ドコモ、KDDI、ソフトバンクの上期決算が出そろった。2021年に始まった官製値下げの影響を受け、売り上げ、収益ともに落ち込んでいた3社のコンシューマー事業だが、コロナ明けでトラフィックが増加したことに伴い、比較的料金が高い無制限/大容量プランに加入するユーザーが増加。1ユーザーからの平均売り上げであるARPUが反転するキャリアも出始めている。
一方で、ユーザー数やARPUが急増する可能性は低く、各社とも非通信領域の開拓を行っている。KDDIの「auマネ活プラン」や、ソフトバンクの「ペイトク」といった、通信と直接連携する料金プランも登場しており、今後はこうした形が主流になっていく可能性もある。通信事業が回復傾向にある中、大手3社は次の一手を打っているといえる。ここでは、その詳細を見ていきたい。
収入増、ID増に転じたKDDI、ソフトバンクも売り上げ減少は底打ちに
2021年に始まった通信料値下げの影響を受け、コンシューマー事業で苦戦を強いられていた大手3社。そこから約2年がたち、徐々に復活の兆しが見え始めている。マルチブランド総合ARPU収入が反転したのが、KDDIだ。上期の通信ARPU収入は7281億円を記録。前年同期の7373億円から、わずかながら増加している。付加価値ARPU収入も増加した結果、マルチブランド総合APRU収入も全体ではプラスで着地した。
これは、ユーザー数であるマルチブランドID数が伸びたのと同時に、ARPUが拡大したことが大きい。その掛け算で、キャリアの通信料収入は伸びるからだ。KDDIのマルチブランドID数は上期で3094万まで拡大。落ち込んでいたARPUも第1四半期(4月から6月)から反転し、第2四半期(7月から9月)では3960円に増加している。KDDIの代表取締役社長CEOの高橋誠氏は、「(マルチブランドの通信料収入)がやっと前年同期比で8億円のプラスになった」と安堵(あんど)の表情をのぞかせた。
背景には、データトラフィックの増加があるという。高橋氏は、「テレビで見ていたものが、全部通信で見られるようになってきた」としながら、高校野球やバレー、サッカーなどの配信サービスを挙げた。こうしたサービスを提供すると、「それだけでトラフィックが上がる」という。結果として、auの無制限プランや、UQ mobileの中・大容量プランを選ぶユーザーが増えれば、ARPUの底上げになる。通信量収入が増加に転じたのは、こうした歯車がうまくかみ合い始めてきたことを意味するといえそうだ。
依然として減収減益は続いているものの、ソフトバンクも傾向は近い。上期のコンシューマー事業の売上高は、第2四半期(7月から9月)で減少額がマイナス5億円まで縮小。営業利益も2%減に踏みとどまった。ソフトバンクは、2023年度全体でコンシューマー事業単独での増益予想を打ち出しており、「もう少しでトントンのところまで来る」(代表取締役 社長執行役員兼CEO 宮川潤一氏)。宮川氏は、値下げの影響も「見込みより早く回復し、今年度(2023年度)中の反転も見えてきた」と自信を見せた。
ソフトバンクの業績回復を支えているのも、ユーザー数の増加とデータ通信量の増加だ。ソフトバンクは、どちらかといえば前者に重きを置いており、回線数獲得に注力している。その結果として、「累積のMNPは上期を通じて依然として好調で、ドコモ、KDDI、楽天モバイルに対し、全てプラスで〆ることができた」(同)。スマートフォン契約数は上期で2989万回線に達し、現在、3000万回線を超えている。純増数も、上期の主要回線だけで40万に達した。
ARPUも、「当初見込んでいたほどは痛まなかった」(同)という。実際、第2四半期のARPUは3750円で、第1四半期(4月から6月)の3720円から30円上がっている。2022年度は、第1四半期の3910円をピークにして、四半期ごとに下がっていたARPUが底打ちした格好だ。宮川氏も、「期待しているほどには上がらないと思う」と前置きしながら、「横ばいより下がることはこれでなくなると思う」と語っている。
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