楽天モバイルの無料サポーターになって、初の海外出張に来ています。訪れたのは、サムスン電子の発表会がある米サンフランシスコ。その取材用の回線として、楽天モバイルのSIMカードを使ってローミングを試してみました。無料サポーター期間はローミング料金も0円。容量は一応100GBと区切られていますが、"おかわり"し放題なので、事実上の使い放題と言えます。
楽天モバイルのSIMカードで、国際ローミングを試した
まず、基本的な部分をおさらいしておくと、楽天モバイルの国際ローミングは大手3キャリアと仕組みが大きく異なっています。大手3キャリアは、それぞれが直接現地のキャリアと接続し、ローミングサービスを提供しているのに対し、楽天モバイルはフランスキャリアのOrange経由で海外キャリアに接続します。より正確に表現するなら、海外渡航時のみ、SIMカードがOrangeに切り替わると言った方がいいでしょう。仕組みとしては、SIMカードに割り振られた固有の識別番号のIMSIを2つ持ち、利用する国や地域によって使い分けています。もちろん、単なるOrangeのサービスではなく、きちんと楽天モバイル側のネットワークにも最終的に情報が伝わるため、使った分の容量はカウントされます。SIMカードの中身を切り替えることで、ローミングの経路をOrange経由にしたというわけです。
▲国際ローミングには、Orangeのサービスを活用。1枚のSIMカードに2つのキャリアのIMSIを格納し、切り替えて利用できる
サポートプログラム対象外の機種で試す
今回、SIMカードはドコモ版の「Galaxy Note10+」に入れて使ってみることにしました。ところが、空港に降り立ち、電源を入れても一向にネットワークをつかみません。無料サポータープログラムの対象機種ではないため、仕方がないのかもしれませんが、どうやらIMSIが楽天モバイルのままになっているようです。
もしやと思い、無料サポータープログラム用に購入したOPPOの「A5 2020」にSIMカードを挿し直し、電源を入れてみたところ、しばらく経ってから、米キャリアのAT&Tに接続しました。ただし、APNは楽天モバイル用の「rakuten.jp」のまま。一見すると、IMSIが切り替わっているどうかが分かりません。ただ、試しにスピードテストを実施してみたところ、接続経路がOrange経由になっていました。
▲OPPO A5 2020にSIMを指したところ、すぐにローミングを行えた
▲APNはrakuten.jpのままでつながったが、キャリア名を示すMMCはOrangeのものに
なぜドコモ版Galaxy Note10+がダメで、OPPOのA5 2020だったらすぐにOrangeに切り替わったのか。これは、おそらくドコモ版の端末から、「SIM Toolkit」というSIMカードの情報を書き換えるためのアプリが排除されているためと思われます。実は、A5 2020で国際ローミングを始めたあと、改めてGalaxy Note10+にSIMカードを挿し直してみたところ、同様に通信をすることができました。
改めてGalaxy Note10+のAPN欄を開いてみたところ、APN欄がOrangeのAPNで埋め尽くされていました。通信できないときは楽天モバイルのAPNだったため、IMSIが切り替わってOrangeのSIMカードとして認識していることが分かります。この状態で到着したお昼過ぎから夜まで使っていますが、特に問題らしい問題は起こっていません。
▲ローミング可能になったあとのSIMカードを挿したところ、OrangeのAPNが出現。これもSIMカードのIMSIが切り替わったためだ
ちなみに、米国ではAT&TとT-Mobileのどちらかにつながるようです。ネットワークサーチをかけ、接続できたのがこの2つで、残る2キャリアのVerizonとSprintにはつながりませんでした。サンフランシスコ市内では、正直どちらに接続しても十分なエリアですが、郊外に出るようなときや大都市圏でなければ、筆者の経験上、AT&Tに接続した方が使い勝手はよさそうです。
▲楽天モバイル側から細かな情報が公開されていないが、米国ではAT&TとT-Mobileにつながる模様
通信速度は、サンフランシスコ市内中心部のホテルで、10Mbpsをやや下回る程度。大容量ファイルのダウンロードには向かないかもしれませんが、Webを見たり、比較的容量の小さな写真をダウンロードしたりするには、十分な速度が出ています。ローミングのためか、遅延が500ms以上出ているのはネックですが、現地キャリアに直接接続しているわけではないため、これは仕方がない点と言えます。
▲AT&Tで速度を計測した。遅延が少々気になるが、速度はまずまず
参入を宣言してからサービス開始まで、比較的短期間だったため、大手3キャリアのようなローミングは難しかったというのが実情でしょう。1社1社と交渉していくのは、マンパワーも必要です。SIMカードのIMSIを丸ごと切り替えるというのは、その意味で、楽天モバイルらしい裏技的な解決方法と言えるかもしれません。
ローミング状態では電話やSMSが利用できませんでしたが、楽天Linkによってそれも可能になっています。最新規格のRCS(リッチ・コミュニケーション・サービス)を活用し、足りないサービスを補っているところも、新規参入事業者らしく、好感が持てるところです。
▲電話はできないが、楽天Link経由で発着信が可能だった
一方で、この方法には限界もあります。今回、筆者のドコモ版Galaxy Note10+が当初利用できなかったように、端末を限定してしまうからです。無料サポータープログラム中は端末を指定しているため、あえてドコモ版Galaxy Note10+を使った筆者が悪いのですが、本サービスで他社端末を受け入れたとき、トラブルが起こりかねません。
実際、ドコモから端末そのままで移ってきた場合、対応する方法がなくなってしまうからです。電話やSMSを使おうとすると、楽天Linkがマストになることもあり、現時点ではiPhoneも選択肢から外れてしまいます。
現時点では無料で使えているため、多少のトラブルは気になりませんが、料金がいくらになるのかは不透明です。キャリアの国際ローミングはドコモやauが24時間980円を打ち出していましたが、ドコモは複数日契約で、auは事前予約で割引が受けられる仕組みも導入しており、価格競争が起こっています。ここにどこまで対抗できるのかは、要注目と言えるでしょう。
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February 14, 2020 at 04:13PM
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独特の挙動、楽天モバイルの国際ローミングを試した(石野純也) - Engadget 日本版
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