楽天グループは14日、2024年度第1四半期の決算を発表した。決算説明会には、代表取締役会長兼社長最高執行役員の三木谷浩史氏らが登壇した。本稿では、モバイルセグメントを中心に、プレゼンテーションや質疑応答の内容をお届けする。
2024年度第1四半期は、「モバイル」「インターネットサービス」「フィンテック」の全セグメントにおいて前年同期比で増収を記録。当期連結売上収益は、第1四半期として過去最高の5136億円(前年同期比8.0%増)となった。Non-GAAP営業利益は前年同期比で435億円改善している。
モバイルセグメントにおける第1四半期の売上収益は998億円(前年同期比3.6%増)で、増収を記録。Non-GAAP営業損失は719億円で、前年同期比で307億円の改善となった。
楽天モバイル単体の売上収益は620億円(前年同期比7.1%増)で増収。Non-GAAP営業損失は、前年同期比259億円の改善となる730億円。
MNOの契約数(個人・法人)は、2024年5月13日時点で680万回線となり、伸長している。第1四半期の調整後MNO解約率は1.27%。2024年3月の月次MNO ARPU(ユーザーひとりあたりの平均売上)は2024円となった。
今後の目標として、契約回線数を800万~1000万契約、ARPUの目標を2500円~3000円とする。
Opensignalによる調査結果を披露し、通信品質の改善にも自信を見せた三木谷氏。「つながりやすさも最強へ、ということで頑張っていきたい」と語った。
KDDIとの新ローミング契約に基づくネットワーク拡大が進んでおり、プラチナバンドについては6月から商用サービスを開始する予定。また、関東エリアでは、5G(Sub6)のエリアを年内に最大1.6倍まで拡大する。
今後は、楽天カードをはじめとした楽天のサービスとのシナジーをさらに推進するほか、法人向けのモバイル事業も強化していく構え。
質疑応答
――楽天モバイルの利用者(回線数)の伸びはどの程度加速しているのか。
三木谷氏
回線数の伸び(に影響する要因)は、大きく分けて3つあるのかなと思います。法人、新規の個人の加入、個人の脱退です。
4月に関しては、加入も脱退も大幅に改善されたというか、良くなっていると考えていただければ。
要因として「最強家族プログラム」「最強青春プログラム」「最強こどもプログラム」があり、それに加えて、(楽天)カードとのコラボレーションが非常にうまく機能しています。
エコシステムからの導入が非常に増えてきているとともに、我々のネットワークのカバレッジに対する安心感も醸成できてきたのかなと思っています。
施策による押上げ以上に、ベースとしての新規加入が増えてきていると考えます。
――ARPUについて聞きたい。黒字化に向け、ARPU単独で2500円以上を目指していくのか。
三木谷氏
ARPUについて、今の2000円というところを2500円に単独で持っていくよう、努力していきます。
ただ、グループ全体としては、我々が単体で事業を始めているというより、楽天モバイルに入ると楽天グループに対するロイヤリティがさらに上がっていき、全体としてデータも含めていろいろなものが見えてくるということが非常に大きいと思います。現在の1050円くらいのグループシナジーも、1500円、2000円というように増やしていきたいです。
――携帯事業で、営業利益ベースでの黒字化の時期はいつ頃を目指しているのか。
三木谷氏
携帯事業のNon-GAAP OIの黒字化のタイミングについては発表しませんので、申し訳ありませんがお答えは差し控えます。できるだけ早く実現したいと思っています。
――ここ数年、第1四半期の決算の直前に毎年料金プランを改定していたと思う。今年はそういうものがなかったが、料金プランはある程度固まってきたのか。また、目標のARPUは2500円~3000円で、3000円というところから見ると(現状との差が)まだ1000円ある。ハードルが高いと思うが。
三木谷氏
我々としては、特にデータ(容量)をたくさん使えていらっしゃる方々については、(データ)無制限で「最強家族プログラム」の割引があれば(月額)2880円税別というのは、非常に魅力的だなと感じていただいていると思います。
大きな戦略としては、より付加価値の高いサービスを付け加えていくということがひとつあります。
それから「Rakuten Link」について、いわゆるアプリストアだけではなくコミュニケーション(アプリ)についてもオープンにしていこう、ということが内閣府で閣議決定されたと聞いています。
Rakuten Linkによる広告収入のアップも、おそらく非常に有効性が出ている。まだ完全に売り切れていないという状況ですので、それも考えていきます。
あとは、データを活用したさまざまな事業の展開ということで、実効的にARPUを上げていきます。
あるいはセキュリティレベルを高めていくということは必要になってくると思いますし、AIサービスをこの中に加えていくのも非常に魅力的なことのひとつなのかなと思っていますので、皆さんに使っていただきながらARPUの実質的なアップに取り組みたいと思います。
それから5Gになると、やっぱりARPUがかなり上がります。たとえば今は大阪地区でもフルスケールでやっていますが、5Gが中心になってくると、データボリュームが非常に増えていきます。
5Gが普及していくと、当然ネットワークスピードが速くなり、よりデータが必要になります。あとは光(通信)とのバンドルや「Rakuten Turbo」も戦略的に使っていきつつ、ARPUを上げていきたいです。
(事業を)始めてまだ4年なので、オプションの充実やバンドルの方法といったことも、今後、今年矢継ぎ早に(施策を打っていく予定です。
――KDDIとの新ローミング、KDDIの事情で少し展開が遅れているという話があった。この人口カバー率が99.9%まで来たのは、KDDIのネットワークがフルで使えるようになったということなのか。あるいはもう少し残っているということなのか。
三木谷氏
ローミングについてはそのように考えていただいていいのかなというふうに思いますが、我々のプラチナバンドをより効果的に使っていきます。
そして2026年中には、衛星からの直接(通信)を考えていきたいと思っていて、つながりやすさでもナンバーワンを実現したいと思います。
――AIを使ったサービスについて、利用者にとってわかりやすいサービスはどのようなものが出てくるのか。
三木谷氏
楽天モバイルユーザーであれば、生成AIが非常に安価に使えるとか、そういうようなことも含めて実装の計画を推進しています。
――プラチナバンドについて、課題感や手応えは。関連して、プラチナバンドについて10年かけて540億程度の投資という見通しを出していたが、商用サービスを始めるにあたって変更はないのか。
三木谷氏
プラチナバンド(の投資)については、大変正直に言って、今後の契約件数の伸びによって可変していくのかなと思っています。
ですが、あくまでもこれは3MHzという非常に限られた帯域ですので、どちらかと言えばやっぱりカバレッジを増やしていくということ。キャパシティを大きくさばいていく目的ではありません。
実は現在の1.7GHzも、ソフトウェアアップグレードを継続的に行っています。アップリンクとダウンリンクのいろいろなファインチューニングなどを通して、実効的なカバー率が劇的に上がってきています。
我々がソフトウェアを独自で開発しているというのは非常に大きいのかなと思っていますし、他社さんとの大きな違いなのかなと思います。
今のところ私の受けている報告として、プラチナバンドの実験発射については、大成功に終わっていて、何ら問題はないということです。
――楽天モバイルの解約率が1年前と比べると半減ぐらいになっているということだったが、要因は。また、端末販売が結構減っているように見える。このあたりはどう捉えているのか。
三木谷氏
解約率は本当に良くなってきています。ひとつは当然、ネットワークのクオリティおよびカバー率が上がっているということ。もうひとつは、エコシステムを利用していただくと非常に有利であるという認知が広がってきたこと。それに加えて「最強家族プログラム」をはじめとしたインセンティブが発展してきました。
端末販売については、大変正直に申し上げまして、SIMフリーになっていくということですので、デバイスのディスカウントをしすぎないように(します)。
我々の料金は安く広く使っていただけるという戦略です。デバイス売上だけに頼った従来のマーケティング戦略は収益的には良くないので、バランスよくやっていきたいと思っています。
――過去の楽天モバイル契約者向けのキャンペーンを実施している。手応えは。
三木谷氏
具体的な数字はちょっと覚えていませんが、大変好評であるというふうに報告を受けています。
からの記事と詳細 ( 「つながりやすさでもNo.1を目指す」、楽天モバイル三木谷氏が決算会見で見せた自信 - ケータイ Watch )
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