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Sunday, September 4, 2022

おにぎりにも“効率を重視”、健康志向のなかでコンビニに求められる役割とは? - 中日新聞

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健康志向の人にも人気だという「スーパー大麦入り 甘辛そぼろおむすび」(税込150円)

健康志向の人にも人気だという「スーパー大麦入り 甘辛そぼろおむすび」(税込150円)

 昨今、コンビニ各社では、一品で必要な栄養素がとれる商品や、低脂質・高タンパクな商品など、世間の“健康志向”に寄り添うメニューが随時開発されている。「腸活」「PFCバランス」「完全栄養食」などがキーワードとなり、かつては「健康に悪い」印象が強かったコンビニ食のイメージを払拭するような動きが活発化しているのだ。“お手軽・便利・近い”というコンビニだからこそできる、“効率のよい”栄養の摂取方法とは? コンビニの健康志向の現在地についてファミリーマートに話を聞いた。

■不健康イメージも今は昔…コロナ禍によって、コンビニでも“健康志向”の波が拡大

 都市部を中心に全国に拡大を続けているコンビニエンスストア。その食品の品揃えを見ていると、近年はプロテインバーをはじめとして、糖質対策やPFCバランスが考慮された商品が増えていることに気づく。商品裏面には成分表示が記載されているので、健康管理をする人にとっては好都合な側面もある。

 カロリー面やSDGs面で見れば、大豆ミートに関してはファミリーマートが2017年4月から、セブンイレブンは2019年から取り扱いを始めた。またセブンイレブンは2015年頃からもち麦を使用したおにぎりなどを販売。“腸活”トレンドも現在は一般に定着している。完全栄養食『ベースブレッド』をいち早く取り入れたのはファミリーマートだ。

 この健康志向の高まりについてファミリーマート担当者はこう解説する。「直近ではコロナ禍でリモートワークの方も増え、コロナ太りであるとか、外食が出来ないからコンビニ、ということで求める商品の健康志向につながっている感覚があります。弊社でターニングポイントとなったのは2016~2017年。ライザップさん監修の商品がヒットし、2017年にはコンビニでは先駆けとして大豆ミートの商品を販売するなどしており、徐々に健康志向の高まりは感じてきました」

 例えば過去には男性向きのボリューミーな商品が割合的に多かった。だが近年では共働き家庭の増加により、働く女性が増加。都市部のコンビニに来店する女性客は、よりトレンドがおさえられた健康志向の高い商品を求める傾向があり、女性客を取り込む品揃えを各社が考え、その流れがコンビニ業界全体にも拡大している。

「弊社ではまず食品添加物に関して全社を上げて削減に取り組んでおります。栄養の偏りやカロリーなどに関しても食品メーカー各社さんの協力を得て、トレンドとなる素材に早い段階から着目してきました。『ベースブレッド』は良い例です。現在2億食の売上を突破している“スーパー大麦”に着目したのも、他社さんに先行して行われたものでした」

 そしてここにコンビニならではの立場や役割が加わる。そのキーワードとなるのが「コンビニのインフラ化」だ。

■研究にコストがかかるからこそ、プラスオンされた値段に納得できる美味しさを

 コンビニは食品や飲料を買う場所だけでなくなって久しい。日用雑貨、公共料金支払い、宅配請負などその業務はさまざま。さらに都市部では近所のどこかにはコンビニがある状況であり、地方へも続々と進出している。また災害時には緊急の食料調達の場にも。まさに「インフラ化」。都市部でのトレンドをいち早く地方へも届けられる存在ともなっている。

 そんななか、コンビニが発する“健康志向”は、ほぼ時間差なく日本全国に到達(一部地域を除く)。前出のベースブレッドに関しては「SNSでの広告展開をしていることもありますが2倍近くの価格帯に関わらず非常に好調で、昨今は若い男性にも健康意識が高まっているという状況が見えてきます」と語る。

 2016年にスーパー大麦の素材を提供した帝人との協力関係も同社の健康志向の先駆けにプラスとなって表れた。「コンビニはお客様にとっても身近で、手軽にいろんなものを試せる場という面もあると思うんです。ですから健康食品でしたらスーパー大麦や大豆ミートなど、それをお客様が気軽に試せる。同時に“健康に良い上に美味しいんだ”という認知を高めてもらう。その為には“味”も重要です」

 健康志向の高い商品をどうコンビニにマッチさせるか。どうしても「健康志向=マズい」「我慢して食べる」というイメージは強い。それを感じさせないほどの“美味しさ”がなければ、ファミリーマートでやる意味がない。その分研究期間は長くなり、コストも上がっていく。「価格を上乗せする分、美味しさ、その他の付加価値をつけて納得していただく商品作りを心がけました。元々、ファミリーマートでは、やや高い価格の『SPAM(R)むすび』を販売し、1年で2,000万個突破の大ヒットを出した実績もあります。スーパー大麦のおむすびを開発する際も、通常より長く研究開発の期間がかかりました」

 ユーザーがスーパー大麦に期待する“プチプチ食感”を活かしつつ、白だしで米を炊くことでより味わい深くする研究や工夫を重ね、満足感を得られる具材探しにも苦労があったという。

「健康を意識される方が購入されますので、絶対にやらない例ですけど“ハムカツ”と合わせたってダメなんですよね(笑)。やはり“しらす”とか“梅”、そういった健康に良い具材で、先述もしましたがさらに“美味しいもの”でなければならない。どこまで挑戦できるか。この組み合わせには、最も心を砕いて商品開発しております」

「インフラ化」しているからこそ、健康志向の客にも“美味しいもの”で対応している。大げさかもしれないが、コンビニの棚を見れば、さまざまなニーズ、志向に合わせた“多様化”の最先端が見えてくる。

■「選択肢の幅を広げていきたい」コンビニの役割に原点回帰

 現在「スーパー大麦入り甘辛そぼろ」のおむすびが発売中だ。「中の具材には、鶏肉のそぼろとスーパー大麦を使用しました。スーパー大麦を使ったご飯をいかに美味しく食べていただくかで、“甘辛さ”を採用。プチプチの食感とご飯に合う味が楽しめる商品だと自負しています」。購入層は40~50代男性、20~50代の女性と幅広く出ている。今回はこれまで以上に味を追求し、さらなる挑戦をしている。元々、おむすびは購買層の中心が男性だが、女性からも好評価を得ている。老若男女それぞれのニーズにこたえることを目指す同社としての成功例と言えよう。

 おむすびと言えば手軽で便利、効率の権化のような面も。そこに“健康”を加えることで、これまでのコンビニ食の凝り固まったイメージを改革していくような、現代に合った施行を同社は行っている。「コンビニは、週のうち何回か通う生活のインフラです。でもただ通うだけではなくその中でも、新商品を発見したときのワクワクした気持ちがある。健康からガッツリ、様々な志向の方がいる中で、いかに全方向に対応ができるか。それぞれの分野の商品を育成していくことで、さらにコンビニは“多様化”されていく。私たちとしては、その選択肢の幅を広げていきたいと考えております」

 買いたいものが何でも揃っている“便利さ”があったコンビニ。「多様性」と言われる時代、様々なユーザーの志向に対応するなかで、コンビニはその便利さの幅を“さらに拡大”していく流れをとっている。これはコンビニ本来の役割に原点回帰する、時代に合わせた動きともいえるのではないか。

(取材・文/衣輪晋一)

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