東京オリンピックで、メンタルヘルスの問題を理由に体操女子団体決勝を途中棄権したアメリカのシモーン・バイルス(24)に、「何よりも心の健康を優先する」という決断を称賛する声が集まっている。
米オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)のトップや多くの体操選手、その他のスポーツ関係者などがバイルスの決断を称賛した。
こうしたバイルスの決断に対し、USOPCのサラ・ハーシュランド最高経営責任者(CEO)は「本当に誇らしい」と述べた。
「心の健康を優先するというあなたの決断を、私たちは称賛する。これからの道のりを歩んでいくあなたに、チームUSAコミュニティーからの全面的なサポートとリソースを提供する」
米体操女子団体は2011年、2014年、2015年、2018年、2019年に世界タイトルを獲得。ロンドンとリオの五輪では連覇を果たしており、今大会の金メダル有力候補だった。
「史上最高の選手(GOAT, Greatest Of All Time)」と広く称されているバイルスは、28日に東京五輪の個人総合も欠場すると発表した。
各国選手の反応
ジャマイカの女子体操選手ダヌシア・フランシスは、「あなたとは知り合いではないけど、シモーン・バイルスは誰もが自分の心の健康を何よりも優先するよう、全員に力を与えたと思う。なんという女王だ。まさにいろんな意味でGOATだ」と述べた。
2012年ロンドン五輪の女子段違い平行棒で銅メダルを獲得した、イギリスの元体操選手ベス・トゥエドルは、BBCの番組で、「2013年以降、彼女(バイルス)は個人総合ですっと無敗だ。どの大会に出ても誰もが彼女に完璧を期待しているが、そんなのは不可能だ」
「『今日は自分は調子が良くないし、ほかの女子の力を信じている。みんなここぞという場面で活躍できる、いつもの演技ができると分かっているので』と言えるだけの力が、彼女にはあった」
「それに彼女は会場に戻って、率先してチームを応援するチアリーダーを務めたし、滑り止めの粉も取りに行っていた。このような決断ができるなんて、いかに彼女が素晴らしいリーダーかを示している」
「私たちは確実に、すべてのアスリートの健康とウェルビーイング(人が健康で幸せな、良好な状態にあること)を1番の優先事項にしなくてはならない」
フランスの体操選手メラニー・デ・ヘスス・ドス・サントスは、「こんなシモーン・バイルスの姿を見るなんて珍しいことだ。彼女はシモーン・バイルスなので、あらゆる人から注目をされている。楽な状況ではないと思う。彼女にとって精神的にとても難しいことだ」と述べた。
日本の体操選手の村上茉愛は、バイルスにしては珍しいことだが、大きなプレッシャーがあると体に影響を及ぼすこともあると話した。
「念のためあらためて。オリンピック・アスリートは人間」
アメリカの元体操選手で、ロンドン五輪とリオ五輪の金メダリスト、アリー・レイズマンは、「吐き気がする。ひどい。五輪アスリートたちはみんな一生をかけて、この瞬間を夢見ているのを知っているので、完全に打ちのめされている。ただただ、シモーンの無事を願っている」と述べた。
「あまりにプレッシャーがすごくて、今大会までの数カ月間、彼女にどれだけのプレッシャーがかかっているか見てきたので、ただただ打ちのめされている」
「念のため、あらためて思い出してほしい。オリンピック・アスリートは人間。ベストを尽くしている。これほどのプレッシャーの中で、ちょうどいいタイミングにピークを持ってきて、一世一代の演技をするのは、本当に難しい」
バイルスへの応援は、ほかの競技のアスリートや、スポーツ界以外の著名人からも寄せられた。
フィリピンのプロボクサー、マニー・パッキャオは「一度でもチャンピオンになった者は常にチャンピオンだ」とコメント。2014年ソチ五輪と2018年平昌五輪で2大会連続金メダルを獲得した、アメリカのアルペンスキー選手ミカエラ・シフリンは、「まぎれもなく金色に輝く、あなたのその笑顔を絶やさないで」と述べた。
米プロバスケットボールNBAミネソタ・ティンバーウルヴズ」のカール=アンソニー・タウンズは、「愛とポジティブな気持ちしかない」とし、アメリカの元フィギュアスケーターのアダム・リッポンは「シモーンが感じているプレッシャーは想像もできない。彼女にたくさんの愛を送ります。みんな彼女も人間だと忘れがちだ」と述べた。
米ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は、「シモーン・バイルスには感謝と応援がふさわしい。今でもGOATだし、彼女の演技を見られる、ただそれだけで私たちは幸運だ」と述べた。
ユニセフUSAは「自分の心の健康を優先してもいいんだということを世界に示し、ロールモデルとなってくれたことに感謝する」とコメントした。
米体操界のエース
今大会で団体総合の全4種目にエントリーしていたバイルスは、1種目の跳馬演技で13.766と、自身の五輪成績で過去最低の点数を出した。この後、演技を取りやめ会場をいったん退場したが、チームメイトを応援するため会場に戻った。
段違い平行棒と平均台、床運動には代わりにジョーダン・チャイルズ(20)が出場した。アメリカは銀メダルを獲得した。これにより、バイルスは6個目の五輪メダルを獲得した。
バイルスは2013年から2019年にかけて、世界タイトルを19回獲得している。
29日からの個人総合決勝で優勝すれば、1964年と1968年のヴェラ・チャスラフスカ(チェコスロヴァキア)以来となる、五輪での女子個人総合連覇となるはずだった。
また、五輪と世界選手権で計30個のメダルを獲得してきたバイルスは、東京五輪で4度表彰台に上がれば、男女を通じ、体操選手として史上最多の世界大会のメダルを獲得できる見通しだった。
27日の団体決勝で、バイルスに代わって段違い平行棒と平均台、床運動に出場したチャイルズは、「責任重大だった。私は明らかな大役を務めなければならなかったが、それができたことをとてもうれしく思う」と述べた。
「もちろん、彼女(バイルス)はGOATです。私は素晴らしい人たちの代わりを務められただけでなく、共に競技に臨んだということを世界に示すことができた」
チームメートのスニサ・リー(18)は、「私たちはみんな、とてもストレスを感じていた。正直、あの時は分からなかった。だって彼女は、あのものすごいシモーン・バイルスなんだし。結局は彼女がチームを引っ張ってるので」と述べた。
「全員がここ一番のがんばりをするしかなくて、すごく大変でストレスだったけど、みんなで結果を出せたのがとても誇らしい」
バイルスは27日の競技後、インスタグラムに団体のチームメイトと銀メダルを手にした写真を投稿。「この子たちをすごく誇りに思う。みんな信じられないほど勇敢で優秀! 諦めずに逆境に立ち向かうみんなの決意に、果てしなく元気をもらっている。私が演技できない時、みんながここぞと活躍してくれた。私のそばにいてくれて、支えてくれてありがとう!みんな永遠に大好き」と書いた。
からの記事と詳細 ( 【東京五輪】 「心の健康を優先」して途中棄権、米体操バイルスに称賛の声相次ぐ - BBCニュース )
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