近年では多くの場面で糖が悪者扱いされていますが、しばらく前は油が完全に悪役を担わされていました。油脂の摂取が肥満の原因であると考えられていたことと、心血管病の危険因子であるという考えによるものかと思います。 健診で脂質異常を指摘されたという50代後半の女性が受診しました。それほど偏った食事をしているという自覚はなく、釈然としないということです。脂質の摂取状況を確認したところ、肉類や乳製品の脂質は注意しているものの、お菓子や総菜の揚げ物を頻繁に食べていることがわかりました。 健康的な食事が心血管病やがんの発症を抑え、寿命を延ばすことは確かです。通常私たちは摂取カロリーの3割前後を脂質から賄っており、その質の違いが健康に及ぼす影響は少なくありません。油脂の質の違いを決めるのは含まれる脂肪酸の違いによります。脂肪酸は構造の違いから飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に大別されます。 飽和脂肪酸は肉類や乳製品、ココナツオイルやパーム油に多く含まれています。飽和脂肪酸を多量に摂取していると、人によってはLDLコレステロールが上昇することがあります。しかし今のところ飽和脂肪酸を多く摂(と)ることで心血管病死が増えることはないと考えられています。ただ飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸に置き換えると、心血管病などによる死亡が減ることが示されています。 不飽和脂肪酸はオリーブオイルやエゴマ油、アマニ油などの油や、魚介類やナッツ類、大豆などの食材に多く含まれます。しかしながら炎症やがんに関係する部分でまだわかっていないところもあり、むやみやたらに摂取するのではなく、肉の脂や乳脂肪を避ける代わりにこれらを摂取するとよいのでしょう。 トランス脂肪酸の摂取は極力控えるべきだと考えられています。肉や乳製品にも多少含まれていますが、問題となるのは液体の植物油を工業的に固化させるときなどに発生するものです。トランス脂肪酸の摂取はLDLコレステロールの上昇や心血管病死、がんの発症などと関係していることが示されています。 女性患者さんには、食べるものは数字で見えないところでも体に影響していることをお話ししました。これからは注意してみるとのことでしたが、「でも好きなものはなかなかやめられないのよね」と笑顔でつぶやいていました。(しもじま内科クリニック院長 下島和弥)
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