日中はまだ暑いが、夜、ふと気づいた。実りの秋、食欲の秋。その到来を虫たちが奏で始めているじゃないか。自分のナリワイの一つは米作りの場を提供すること。八月、稲穂が顔を出し、少しずつ頭(こうべ)を垂れ始める。風が遠くから向かってくる。一面広がる稲穂に波を立て、こちらに近づいてきて、頬をかすめ去る。この揺らぎに目を奪われ、心が洗われ、深呼吸して思う。収穫は間もなくだ!
都心から二時間半もかけて米作りに通う約百組の方々の気づきの波も、日々届く。
お母さんが田んぼで草とりし、その間に子守をしてるお父さんが教えてくれた。「この里山に来るたび、不思議と喘息(ぜんそく)持ちの子ども二人の咳(せき)が止まるんです。でも街に戻った途端に咳が戻っちゃう」。子どもの体は正直だ。大人だって同じはず。都会にずっといると因果に気づきづらい。
カマで指先を切って血が滴り落ちている女性。足元のドクダミをちぎり、くしゅくしゅして出る汁を傷口に塗ってもらう。里山のビワの木から葉っぱを取ってきたら、ドクダミ液素で傷口の血は、もう止まってる。ビワの葉を巻いた。痛みはすぐ消え、彼女は田んぼに戻る。ところが作業で葉が剥がれると、痛みが戻る。再び巻くと、痛みがまた消えた。医療従事者の彼女自身が一番驚いていた。「草で楽(ラク)に」と書いて「薬」となる理由に納得。
わが家の民泊で食事をする人は便秘も下痢も解消し、トイレを出て驚き顔。みそ・しょうゆ・梅干し・酢などは自家製発酵、玄米も自家製、野菜も自家製か新鮮なもらい物だからに違いない。冷凍食品や加工食品を出さないしね。
米作りに参加している鍼灸(しんきゅう)師が言った。「何度治しても症状が戻ってしまう人とよくよく話すと、ほとんどは食が乱れてる。治療だけでは治せない。食を見直すと、不調も改善する」
空気・薬草・発酵・食。「ローカル」こその恵みだ。自分は街で暮らした四十八歳まで、年に一度は熱が出るし、たびたび風邪をひいてきた。ところが田舎に完全移住して約四年。一度も寝込んでない。のんきな昼寝は日々しているが(笑)。
<高坂勝(こうさか・まさる) 脱「経済成長」、環境、幸せの融合をローカルから実践。51歳>
※次回は9月24日
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