山形県庄内地方南部に位置する鶴岡市。人口流出や産業衰退などの課題を抱えていた同市のまちづくりが、「鶴岡モデル」として注目を集めるきっかけとなったのが、2001年、慶応義塾大学先端生命科学研究所の誘致によってスタートした鶴岡サイエンスパークの取り組みだ。以来、数多くのベンチャーが生み出された他、健康分野や食分野においても、未来志向の「まちづくりプロジェクト」が多数生まれている。(江田 憲治=Beyond Health)
*以降の内容は、2019年9月12日に掲載した記事の再録です。肩書・社名、事実関係などは原則、掲載時のままとしています。
慶應義塾大学先端生命科学研究所(IAB)には、山形県と鶴岡市から毎年3億5000万円ずつ、合計7億円の資金が投じられている。その金額の大きさもあり、発足当初は、必ずしも市民からの理解が得られていたわけではなかったという。流れが変わったのはヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ(HMT)の上場、そして「人工のクモ糸」で知られるSpiberの新商品発表など、分かりやすい成果が出始めてからだ(関連記事)。そして今後の成果として注目されるのが「鶴岡みらい健康調査」。市民1万人の健康データを蓄積し、IABが得意とするメタボローム解析を通じて、生活習慣病の予防法の構築に取り組んでいる。
山形県の沿岸部、庄内地方に位置する人口約12万7000人の鶴岡は、典型的な地方都市だ。東京・羽田から飛行機に乗れば1時間足らずで訪れることができるが、鉄道では乗り継ぎもあって4時間かかるなど、必ずしも立地が良いとは言えない。多くの地方都市と同様、人口減少と高齢化という課題に直面する。
そんな鶴岡が取り組んでいるのが、慶應義塾大学先端生命科学研究所(IAB)の基本姿勢にも似た「ほかには真似できない」特徴ある街づくりである。「20年ほど前、IAB設立当時の市長が、知的産業の集積を街づくりの柱に据えた」(鶴岡市 企画部 次長(兼)政策企画課長の佐藤豊氏)決断が、着実に成果を上げ始めている。
市民の協力を得て、生活習慣病の予防法発見へ
では、IABの誘致は鶴岡にどのような恩恵をもたらしたのか。IABと地元自治体の重要な連携活動の1つが健康領域である。IAB内に「からだ館」と呼ぶ、市民が誰でも利用できるがん情報ステーションを設けたり、疾患予防を知り考える機会となるようなイベントを開催したりしている。
そして今後の成果が注目されるのが、「鶴岡みらい健康調査」と呼ぶ、市民の協力を得て進める健康データの蓄積と分析である。これは2012年4月に開始したプロジェクトであり、市民1万人を対象に、25年以上という長期にわたって健康状態を追跡調査する。
この調査で蓄積されたデータをIABがメタボローム解析することにより、生活習慣病のメカニズムを明らかにし、効果的な予防法を築くことを目的とする。将来、ある人が病気になったときに、過去にさかのぼって、問診やアンケートで得た生活習慣と、からだの中の変化(データ)を照らし合わせて原因を特定し、早期の発見手段や予防方法を見つけようというわけだ。
ユニークな取り組みだが、その成果が顕在化するのは当分先のことになる。「参加して協力してもらっている人へのメリットはない。すべて次世代の市民のためだ、と言っている」(鶴岡市 企画部 政策企画課 主査の鈴木真氏)。
からの記事と詳細 ( [第3回] 市民1万人巻き込む健康プロジェクトも、「他に真似できない」街づくりを - Nikkei Business Publications )
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