ASUSの「ROG Flow X13 GV301RE」は、AMDの新世代APU「Ryzen 9 6900HS」を搭載した13.4型モバイルゲーミングノートで、専用の外付けGPUモジュール「ROG XG Mobile」が利用できるROG Flowシリーズの新作モデルだ。
今回、ROG Flow X13 GV301REと、Radeon RX 6850M XTを搭載した外付けGPUモジュール「ROG XG Mobile GC32L」をテストする機会が得られた。携帯性とゲーミング性能の両立を専用外付けGPUモジュールというユニークな方法で実現するROG Flow X13最新作の実力を、ベンチマークテストと実際のゲームで確かめてみた。
なお、今回借用したのは発売前の製品であり、性能や仕様などは実際に発売される製品と異なる可能性がある点に留意してもらいたい。
ベンチマークテストでROG Flow X13 GV301REとROG XG Mobile GC32Lの性能をチェック
ここからは、ベンチマークテストを使ってROG Flow X13 GV301REとROG XG Mobile GC32Lの性能をチェックする。実行したベンチマークテストは以下の通り。
- Cinebench R23
- 3DMark
- Blender Benchmark
- PCMark 10
- ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク
ノートPC本体であるROG Flow X13 GV301REでは、ユーティリティの「Armoury Crate」でGPU動作モードの変更が可能だったので、今回はROG Flow X13 GV301RE単体時の性能として、dGPUであるGeForce RTX 3050 Ti Laptop GPUを用いた場合と、APU内蔵GPU(iGPU)である「Radeon 680M」を使用した場合のスコアを計測する。
また、ROG XG Mobile GC32L接続時についても、ROG Flow X13 GV301REの内蔵ディスプレイに出力した場合と、ROG XG Mobile GC32Lの出力端子から直接外部ディスプレイに出力した場合の2パターンでスコアを計測した。テスト時の室温は約24℃。
Cinebench R23や3DMark CPU Profileで示されたRyzen 9 6900HSのCPU性能は、シングル/マルチともにモバイルゲーミングノートとしては上々の結果で、放熱の難しい薄型軽量ノートPCでこれだけの性能が出せるのは、Ryzen 9 6900HSの電力効率が優れているからだろう。
Blender Benchmarkでは、CPUと各GPUでレンダリングの実行を試みたが、Ryzen 9 6900HSの内蔵GPUであるRadeon 680Mに関してはテストを実行できなかった。結果としてはGeForce RTX 3050 Ti Laptop GPUが外付けGPUモジュールのRadeon RX 6850M XTを上回っており、GeForce RTX 30シリーズのクリエイティブシーンへの適正の高さが表れたかたちとなった。
ファイナルファンタジーXIVベンチマークや3DMarkなど、3D系ベンチマークの多くで、外付けGPUモジュールであるROG XG Mobile接続時が圧倒的に高いスコアを記録しているものの、3DMark「Wild Life」では内蔵ディスプレイ出力時のスコアがまったく奮っていない。このような結果となった理由は不明だが、外部ディスプレイに出力時に高いスコアが記録できていることから、内蔵ディスプレイ出力時になんらかの不具合が生じたものと思われる。
iGPUであるRadeon 680Mは、GeForce RTX 3050 Ti Laptop GPUより3~4割ほど低い性能となっている。なお、リアルタイムレイトレーシング(DXR)テストの3DMark「Port Royal」では、逆にGeForce RTX 3050 Ti Laptop GPUを大きく上回っているが、これは専用VRAMを4GBしか持たないGeForce RTX 3050 Ti Laptop GPUがメモリ不足で性能を発揮できなかった結果であり、Radeon 680Mのレイトレーシング性能が特別優れているという訳ではない。
Cinebench R23実行中のモニタリングデータをチェック
モニタリングソフトのHWiNFO64 Proを使って、Cinebench R23「Multi Core」実行中のモニタリングデータを取得。それをもとにCPU温度や、モニタリングデータの推移をグラフを作成した。
なお、ここではGeForce RTX 3050 Ti Laptop GPU利用時を「ROG Flow X13(単体)」、ROG XG Mobileで内蔵ディスプレイ出力時を「ROG Flow X13+ROG XG Mobile」としている。
CPU温度については、「ROG Flow X13(単体)」が平均82.7℃で最大93℃、「ROG Flow X13+ROG XG Mobile」は平均87.9℃で最大95℃。ややROG XG Mobile接続時の方が高い数値となっているが、推移グラフで確認してみると、これはCPU消費電力が35Wを超えて動作している時間が長かったことによるもののようで、最終的にはどちらもCPUクロックが3.4GHz前後まで低下している。
ファイナルファンタジーXIVベンチマーク実行中のモニタリングデータをチェック
Cinebench R23と同じように、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」でもHWiNFO64 Proを使ってモニタリングデータを取得。温度データをまとめたグラフと、推移グラフを作成した。
ノートPCの筐体内での発熱が減るためか、CPU温度についてはROG XG Mobile接続時の方が多少低い数値となっている。いずれもCPU/GPUともに平均温度は80℃を下回っており、温度リミットによるスロットリングが生じるような状況には至っていないようだ。
ただ、推移グラフを見るとやや不可解な動作が見えてくる。ROG Flow X13単体時はテスト開始からしばらくの間ブースト動作によって高クロックで動作し、終盤にはそれが緩められてCPUクロックや消費電力が低下しているという自然な動作に見えるのだが、ROG XG Mobile接続時は逆に後半までGPUがフルパワーで動作していない。
冒頭で紹介した通り、ROG Flow X13 GV301REとROG XG Mobile GC32Lは発売前の製品であり、これはブースト動作のチューニング不足によるものなのかもしれない。ROG XG Mobile接続時のスコアは、GeForce RTX 3050 Ti Laptop GPUの1.4~1.5倍程度だったが、テストの全域でRadeon RX 6850M XTがフルパワーを発揮できれば、より大きな差が付くことになるだろう。
実際のゲームでの性能をチェック
ここからは、実際のゲームでの性能をチェックしていく。
テストしたのは、「フォートナイト」、「レインボーシックス シージ」、「Apex Legends」、「Forza Horizon 5」の4タイトル。
フォートナイト
フォートナイトでは、描画品質プリセットを「中」と「最高」に設定したさいの平均フレームレートを計測した。テスト時の3D解像度は100%で、グラフィックスAPIはDirectX 11。
描画設定「中」では、いずれのGPUでも60fpsを上回る平均フレームレートを記録した。ROG XG Mobileで外部ディスプレイに接続時したさいは平均161.7fpsに達しており、なかなかの高フレームレートでフォートナイトを楽しめる。
描画設定を「最高」にした場合、ROG XG Mobileを接続することで90fps前後まで平均フレームレートを高めることは可能だが、ROG Flow X13単体ではどちらのGPUでも60fpsを下回っている。
レインボーシックス シージ
レインボーシックス シージでは、描画品質プリセットを「中」と「最高」をベースに、レンダリングのスケーリングを「100」に設定した条件で、ゲーム内ベンチマークモードを実行した。グラフィックスAPIはVulkan。
描画負荷の軽いタイトルだけあって、描画設定を「最高」にした場合でも、ROG Flow X13本体に内蔵されたどちらのGPUでも60fps以上の平均フレームレートを達成した。
一方、ROG XG Mobile接続時は、外部ディスプレイ接続の方が明らかに高いフレームレートを記録した。ROG Flow X13 GV301REの内蔵ディスプレイは120Hz駆動なので200fpsも出ていれば十分ではあるが、レインボーシックス シージをプレイするのであれば、より高速なゲーミングモニターとROG XG Mobileを接続してみてもよさそうだ。
Apex Legends
Apex Legendsでは、中画質程度の描画設定と、テクスチャストリーミングの割り当てを「高」にした以外は最高画質にした設定で、フレームレートの計測を行なった。テスト時の上限フレームレートは300fps。
描画設定「中」では、GeForce RTX 3050 Ti Laptop GPUが平均107.2fps、Radeon 680Mが平均65.1fpsを記録する一方、ROG XG Mobile搭載のRadeon RX 6850M XTは195~199fpsという高フレームレートを実現した。
描画設定「高」でも、GeForce RTX 3050 Ti Laptop GPUは平均81.0fpsで60fpsを上回ったが、Radeon 680Mは45.3fpsとなっている。ROG XG Mobile接続時の平均フレームレートは144fpsを超えており、ROG Flow X13 GV301REの内蔵ディスプレイの表示能力を十分に引き出せる性能を発揮した。
サイバーパンク2077
Forza Horizon 5では、描画設定プリセット「中」~「エクストリーム」で、ゲーム内ベンチマークモードを実行した。
GeForce RTX 3050 Ti Laptop GPUは、描画設定「高」以下では60fps以上の平均フレームレートを達成しているが、「最高」以上ではメモリ容量の不足で性能が大きく低下している。それでも、ROG Flow X13 GV301RE単体でもそこそこの画質でForza Horizon 5をプレイできるというのは好印象だ。
ROG XG Mobile接続時は、いずれの描画設定でも60fpsを上回る平均フレームレートを達成しており、高画質設定でForza Horizon 5をプレイすることができる。「エクストリーム」設定ではテスト時のVRAM使用量が8GBを超えることもあるが、12GBのVRAMを備えたRadeon RX 6850M XTなら安心だ。
外付けGPUモジュールで携帯性と性能を両立するユニークなゲーミングノート
Ryzen 9 6900HSとGeForce RTX 3050 Ti Laptop GPUを搭載したモバイルゲーミングノートであるROG Flow X13 GV301REは、単体でも多くのゲームをそれなりの画質設定で楽しめるエントリークラス相当の実力を備えている。
また、APUに内蔵されているRadeon 680Mは、iGPUとしてはなかなか優秀な性能を備えており、GeForce RTX 3050 Ti Laptop GPUを無効にしても軽量なゲームであれば楽しめるだろう。
Radeon RX 6850M XTを搭載するROG XG Mobile GC32Lは、エントリークラス相当の実力をミドルレンジ以上にまで引き上げることができる外付けGPUモジュールだ。利用には電源の確保が必要だが、カバンに入れて宿泊先などに持っていけば、本格的なゲーミング環境を構築できる。
モバイルノートとゲーミングPCを使い分けられるROG Flow X13とROG XG Mobileは、携帯性と性能を妥協したくないユーザーにユニークな運用方法を提供する製品だ。外出や出張の機会が多いゲーマーやクリエイターがPCの新調を考えているなら、選択肢の1つとして検討してみてはいかがだろうか。
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