
「お若いですね」と言われて悪い気はしないだろうが、「年甲斐もなく若作りして」と非難されてしまうこともある。若く見てもらいたくて自分の年齢をごまかす人もいるが、それは健康に長生きするという観点からみると、必ずしも悪いこととは言えない。諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が、見た目や気持ちが若々しいことと長生きの関係について考察する。
* * * 若さについてのおもしろい論文がある。南デンマーク大学が、70歳以上の一卵性を含む双子1826人を8年間追跡調査したものだ。 双子はほとんど同じ遺伝子をもっている。同じように老いていっても不思議ではないが、なぜか違いが生じる。その違いは何を意味するのかを調べたのだ。 研究ではまず、被験者の顔写真を撮り、いろんな年齢層の人にその写真を見せて、年齢を推定してもらった。そして、それぞれの身体能力や認知機能、老化のバイオマーカーと言われる白血球のテロメアの測定を行った。調査終了時点で亡くなっている人もいたので、寿命の長さも調べた。 その結果わかったことは、実際の年齢より見た目が若い人のほうが、健康で長寿だということ。若く見える人のほうが、身体能力も認知機能も高く、寿命も長かったのだ。
「自分は若い」と思うと本当に若くなる?
見た目の若さ、つまり客観的年齢に対して、主観的年齢と若さの関係を調べた研究もある。 ドイツ老年医学センターは、40歳以上の中高年5000人以上を対象に、「あなたは自分が何歳だと感じていますか?」と質問し、「機能的健康レベル」の変化を3年間追跡調査した。「機能的健康レベル」とは、日常生活動作をスムーズに行うことができるかどうかをいう。 すると、実年齢より若く答えた人ほど、機能的健康レベルの低下がゆっくりであるという結果がみえてきた。年齢のサバを読んだり、服装やふるまいを若々しくすることも、健康にとって意味があるということだろう。
なぜなのだろうか。機能的健康レベルは、ストレスが高いことや加齢によって低下することがわかっている。しかし、「自分は若い」と思うことで、ストレスによる健康への影響を弱める「緩衝効果」があるのではないかと、論文の執筆者は推測している。 また、「自分は若い」と思うことで、若さを保つために生活習慣を改善したり、自分自身をよくケアするようになる。だから、いっそう若々しさを自覚するようになるという、いいサイクルも生まれる。 よく「病は気から」と言うが、老いも「気」が大事ということが言えそうだ。 【プロフィール】 鎌田實(かまた・みのる)/1948年東京都生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後に長野県の諏訪中央病院に赴任。36年間、医師として地域医療に携わり、現在は諏訪中央病院名誉院長を務める。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。著書に『人間の値打ち』『忖度バカ』など多数。 ※週刊ポスト2021年10月1日号
からの記事と詳細 ( 年齢サバヨミや若作りファッション 健康と長生きにちゃんと意味がある(NEWSポストセブン) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース )
https://ift.tt/3kEq9Vx
No comments:
Post a Comment