「皆で支える介護」実現へ一歩
人とのつながりが希薄になりがちな施設入居者や、独り暮らしなどの高齢者を「おしゃべり」で元気に―。タブレットの画面を通して若者ら幅広い世代の人と話すことで、健康な生活につなげようというシニア向けオンライン会話サービスが、松本市などで始まっている。
松本へ昨年2月に移住したマイケル・ブラウンさん(38)、高橋景さん(32)夫妻ら3人が、今年2月に法人を立ち上げ、提供する会話サービスが「nabetomo(ナベトモ)」だ。
安曇野市の福祉施設などで試験的に導入し、認知症の改善などの効果も期待されている。利用者だけでなく、話し相手を務める会話パートナーも、多くの人が参加できるシステム。「健康長寿社会」を支える新たな「信州発」の取り組みだ。
二人の経験原点“つながり”築く
松本市元町の住宅兼事務所。米国出身のマイケルさんと千葉県出身の高橋景さん夫妻は、友人で東京在住の王子田克樹さん(60)と3人で「nabetomo(ナベトモ)」を広げる活動を精力的に進めている。
会社名は「nabe(ナベ)」。マイケルさんが気に入った「鍋」から採った。鍋は、いろいろな具材を入れて料理するとおいしいものができる。それと同じように「いろんな人がごっちゃになってつながることで、よい関係が生まれる」との思いを込めた。
景さんによると、IT大手企業に勤務していたマイケルさんは2017年に来日。2日目に景さんと出会い、「令和の初日」(19年5月1日)に入籍した。都内に住んでいたが、「東京よりもっとゆっくりした所で子どもを育てたい」との思いが強く、「移住するなら信州がいい」と松本を選び、昨年2月に移り住んだ。12月には男の子が誕生した。
「ナベトモ」は、マイケルさんのカリフォルニアでの老人ホーム経営が“原点”。入居者は会う人が家族に限られ、訪ねてくるのが年1回の場合もある。人や社会とのつながりを失い、心身ともに衰え、生きる気力をなくしてしまうケースが多い。景さんも祖母のことで似た経験がある。「高齢者は人とのつながりが大事。何とかできないか」と考えたのが同サービスだ。
会話の内容は「回想法」に重点を置く。会話パートナー(話し相手)から、その人の人生に関わることを質問してもらうと、昔のことを思い出し脳に刺激を促すという。
施設に試験導入将来に期待の声
グループホームひだまりの里とよしな(安曇野市豊科高家)は6月、「ナベトモ」を試験的に導入。認知症が軽度と重度の入居者2人が利用している。施設を運営する創生活環境運営の代表取締役・伊東進さん(48)は「コロナ禍で社会との接点がなくなっている現在、社会の一員としての自分を体感してもらうツール」と話す。
実際に利用したのはまだ10回余りで、認知症の変化などのデータを積み重ねている段階だが、「介護の未来を変えてくれるかもしれない、という将来性を感じる」と伊東さん。
高齢化がさらに進み介護が必要な人は増えている。一方、介護の現場ではそれを担う人材不足が深刻。会話パートナーは、やってみようという意思さえあれば誰でもできる。「ナベトモ」がビジネスとして成長するかは「これから」。景さんらは「介護ケアの『皆国民化』を促進する一つの方法ではないか」と、ナベトモに高齢者ケア市場での可能性を見いだそうとしている。
【ナベトモ】 簡単に操作できる専用のタブレットを使い、高齢者が会話パートナーと話すシステム。施設入居者の場合、話しぶりなどについて5段階評価したレポートが施設に届き、家族がそれを見て「入居者の様子が分かる」仕組みだ。
会話は週1回25分が目安。登録料(タブレットの貸出料)3万円、利用料は月額8000円。会話パートナーの報酬は1回(30分)500円。
問い合わせはnabe(TEL080・9716・8326=平日午前9時~午後5時、メール:contact@nabetomo.com)
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