総務省が、携帯電話向け周波数の再割り当てを円滑に行うため設置した「携帯電話用周波数の再割当てに係る円滑な移行に関するタスクフォース」。ここで大きな論点となっているのが、プラチナバンドを求める楽天モバイルだ。
既存キャリア3社が保有するプラチナバンドの無償割譲を求める楽天モバイルだが、当然ドコモ、KDDI、ソフトバンクの反発は大きい。これまでの状況をまとめるとともに、10月21日に行われたタスクフォースの第14回会合での最新アップデートをお届けする。
楽天モバイルと既存3社の見解に大きな相違
これまで楽天モバイルは、電波政策懇談会において「プラチナバンド」(700M〜900MHz帯の周波数)を求めてきた。これまでのタスクフォースの会合では、楽天モバイルが大手3社のプラチナバンドから「5MHz幅×2」ずつの割譲を要望。また、再割当ての認定から既存免許人が周波数を明け渡すまでの「移行期間」は最長10年としているが、楽天モバイルは1年を希望し、さらに移行にかかる費用も負担しないことを希望している。
プラチナバンドを楽天モバイルに割り当てること、そのことに関しては既存キャリアも反対してはいない。ただ、隣り合った帯域を使用する場合、電波の干渉を防ぐために、既存3キャリアは基地局に電波干渉を防ぐフィルタを挿入することが必要だと主張している。一方、楽天モバイルはフィルタ不要との立場だ。
また、既存3キャリアは、周波数の帯域幅が変わることによって、電波の届きにくい場所に設置しているレピータも交換が必要になるとしている。3キャリアは、それらフィルタやレピータの設置・交換に10年程度、費用に1000億円前後かかり、費用は新たに周波数を使う事業者、つまり楽天モバイルが負担すべきとしている。このように、楽天モバイルと既存3キャリアの意見は対立してきた。
なお、新たに周波数を使う事業者が費用を負担することにより、基地局設置を前倒しできる「終了促進措置」という仕組みがあるが、楽天モバイルはこの仕組みを利用しないとしている。楽天モバイルの矢澤俊介社長は第10回会合で、「3社は(プラチナバンドの活用ですでに)大きな利益を上げている。いわゆる既得権益の世界に入ってきていると思う。制度的にも全くおかしな話で、1ミリも納得できるものではない」と強い口調で語っていた。
その一方で楽天モバイルは、基地局展開を進める地域を分けて、段階的に移行する方法を譲歩案として提示してもいる。とはいえ費用は負担しないとの考えは変わらない。
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楽天モバイルは「競願」で既存キャリアに勝てるか
10月1日に施行された「電波法及び放送法の一部を改正する法律」(改正電波法)によって、携帯電話などの周波数の再割当制度が創設される。携帯電話用周波数については、
- 「電波の有効利用の程度が一定の基準を満たさないとき」
- 「開設指針制定の申出があったとき」
- 「電波の公平かつ能率的な利用を確保するための周波数の再編が必要と認めるとき」
の3つの場合に、再割当てができるようになる。
楽天モバイルは(3)を適用して周波数の再割当てを要望するとみられるが、その際、いかに周波数を有効利用できるかを既存事業者と争うことになる。有効利用評価には、基地局の数や人口カバー率、面積カバー率、データ通信量などが評価される模様だが、人口カバー率にしてもデータ通信量にしても、楽天モバイルが既存事業者より上回る評価を得られるかは不透明だ。
楽天モバイルとしては、低廉な料金プランを提供していることも含めた評価を望んでいるが、「既存事業者よりも周波数あたりの利用効率が高くなるという具体的な根拠が必要」と指摘している有識者もいる。
契約者数や帯域のひっ迫率を考慮すると、3社から「5MHz幅×2」ずつ渡して15MHz幅にするのではなく、楽天モバイルには別の帯域から狭い帯域を割り当てればいいのではという意見も出ている。
10月21日に行われたタスクフォースの第14回会合では、基地局の受信フィルタを交換しなかった場合の影響について、既存3社が実機を用いて検証した結果が報告された。3社ともフィルタがないとスループットが低下するなどの結果を示し、従来通りフィルタは必要との見解を示したが、楽天モバイル側は、フィルタなしの場合に実際にユーザーが品質低下を体感するのかを疑問視している。
多少の譲歩案はあるものの、依然として双方の見解に大きな隔たりがある状態。どう結論を出すのか先が見えない状態が続いている。
筆者プロフィール:房野麻子
大学卒業後、新卒で某百貨店に就職。その後、出版社に転職。男性向けモノ情報誌、携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年にフリーランスライターとして独立。モバイル業界を中心に取材し、業界動向を追っている。
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