを使えば対面しなくても情報提供や健康促進の指導ができると期待される。ただ、電子機器に不慣れな高齢者と最先端技術をどうつなぐかも課題。各地で実証実験が進んでいる。 (小川恵理子)
テレビで簡単に視聴
「コロナ前は市の健康教室に通っていたけれど、動画の配信なら、いつでも家で見られていいね」
大阪府泉大津市の直川房子さん(87)が、自宅で健康維持のための動画をテレビに映し出しながら、大きく口を開けたり、早口言葉を練習したりしていた。
同市は今年7月から10月にかけて、スマートフォンで撮影した動画や写真をテレビに直接送信できるサービス「まごチャンネル」を使って、70歳以上の高齢者10人を対象に、感染症予防策や健康維持のための動画を配信する実験を行った。
実験はまごチャンネルを開発した「チカク」(東京都)と進めた。もともとは離れて過ごす家族が孫の写真や動画を簡単に祖父母に見せるために作られたサービスで、受信機を付けたテレビがあればリモコン一つで操作できる。実験では行政情報の視聴率が100%にのぼった。直川さんも「使い方も簡単ですぐ覚えられた。テレビの画面は見やすい」と喜ぶ。
情報をどう届けるか
新型コロナ感染拡大で、同市では高齢者向けに感染防止策の情報発信をしようとしても自宅への訪問がかなわず、情報を届けられていない問題が起きていた。
スマホなどを使い慣れた若い世代ならホームページや会員制交流サイト(SNS)を通じて情報伝達できる。しかし、高齢者の多くはインターネットを使わない「情報弱者となりやすい」と市危機管理課の担当者は指摘する。実際、内閣府が平成27年に行った60歳以上を対象にした調査でも、80歳代の5割以上が、パソコンや携帯電話、ファクスなどの情報機器を「いずれも使わない」と答えていた。
一方、テレビは高齢者にとって親しみのある道具。同市では今後、まごチャンネルを活用した情報発信を検討する。担当者は「まごチャンネルが『令和の回覧板』のようになるかもしれない」と期待する。
継続的な支援を
滋賀県長浜市でも、1人暮らしの75歳以上の高齢者(10人)を対象にICT機器を利用した実証実験を行った。NEC(東京都)の協力で、コミュニケーションロボット「PaPeRo(パペロ) i(アイ)」を使う。高齢者がロボットに話し掛けると天気予報やニュースなどを返答し、小型ディスプレーで、離れて住む家族とのやりとりや体操なども楽しめる。市の担当者は「対面でのコミュニケーションと完全に置き換えられるとは思わないが、『新しい生活様式』が進む中での支援になれば」と話す。
大阪府高槻市では、今年から「高齢者ICT推進事業」をスタートさせた。高齢者も現役世代と同じスピードで情報を受け取ることができるように、スマホなどの操作に不慣れな高齢者向けの講習会を開く。
高齢者支援に詳しい駒沢大学文学部の荒井浩道教授(社会福祉学)は「これまでも認知症予防や孤独解消にICT活用が進められてきたが、コロナ禍で動きが加速している。導入して終わりではなく、継続的なサポート体制の整備が必要。電子機器にも昔の黒電話のようなシンプルさが求められる」と指摘している。
◇
コロナ禍が高齢者に与える影響は大きい。外出を控え、他者との交流が減れば、運動機能だけでなく、注意力や判断力など認知機能の低下を招き、介護や認知症リスクの増大につながると懸念されている。
日本認知症予防学会が6月、医療や介護に従事する会員約2200人に実施したアンケート(有効回答414人)では、約半数が外出自粛などで「担当する高齢者の認知機能が悪化」と回答。また、約7割が面会や診察のためのオンライン設備を使用していないとし、その理由を「環境の未整備」(87人)、「患者側が対応できない」(26人)とした。
同学会理事長で鳥取大学の浦上(うらかみ)克哉教授(認知症予防学)は「ふれあいを減らす新しい生活様式と認知症予防はまさに対極」と話し、そのうえで「顔を見ながらコミュニケーションがとれるICTの活用は認知症予防にも有効」と評価する。ただ、動画配信などについては「予防に効果が認められた内容を提供する必要がある」としている。
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November 21, 2020 at 09:00AM
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