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Thursday, November 16, 2023

楽天モバイル、プラチナバンド獲得しても“第2のソフトバンク”になれない3つの要因。唯一ありうる勝ち筋は? - Business Insider Japan

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今週も、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄先生が経営理論を思考の軸にしてイシューを語ります。参考にするのは先生の著書『世界標準の経営理論』。ただし、本連載はこの本がなくても平易に読み通せます。

楽天モバイルが悲願だったプラチナバンドを獲得しました。携帯業界はドコモ、KDDI、ソフトバンクの3大キャリアが圧倒的なシェアを誇る寡占市場。そこへプラチナバンドを手に入れた楽天モバイルが殴り込みを……と言いたいところですが、同じく後発で参入したソフトバンクと楽天モバイルとでは「決定的な違いが3つある」と入山先生は指摘します。

【音声版の試聴はこちら】(再生時間:15分43秒)※クリックすると音声が流れます


携帯キャリアが差別化するには?

こんにちは、入山章栄です。

この連載の第157回で、業績が振るわない楽天モバイルの決算資料にツッコミを入れたのを覚えていますか? その楽天モバイルが総務省からプラチナバンドを割り当てられることになったというニュースが入ってきました。

BIJ編集部・常盤

BIJ編集部・常盤

携帯キャリアといえば長いあいだ、ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3大キャリアの独壇場でした。そこへ参入したのが楽天モバイルですが、ほかの3社と比べるとまだまだサービスのクオリティ的に見劣りする状況でした。

しかし今回プラチナバンドを獲得したということは、これを機に楽天モバイルも大きく成長する可能性が出てきたのではないでしょうか?

うーん、僕は率直に言うと、別にプラチナバンドを獲得したからといって、楽天モバイルの状況が厳しいことは変わらないと思います。楽天モバイルが3社寡占の市場に殴り込みをかけたのは素晴らしいことだと思いますし、応援したい思いもあります。ただ、楽観的になれる材料がないんですよね。

BIJ編集部・常盤

BIJ編集部・常盤

なぜそう思われるのでしょう?

一番のポイントは、通信という業種ですね。まず端的に言って、通信ビジネスは差別化できない。これに尽きます。

これは競争戦略の基本でもありますが、楽天モバイルのように新しい市場に参入した企業が勝つ方法は、2つしかないんです。1つはほかの会社がマネできない独特の商品やサービスを提供する「差別化戦略」、もう1つは、ほかの会社も提供できるものだけれど、それをすごい低価格で提供する「コストリーダーシップ戦略」。このどちらかをとるしかありません。

そして携帯キャリアというのは、そもそも差別化がきかない業界なんですよ。だって、どの会社を使おうと、「回線につながる」という結果はほとんど変わらないでしょう

これが食べ物であれば、AとBで好みが出てきます。マクドナルドとモスバーガーは違うし、松屋と吉野家も違う。スターバックスとタリーズも違う。味もそうですし、メニューも、店内の雰囲気も、注文システムさえ微妙に違う。この差異でお客さんの好みが分かれていく。差別化ってそういうものなんですよね。

じゃあ、携帯キャリアにこのような差別化要素がふんだんにあるかといえば、ないんですよ。強いていえば、つながりやすいかどうかの違いしかない。でも、どの会社も基地局は増やしているから、つながりやすさに大した差はないですよね。あとはもう比較要素がない。だから差別化できないんです。

楽天モバイルがいくらプラチナバンドをとっても、すでにドコモ、ソフトバンク、KDDIもプラチナバンドを持っているわけですから、ほかの3社に追いついただけで、差別化にはなっていない。逆に言えば、楽天モバイルがプラチナバンドを獲得したからといって、「やった! これからは楽天を使おう」という人はあまりいないでしょう。常盤さんはどうですか?

BIJ編集部・常盤

BIJ編集部・常盤

申し訳ないですけど、私は乗り換えませんね。

ですよね。みんなもうプラチナバンドに入っているし、携帯のキャリア変更は面倒だからスイッチングコストが高い。だから差別化戦略はとれない。

競争戦略で差別化戦略が使えないとなると、あとは低価格で勝負する「コストリーダーシップ戦略」しか残されていません。でも楽天モバイルにそれができるかといえば、おそらくできない。なぜなら楽天モバイルはこれから毎年、何千億円という費用を投じて基地局を建てていかなければならないからです。

そんなときに価格をこれ以上大幅に下げるなんてことをしたら、ただでさえ赤字なのが大赤字になって、つぶれてしまう。だから低価格も差別化も、どちらも不可能に近いということです。

ソフトバンクと楽天モバイルの決定的な違い

「でも、ソフトバンクも何年か前に携帯市場に参入して成功したんだから、楽天にも可能性はあるんじゃないの?」こんなふうに思う人もいるかもしれません。

しかしソフトバンクと楽天モバイルには決定的な違いが3つあります。

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