Q. 健康を保つにはどうすればよいのか? A. トレーニングが必要です 「Gのない生活とは重力に対する抵抗運動がないという意味ですので、無重力空間で過ごしていると自然と筋力が低下します。そのためにトレーニングが必要になります」(竹内) 「心臓や肺の活動は、初期反応として過剰になりますが、その後、環境に順応することで地球上よりも活動量は低下すると考えられます。心肺機能の衰えを防ぐために、有酸素運動は必須です」(和田) Q. どんなトレーニングをするのか? A. ベンチプレスは効果なし! 「器具側を固定して負荷をつくるか、座るという行為ができないため、足先を固定して踏ん張る形をつくる必要があります。そのために両サイドにバーを設け、腕で持つなどで負荷をかける必要があります」(竹内) Q. 病気になったらどうするのか? A. 新しい学問領域が必要 「現状、無重力空間での外科手術は困難です。将来的にはAIやロボットを使った遠隔手術が開発されていくと考えられていますが、通信の遅延問題など解決すべき課題がたくさんあります。医療器具や手術のための設備も、宇宙空間に合わせた独自のものが開発されていくのではないでしょうか。宇宙環境が健康にどのような影響があるかを研究し、そのメカニズムをつきとめ、対策を生みだす学問が必要になります」(竹内) 「ISSには、医療訓練を受けたクルーもいますが、基本的には、宇宙で病気になってはいけません。肉体的にも精神的にも、厳しい審査を通過した健康なクルーのみが宇宙へ行くことを許されています。宇宙空間における身体の変化のメカニズムと対策を研究する『宇宙医学』という分野もあり、今後どんどん研究は進んでいくはずです。これから先、『宇宙ドクター』と呼ばれる職業が生まれてくるかもしれません。ちなみに、地球上から持ちこまない限り、宇宙空間にインフルエンザ菌やコロナ菌は存在しないでしょう」(和田) Q. 放射線の影響は? A. 1年間で浴びる放射線を半日で浴びる 「宇宙空間では、太陽などから飛来する宇宙線という放射線にさらされることになります。これは、宇宙服や、宇宙船のシールドでは防ぎ切れません。地上で1年間に浴びる量を、宇宙空間では半日で浴びてしまうので、健康への影響はもちろんあると思います」(竹内) Q. 無重力ではどうやって寝る? A. 身体を固定して睡眠、枕の概念はありません 「無重力には上下がありません。横たわるという概念がないため、睡眠時には身体を固定させて眠ります。枕を使うという概念もなければ、肩こりや腰痛の概念もないはず。もちろん脳のメンテナンスは必要になってきますから、夢は見ます」(竹内) 一般社団法人 宇宙カルチャー推進協会 理事 和田直樹 1961年東京都生まれ。宇宙教育指導者として、20年ほど前から全国の各教育現場・科学館などを回り、子供から大人まで幅広い世代の人たちに宇宙の面白さ・楽しさ・不思議をわかりやすく伝えている。SNSでも情報発信中。 サイエンスライター 竹内 薫 1960年東京都生まれ。東京大学教養学部、同理学部を卒業後、マギル大学大学院にて博士課程修了。理学博士(Ph.D.)。大学院修了後、サイエンス作家として活動し150冊あまりの著作物を発刊。物理、数学、脳、宇宙、AIなど幅広い科学ジャンルで発信を続ける。 Edit=西原幸平(EATer) TEXT=山田 洋
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