楽天グループがモバイル部門の人員の削減に着手したことが、10日までに複数の関係者への取材で分かった。同事業で大規模な赤字が続く中、経費削減により財務体質を強化して外部の投資家を呼び込みたい考えだ。
楽天Gは同部門の「少なくない数」の社員をグループ内の別の部署に異動させる手続きを進めていると、関係者の1人が情報が公開されていないため匿名を条件に述べた。
モバイル部門の業績向上は同グループの課題となっており、損失が膨らむと楽天G本体の収益に大きな打撃を与える。株価は年初来約4割下げ、時価総額は1兆1000億円程度まで減少。S&Pグローバル・レーティングは9月、楽天Gを格下げ方向の「クレジット・ウオッチ」に指定している。楽天Gは同部門について2023年の単月黒字を目指している。
楽天Gの広報担当者は、人員削減などの動きについて、噂や憶測にはコメントしないと述べた。
ある関係者によると、楽天Gは苦戦しているモバイル事業を立て直すために外部の投資家による資金援助を模索したこともあった。また、別の関係者によると、金融機関の間ではモバイル事業売却の可否が話題となることもあったが、買い手候補がいないのではないかとの見立てになったという。
19年に携帯電話サービスを開始した楽天Gはモバイル部門に多額の資金を投じてきたが、 NTTドコモや KDDI、 ソフトバンクなどとの厳しいユーザー獲得競争の中、苦戦を続けている。
楽天Gが直面しているのは、携帯通信に最も適した周波数帯である プラチナバンドの再割り当て問題で、新規参入した楽天モバイルは早期の割り当てを求めているが、競合各社の反応は厳しい。
国内通信大手の ソフトバンクの宮川潤一社長は4日の決算会見で、自社の周波数帯を渡すとユーザーに影響が出るため「免許をお渡しするにしても、相当な準備期間がなくては」と述べ、性急な動きをけん制した。
楽天Gのモバイル事業の契約数は4-6月期(第2四半期)に22万件減少、同セグメントの営業損益は1243億円の赤字で前年同期と比べ25%赤字が拡大し。第1四半期(1350億円の赤字)との比較では損失幅は縮小した。
ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、マービン・ロー氏らはリポートで、楽天の収益はモバイル事業の戦略にかかっていると指摘。さらに、同事業の利用者数の短期的な増加の可能性については「視界は不良」との見解を示した。
楽天Gは21年、 日本郵政、中国の テンセント・ホールディングス子会社や米 ウォルマートなどに対して第三者割当増資を実施し、合計で約2400億円を調達。さらに22年5月には個人向け社債(通称・ 楽天モバイル債)を発売、1500億円分を完売した。関係者は、楽天がバランスシートを健全に見せることができれば、実行力のある投資家を引きつけることができる可能性があると述べた。
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