たばこが止めにくいのは、たばこの煙に含まれるニコチンが脳に作用し、依存状態を作り出すためである。ニコチン依存症は、体内のニコチン濃度が低下すると不快感を覚え、ニコチンを補うためにたばこを吸い続ける病気である。ニコチン依存による継続的喫煙は、がん、心疾患、脳血管疾患、慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)などの非伝染性疾患(NCD)の原因となっている。
しかしニコチン依存から離脱することは容易ではないため、禁煙を支援する医療が「禁煙外来」である。禁煙外来は保険診療の対象となっており、健康保険を使うと2万円程度の患者負担でニコチン依存症治療を受けることができる。末尾の表に示す基準を満たす医療機関は、標榜(ひょうぼう)する診療科に関係なく禁煙外来を開設できる。日本禁煙学会ホームページには令和3(2021)年12月現在、禁煙外来を開設した全国1万7396医療機関の情報が掲載されており、群馬県内は290箇所が載っている。
今回は平成29(2017)年11月、中医協に提出された「ニコチン依存症管理料による禁煙治療の効果等に関する調査報告書」を参考に、禁煙外来の実績などを紹介したい。
28年度1年間の禁煙治療患者数は1施設平均12・8人であった。平均患者数と施設数を掛け算すると、同年度には22万人余りが禁煙治療を受けた計算になる。全国の喫煙者総数は2千万人程度と推定されるので、喫煙者の1・1%(90人に1人)程度が禁煙外来を受診したと思われる。禁煙治療を受けた男性患者の41・6%が高血圧、脂質異常、呼吸器疾患、糖尿病などの、また女性患者の32・0%は高血圧、精神疾患、脂質異常、呼吸器疾患などの合併症の治療中であった。禁煙は、こうした合併症治療の助けにもなることは言うまでもない。
禁煙治療の標準プログラムによると、禁煙外来では3カ月間に5回の診察・指導をすることになっている。しかし5回受診の途中で脱落する患者もいることから、5回完了した患者の割合は34・6%、平均受診回数は3・3回である。5回完了した患者の禁煙成功率は平均89・1%であった。それから9カ月後の禁煙継続率は47・2%となり、禁煙成功者の約半数が喫煙を再開したと思われる。グラフに示すように、治療回数が増えるほど9カ月後の禁煙成功率は高い。途中脱落防止のため初回に残り4回の予約を取る、前日に電話で受診を働きかけるなどの工夫も行われていた。
その後の診療報酬制度の改定により、現在では初回受診時に5回分の治療費を一括して支払うと割安になる制度ができ、初回からのオンライン診療も利用可能になった。スマホアプリで患者と禁煙外来のコミュニケーションを持続し途中脱落を防ぐデジタル療法も保険診療に加わった。今や禁煙治療は予防医療の最もホットな領域である。
禁煙すれば多くのNCDリスクは確実に低下する。加えて味覚・嗅覚も回復し、食事もおいしくなる。喫煙者の皆さん、今年は禁煙外来でニコチン依存からの離脱にトライしませんか。(高崎健康福祉大教授 東福寺幾夫)
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■禁煙外来の施設基準概要
・禁煙治療を行っていることを見やすい場所に掲示すること
・禁煙治療経験を有する医師が1名以上勤務していること
・禁煙治療に係る専任の看護師または准看護師を1名以上配置していること
・呼気一酸化炭素濃度測定器を備えていること
・敷地内(建物に入居している場合は保有または借用部分)が禁煙であること
・禁煙した患者の割合等を地方厚生局等に報告していること
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