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Tuesday, July 12, 2022

キヤノンEOS R7とEOS R5に給電できるモバイルバッテリーの条件とは? - デジカメ Watch

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最近発売されるカメラはUSBポートからの充電や給電に対応しているものが多く、旅行など長期の撮影でもバッテリー切れの心配が大きく減少した。一方でUSBによる給電には様々な規格があるため、“現場で使おうと思ったら使えなかった”というトラブルも耳にすることがある。

そこで今回は市販のモバイルバッテリーやUSB充電器を用いて、キヤノンEOS R7とEOS R5における給電・充電の対応状況を調査し、カメラ用モバイルバッテリーを選ぶ上での注意点についてまとめてみた。

USBから電力供給するときの基礎知識

USBを使用してカメラへ電力供給をするときに最低限、知っておくべき事を最初にまとめておこう。事前に確認しておきたいのはカメラの対応状況だ。EOSシリーズで最初にUSBによる充電に対応したのは2018年に発売されたEOS Rで、この時はカメラに装填されているバッテリー(LP-E6N/LP-E6NH)を電源オフ時に充電する機能のみがサポートされた。

起動中の給電もサポートされたのは2019年のPowerShot G7 X Mark III、PowerShot G5 X Mark IIからで、EOSシリーズは2020年発売のフルサイズミラーレスEOS R5/R6からとなる。今回、検証に用いた最新APS-CミラーレスカメラのEOS R7も、USBによる充電・給電のいずれにも対応している。

このようにカメラによって対応が異なる場合があるため、USBから電力供給したい場合はまず、使用中のカメラがバッテリーを充電のみに対応しているのか、起動中のUSB直接給電にも対応しているのかを確認しておこう。

次にUSBの給電規格を知っておくことも大事だ。この規格をすべて理解するのは大変なため、カメラに使用する時に覚えておきたいものだけを以下に簡単にまとめておく。一部は規格に沿った厳格な表現になっていない部分があるかも知れないが、以下の内容を知っておけばカメラへの利用で困ることはないはずだ。

PDとはパワーデリバリーのこと

最初に覚えるのは、USB給電には「USB PD(Power Delivery)」による給電と「それ以外(普通のUSB)」による給電の2種類があるということだ。USB PDはざっくり言えばUSB Type-Cを使って電力供給するための規格で、供給できる電圧は5V/9V/15V/20V/28V/36V/48Vと多くのパターンがある。最大電流は15Vまでは3A、20V以降は5Aと大電力を供給できる。

一方、それ以外のUSB(普通のUSB)が供給できる電圧は5Vのみである。よく見る横長端子のUSB Type-Aや、最近見ることの少なくなったMicro USBは、5Vの給電にしか対応していないと覚えておけばOKだ。

ただし、紛らわしいことにUSB Type-Cの場合は「USB PD」と「それ以外」が混在している。モバイルバッテリーにUSB Type-C端子があってもそれがUSB PDに対応しているとは限らないのだ。後で詳しく説明するが、EOSへ給電する場合はここが落とし穴になることがある。

充電&給電に対応した機器を徹底調査

EOS R7、EOS R5でUSBによる充電と給電の両方をしたい場合はUSB PDに対応した機器を使用する必要があることは分かったが、実はUSB PDに対応しているすべての機器で充電と給電ができるとは限らない。私が普段使用しているUSB PD対応バッテリーでも、給電できるものとできないものが混在している。

キヤノンからは給電に必要な電圧や電力値が公表されていないため、一般に入手できるいくつかのモバイルバッテリーや充電器を使って、EOS R5やEOS R7に充電・給電できる機器はどれなのかを調査してみた。

まずはモバイルバッテリーの結果が以下の表である。検証はすべてUSB Type-C端子を使用している。

メーカー 機種名 充電 給電 PD対応 最大出力 5V定格電流 9V定格電流 容量(mAh)
1 Belkin BPB011btBK × × 18W 3A N/A 10,000
2 Anker PowerCore Fusion 10000 × 20W 3A 2.22A 9,700
3 Anker PowerCore 10000 PD Redux 25W × 25W 3A 2.78A 10,000
4 Anker PowerCore 10000 PD Redux 25W
(量販店モデル)
× 25W 3A 2.78A 10,000
5 CIO SMARTCOBY Pro 30W 30W 3A 3A 10,000
6 Anker Anker PowerCore II
Elite 25600 60W
60W 3A 3A 25,600

その結果、充電に関してはEOS R7、EOS R5の両機ですべて問題なく行うことができた。USB PDに対応しているものはもちろん、非対応のBelkin製バッテリーでも充電は可能だった。本体に記載の5V定格電流はすべて3Aだ。

ただし、USB Type-A端子を用い、Type-A to Type-Cケーブルを用いた場合はいずれの機器も充電できなかった。今回用いた機器のUSB Type-A 5V定格電流はいずれも2.4Aだったため、充電に用いる機器は5V 3A(15W)の出力に対応している必要がありそうだ。

給電はPDに対応していてもできるものと、できないものが分かれているため注意が必要だ。今回の結果から推察する限りにおいては、給電をするには「9V 3A(27W)」の出力が必要だった。キヤノンが唯一対応バッテリーとして公表している(【ミラーレスカメラ】EOS R7/EOS R10でUSB充電やUSB給電が出来ますか? (canon.jp))Anker PowerCore III Elite 25600 60Wはもちろん、CIOのSMARTCOBY Pro 30Wも容量10,000mAhと小型ながら9V 3Aに対応しており給電が可能だった。

キヤノンが対応バッテリーとして公表しているAnker PowerCore III Elite 25600 60W
Amazonで購入可能なCIOのSMARTCOBY Pro 30W。小型ながら充電も給電も可能だった

モバイルバッテリーからの給電は、9V 3A・30W以上が目安

一方で9V 3Aに非対応の機種は給電をまったく受け付けてくれない。ネットや家電量販店でスマホ充電用として非常に人気の高いAnker PowerCore 10000 PD Redux 25W (9V 2.78A)のように、3Aにかなり近い機種であっても給電表示が出ることはなかった。カメラ側がモバイルバッテリーに対して9V 3Aを要求し、適合しないものは受け付けない仕様になっているものと思われる。

そのためEOS R7やEOS R5に使用するモバイルバッテリーを選ぶ場合は、USB PDに対応しているだけでなく、出力が30W以上の製品を目安に選ぶのが良さそうだ。できれば仕様表などで9V 3Aに対応していることを確認すれば安心だろう。なお、端子が複数ある場合は同時利用で各端子の出力が低下して給電できなくなる場合もあるため、複数の機器へ同時に給電したい場合はその時の定格出力もチェックしておこう。

充電器からも9V 3A・30W以上で給電できた

GaN(窒化ガリウム)の採用で小型化し、人気となっている充電器については以下の結果となった。今回テストしたものはすべてUSB PDに対応していたが、モバイルバッテリーと同じく20Wで9V 2.22Aまでの出力ができないNano Pro 20Wは充電こそできるが、給電は不可能だった。

そのほかの製品、つまり出力30W以上の機種は9V 3Aをすべてクリアしており、充電、給電ともに可能だった。ちなみにキヤノン純正のUSB電源アダプターPD-E1の定格出力も『5V 3A、9V 3A(接続先の機器により可変)』となっている。さきほどのモバイルバッテリーと同様、キヤノンの公式では65Wのみが動作要件として記載されているが、こちらは30Wや45Wでも給電が可能であったことを報告しておく。

ただし、今回はあくまでも筆者と編集部がテストをした限りにおいてとはという条件のため、ファームウェアによる機能強化などで未対応となる可能性がゼロではない。その不安が残るという人は65Wタイプを購入しておくといいだろう。

メーカー 機種名 充電 給電 PD対応 5V定格電流 9V定格電流
1 Anker Nano Pro 20W × × 3A 2.22A
2 Anker Nano II 30W 3A 3A
3 Anker Nano II 45W 3A 3A
4 Anker Nano II 65W 3A 3A

連写時や4K動画撮影時でも給電は可能か?

最後に実際の撮影を想定して、カメラへ直接給電しているときに負荷の大きな動作をさせても大丈夫なのかをチェックした。

具体的にはEOS R7で高速連写と7Kオーバーサンプリングによる4K Fineモードでの動画撮影を行ったが、まったく問題なく動作させることができた。電力チェッカーで給電中の消費電力を確認したが、アイドリング中で9V 0.4A程度、負荷の重い作業を行っている時でも0.6~1.0Aで瞬間的に1.4~1.6Aを記録するような挙動だった。

余談だが、電子シャッターによる30コマ/秒よりもメカシャッターによる15コマ/秒の連写の方が消費電力は高かった。おそらくシャッターのメカニカル駆動に大きな電力を使用しているのだろう。カメラが要求する9V 3Aに対して実際に使用するのはせいぜい9V 1.5A程度とかなり余裕があるため、給電に対応してさえいればバッテリー側出力が30Wでも60Wでも問題なく使用できた。

また、給電中にモバイルバッテリーの電池残量がなくなってしまった場合の挙動もチェックしたが、全く問題なくカメラは動作し続けたので安心して欲しい。EOSでUSB給電を利用する場合はバッテリーをカメラにセットした状態でないと使用できず、モバイルバッテリーからの給電が止まった場合は即座に内蔵のバッテリーに切り換わる。動画撮影中に強制的にUSBケーブルを抜いても記録が止まらず動くことを確認できた。

USB Type-Cを利用する場合は使用するケーブルの種類にも気をつけなければいけないこともあるが、給電だけを考えるなら両端がUSB Type-CとなっているものであればPD対応と謳っていなくても20V 3A(60W)までは流せる。そのためカメラへの充電、給電だけを考えるのであればどのケーブルを用いても問題はなさそうだ。

まとめ

あくまで今回の調査はEOS R7とEOS R5を使った独自調査であり、すべてのEOSに対して有効であることは保証できないが、おそらく現行のEOS RシリーズでバッテリーにLP-E6NH(定格電圧7.2V)を使用し、USB充電・給電に対応している機種に関しては同じ法則が当てはまると思われる。

ただし、バッテリーにLP-E19(定格電圧10.8V)を使用するEOS R3はキヤノン純正のUSB電源アダプターPD-E1でも給電できない(充電は可能)と公表されているため、9Vより高い電圧が必要になると思われるので、この点には注意をしてほしい。

かつて、旅行や長時間の撮影では現場に大量のバッテリーと充電器を持っていったり、DCカプラーを使ってコンセントから電源を供給していたものだが、USB充電・給電に対応してくれたことで、撮影の快適性が大きく向上したのは間違いない。

USB規格の関係で少々ややこしい部分はあるものの、対応するモバイルバッテリーを1つ持っておけば、カメラだけでなくスマホやタブレットにも使えるし、機種によってはノートPC等にも利用できる。まだ使ったことがない人は一度試してみてほしい。

制作協力:キヤノンマーケティングジャパン株式会社

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