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Wednesday, November 17, 2021

健康可視化の変化から見る2040年の「健康価値」 - 新公民連携最前線

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 2008年、日本の人口は1億2808万人をピークに減少に転じた。2021年5月には1億2533万人となり、約13年間で275万人減少した*1。2040年には約1億1091万人まで減少すると予測されている*2。人口構成の変化を、高齢者1人を何人の生産人口で支えるかという数字*3で見ると、現在の2人から2040年には1.5人へと減少する。今後日本がGDPを伸ばすためには、新たな産業を創出し生産性を高めて一人あたりGDPを上げることと、実質的な生産人口、つまり健康に働ける人口を増やしていくことの両輪で日本経済を成長軌道に乗せるしかない。

 「健康に働ける人口を増やす」という観点では、65歳以上の高齢者の継続的雇用や働き盛り層への健康増進などが政策的に打ち出されている。その起点は、2000年の「健康日本21」であろう(図1)。その後、2008年の「特定健診・特定保健指導」で、保険者による年1回の定期健康診断とその結果に基づいた保健指導が始まった。2015年には、データヘルス計画*4策定の義務化により、レセプトや健診結果の情報等のデータ分析に基づくPDCAサイクルの確立が求められ、効率的・効果的な保健事業の実施が推進されている。

 健康受診率や重症化予防の生活指導の実施率などのKPI達成により、保険料率が軽減されるインセンティブ制度も導入された。“健幸”増進として健康マイレージプログラムを導入する自治体も増えている。健康であり続けることで個人にとって経済的プラスになるような取り組みが、2015年頃から広がりを見せている。

健康増進・介護予防事業領域の政策変遷(出所:厚生労働省各種政策情報を元に野村総合研究所作成)

健康増進・介護予防事業領域の政策変遷(出所:厚生労働省各種政策情報を元に野村総合研究所作成)

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 企業にとっての従業員等の健康管理意識の醸成は、2014年から経済産業省が開始した「健康経営銘柄」*5の選定制度が大きなきっかけとなった。もともと、定期健康診断は労働安全衛生法によって雇い主である企業に義務付けられており、企業にとってはコスト負担の側面が強かった。しかし、上場企業に対する健康経営銘柄の導入により、健康管理への投資がひとつのブランディング効果を創出することになった。実際に、医療費削減効果だけでなくリクルーティングなどにもプラスの効果を感じる企業が多いという報告書*6もある。

 他にも、健康経営銘柄に選定されている企業では従業員の各種健診受診率が高まり、利益率が向上する傾向がみられる*7など事業へのメリットも報告されている。このような効果から、中小企業に対しても2016年から「健康経営優良法人認定制度」を創設し、健康経営に取り組む優良な法人を可視化することで、求人や融資などの側面で社会的に評価される環境を整備してきた。

 これらのように、これまでの約10年で個人と法人の双方にインセンティブを与える取り組みが広がりを見せ、特定健診実施率も開始初期は30%未満であったところから、2019年度(最新)で55.6%*8と着実に向上してきた。しかし、国の掲げる70%以上という目標数値には遠く及ばず、伸びも鈍化している傾向がみられる。国家戦略として健康であり続けることが日本経済を支える資産と位置づけている以上、これからの10年、20年には更なる新しい施策やソリューションが導入されていくものと考える。

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