概要：中国で健康市場は、拡大の一途を辿っている。Z世代の健康志向の高まりのみならず、幅広い世代で健康に関するトピックに注目が集まってきた。このトレンドを受けて、大小様々な企業が鎬を削り、新しいビジネス施策を講じ競争力を高めている。そのような中、アリババのECプラットフォームTmall（天猫）において、健康関連商品の販売増加に成功し、突出した実績を出す企業が出始めている。
中国の若い消費者は、美味しく健康的なビタミン補助食品を好むようになっている（写真提供：リチュアル）
英語には、「1日1個のリンゴを食べれば医者はいらない」ということわざがありますが、現代の中国の若い消費者は、健康のために、果物ではなく、ビタミングミや最新のサプリメントを摂取しています。
今年の6月、アリババグループのECプラットフォームTmall（天猫）において、1995年以降に生まれたZ世代の消費者が、アンチエイジング商品の購入および検索数において、30代と40代の消費者を上回りました。
中国の若者たちの間では健康がトレンドであり、企業は若い消費者の多忙なライフスタイルに合わせた革新的な商品を打ち出すことで、健康需要増加という好機を捉えようと取り組んでいます。
ドイツの革新的なライフサイエンス企業バイエルのAPAC越境Eコマース担当バイスプレジデント兼中国EC事業責任者のCandice Wan氏は、「Z世代の消費者の健康意識への芽生えは、親世代よりも早く始まっています」と話します。
しかし、Ｚ世代は彼らの親世代とは違い、大さじ何杯かのタラ肝油や大きなマルチビタミンのカプセルなどの商品には興味を示しません。
「タブレット型のビタミン剤は薬を飲んでいるような感覚を与えるため、習慣化させるのが難しいのです」と、Wan氏は話します。
老舗のビタミン剤メーカーが、消費者の要望に応えるために大きく方向転換している（写真提供：バイエル）
若い消費者が、美味しくて便利で分かりやすい商品を求めるなか、バイエルの「ワンアデイ（One A Day）」ブランドは、10種類のサプリメントが入ったフルーツ味のグミサプリメントを開発し、このような若い消費者の要望に対応しています。
Wan氏によると、このグミサプリメントは、2019年の発売開始以来、中国で20万本以上売れており、健康志向が強いことで知られる米国市場さえも上回る販売実績を出しているとのことです。
もちろん、健康に関連した商品を購入しているのはZ世代だけではありません。Tmallで先月行われた天猫618ショッピングフェスティバル第1弾では、「アンチエイジング」の検索数が前年比500％増となりました。
国際的な情報サービスプロバイダーのイコールオーシャン・インテリジェンス（EqualOcean Intelligence）によると、中国では、2021年の健康関連商品の購入において、55歳以上の消費者が52％を占め、ミレニアル世代を含む34歳以下の消費者が34％を占めました。
必要な栄養素を自分でカスタマイズ
159年の歴史を持つバイエルからスタートアップ企業まで、中国の健康ブームに乗ろうとする様々な企業が中国市場に参入してきています。
この春、Tmallを通じて中国に進出した新進気鋭のD2C米国サプリメントブランド「リチュアル（Ritual）」は、Z世代とミレニアル世代に支持され、25歳以下の購買者が4分の1も占めています。
リチュアルの副社長兼事業開発ディレクターのJoy Chua-Schwartz氏は、「当社の特許取得済みのビーズ・イン・オイル技術により、油性成分と乾燥成分を1つのカプセルにまとめて入れることができます。例えば、消費者は1日たった2つのカプセルでオメガ3系列脂肪酸DHAやビタミンD3などの主要栄養素を摂取することができます」と語っています。
健康的なライフスタイルの一部として摂取するサプリメント
中国の健康サプリメント市場は、2021年に2700億元（約5.4兆円）を突破し、2022年には3000億元（約6兆円）近くに達する勢い（出典：TMOグループ）
リチュアルは世界各地から原料を調達し、米国内の研究所にて、最新の医学研究に基づき開発された特許出願中のレシピを使用して、最終製品を開発しています。
バイエルのWan氏は、「ブランドが激しい競争を勝ち抜くには、変化と革新を求めることが不可欠です」と述べています。
しかし、新しいものが必ずしも良いものとは限りません。
「現代のサプリメントは、中国伝統医学の数千年にわたる実践に根ざした伝統的な健康法と競合するものではなく、それを補完するものです。健康のためにしていることは、すべて並行して行うことができ、互いに補完し合うことができるのです」と、リチュアルのChua-Schwartz氏は述べています。
時代とともに変化する消費者需要
中国のサプリメント市場がこれほどにも多様化している理由は、中国の若い消費者の嗜好が多様化しているためです。
バイエルとリチュアルは、消費者がサプリメントの効能を重視し、商品の調査や評価に時間をかけるため、成分の由来や品質への注目がますます高まっていると考えます。
米国サプリメントブランドのリチュアルは、中国の若い女性消費者の間で支持を集めている（写真出典：リチュアル）
Wan氏は、自身が育った1980年代、多くの人々がやみくもに輸入品を買っていたことを思い出しながら、「中国のZ世代の消費者の自信と知識は、私たちの想像をはるかに超えています」と語ります。
今日、消費者のブランドへの期待は商品そのものにとどまりません。Z世代にとって、ブランドの持続可能性や環境に対する姿勢も購入の際の大きな判断材料になっています。リチュアルは、バージン・プラスチックではなく、リサイクル・プラスチックを使用したパッケージで、低炭素なライフスタイルを推進しています。また、小包の梱包には古新聞を使用し、環境保護に努めています。
「持続可能性に関する私たちの取り組みは、若い世代の消費者から大きな共感を呼び、実を結んでいるのです。リチュアルの最新サプリメントは中国で急速に普及し、天猫618ショッピングフェスティバル期間中の売上の約4分の1はリピーターによるものでした」とリチュアルのChua-Schwartz氏は述べています。
また、バイエルの「ワンアデイ」ブランドは、今年の天猫618ショッピングフェスティバルで60％の売上増を記録し、Z世代が顧客の16.78％を占めました。
バイエルは、今年の天猫ダブルイレブン・ショッピングフェスティバルに向けて売上を伸ばすために、より多くの注目と関心を集める新商品を展開する予定です。
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