ソフトバンクは2024年3月期第2四半期の連結業績を発表した。上期の売上高は前年同期比4%増の2兆9338億円、営業利益は同6%増の5144億円の増収増益だった。宮川潤一社長は「中経(中期経営計画)では経営の指数として純利益にこだわる」としており、その純利益は3021億円で同29%の増益だった。
料金値下げの影響で赤字となっていたモバイル事業が下げ止まって、想定よりも早く回復していたこと、エンタープライズ事業やLINEやヤフーのメディア・EC事業が好調なことから利益が拡大した。
通期予想に対しては営業利益、純利益がそれぞれ進捗(しんちょく)率66%、72%と順調に推移しており、セグメント別の営業利益予想も順調に進捗。「2025年の中期経営計画のテーマに対して順調」と宮川社長はアピールしている。
モバイル事業の売り上げは2023年度中に反転へ ソフトバンクブランドの伸びが想定よりも好調
主力のコンシューマー事業は、セグメント売上高が1兆3803億円で同0.4%減、セグメント営業利益は同2%減の3096億円と減収減益だった。ただ、モバイル事業における売上高では、前年同期比の減少額が第1四半期で58億円マイナス、第2四半期で5億円マイナスと縮小傾向で、「当初見込みよりも早く回復している。今年度(2023年度)中の反転も見えてきた。来年度通期で反転すると話していたが、完全にそれが視野に入ってきた」と宮川社長。
モバイル契約数は、主要回線の純増数が40万増、スマートフォンが同63万増と好調で、2022年度通期の純増数168万件増と同等のレベルを目標とする。MNPに関してはNTTドコモ、KDDI、楽天モバイルの各社に対して全て転入超過のプラスとなったとしており、好調に推移した。
スマートフォン契約数は第2四半期に2989万に達した。11月6日には目標としていた3000万契約を「ようやく突破できた」と宮川社長。「これを通過点に引き続き頑張っていきたい」と意気込む。
ソフトバンクブランドでは、PayPayと連携してPayPayポイントの付与率がアップする連携プラン「ペイトク」を10月に提供。Y!mobile(ワイモバイル)では1GBあたりの単価を引き下げる「シンプル2」プランをリリース。
いずれも契約数の動きは好調で、特に「ペイトク無制限が好調。Y!mobileよりも毎日のレポートでは勢いがある」(宮川社長)という。宮川社長自身はY!mobileの新料金の方がユーザーに受け入れられると考えていたそうだが、「ソフトバンクブランドの伸びの方がよく、自分の感覚とは異なっていた」と想定外の動きだったという認識だ。
ARPU(1ユーザーあたりの月間平均収入)自体、今後数年間は横ばい、というのが宮川社長の考えだが、純増によってユーザー数が増加しているため、全体の売り上げとしては伸びているという現状。加えて、「当初見込んでいたほどARPUが痛まなかった」(同)ことも奏功した。
好調だというペイトクだが、「ポイント還元が手厚く、グループ企業(PayPay)を育てるために販促費をばらまいていると見えるかもしれないが、そうではない」と宮川社長は強調。例えばヤフーショッピングやPayPay、PayPayカードのいずれか1つを利用している人のモバイル事業の解約率は、いずれも利用していない人の3分の1程度で、「グループサービスとの連携で、当社の(モバイル事業の)顧客基盤拡大につながっている」(同)ため、PayPayにメリットがあるだけでなく、ソフトバンク側にもメリットがあるという。
ファイナンス事業は20億円の赤字も、大幅に改善
そのPayPayを含むファイナンス事業は、PayPayの子会社化によって売上高は同2.9倍の1095億円となった。営業利益は、同じくPayPay子会社化で70億円の減益となる20億円の赤字。
ただし、PayPayの子会社化は2022年度第3四半期で、これが期初から子会社化していたとすると92億円の赤字で、それが20億円の赤字まで改善していることになるため、「実力ベースでは大幅に改善している」として、「心配していない」と宮川社長。
PayPayカードを含むPayPayの連結売上高は33%増の995億円、連結EBITDAは41億円の黒字で、上期の2四半期は連続で黒字化を達成した。
その他の施策としては、10月からは台湾の3つのQRコード決済と連携し、国内のPayPay加盟店で利用できるようになった。従来の中国や韓国などのコード決済とあわせて、訪日外国人の約70%が利用するキャッシュレス決済と接続可能になった。これによってPayPayの決済取扱高をさらに拡大していきたい考えだ。
衛星通信とHAPSがさらに進展
衛星通信などの「非地上系ネットワーク(NTN)」として、ソフトバンクはOneWeb、Starlink Business、HAPSの3種類を活用して圏外エリアのない世界を実現しようとしている。
9月に販売パートナー契約を結んだOneWebは、高度1200kmに浮かぶ低軌道衛星を使った帯域保証の専用線サービスを提供。下り速度は195Mbps、上り速度は32Mbpsとなる。従来の静止衛星は3万6000kmの高度にあり、それだけ低軌道であるためにより低遅延になることが特徴。OneWebでは30ms程度となり、「地上のLTEと同程度の遅延」と宮川社長。
同様の低軌道衛星Starlinkを活用するStarlink Businessでは、ベストエフォート型で下り最大220Mbps、上り最大25Mbpsを提供。高度550kmなのでさらに低遅延。宮川社長は「顧客のニーズに合わせて2種類の衛星でブロードバンドを提供したい」と話す。
HAPSは情報通信研究機構(NICT)から2つの委託研究を受託。5年間で最大136億円の受託料で、特許取得済みの技術の実用化やシステム開発などを進める。こうした研究開発でHAPSの大容量化も可能になり、今後さらに利用が拡大する端末のデータ容量増大に対して、衛星通信ではまかなえなくなってもモバイル端末の通信回線としてHAPSが活用できる。
HAPSはソフトバンクが先行して開発を続けてきたため、先行者メリットがあって有利なポジションにあると宮川社長。今後も開発を続けていく考えだ。
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