大同特殊鋼の体力機能測定。体力年齢と実年齢の差を認識できる
自動車部品メーカーが、健康経営の質向上を目指す取り組みを活発化している。自動車業界は100年に一度の大変革期にあると言われる。乗り越えるには新たな発想が不可欠であり、その源泉は従業員の健康な心身だ。各社は健康経営を推進するため、社内制度など環境整備を進めてきた。今後は、従業員が自発的に健康向上に寄与する行動をとるように促す動機付けや仕組みづくりが重要になる。各社が知恵を絞る。(名古屋・山岸渉)
肥満防止・禁煙・ストレス管理…
「変革期で厳しいと言っていても前には進まない。(対応するには)従業員が心身ともに健康でないといけない」。燃料タンクなどを手がけるFTS(愛知県豊田市)の落合宏行社長はこう力を込める。
FTSは2017年4月に健康宣言し、全員参加活動(職場主体)、職場環境整備、個別活動(きめ細かやかなケア)の3本柱を掲げ、多岐にわたる活動に取り組む。従業員のBMI低減を目指す活動に取り組むほか、管理職は年3回のストレスチェックを実施している。社内に従業員が職場環境について手軽に上司などに相談できる施設「@WARM」を設けている。4月からは社内を全面禁煙にした。
健康経営は従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する取り組みだ。「社員の健康は、成長のための重要インフラ」との考えが根底にある。経済産業省は健康経営に関する顕彰制度として14年度から東京証券取引所と「健康経営銘柄」を選定し、16年度には日本健康会議と「健康経営優良法人」を設けた。さらにコロナ禍でテレワークなど働く環境が変わったことで孤独感などメンタル面や運動量の減少で懸念もあり、健康経営の重要性は増している。
特に自動車業界はCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)などの新潮流が加速。変革の波に対応するには健康が新たな発想などを生む基盤になる。人材が成長の源泉と捉え、部品関連企業でも健康経営に取り組む動きが活発だ。
ファインシンターは21年度から5年間の中期経営計画の策定と合わせて健康経営の中期的な目標と実行計画を策定する考えだ。保健指導の徹底やストレス管理の充実などに取り組む。井上洋一社長は「環境が変化し心理的な負担も大きくなる。ストレス管理やメンタルの健康などが大事」と説明する。
東海理化は5日から栄養バランスを考えた健康社食の提供を本社(愛知県大口町)で始めた。「味もおいしく、食べれば食べるほど健康になる」と二之夕裕美社長は語り、新分野への事業展開を加速するための“ガソリン”になると期待する。「健康経営銘柄も取りたい」(二之夕社長)と意気込む。
その健康経営銘柄に、大同特殊鋼は21年3月に初めて選ばれた。特殊鋼を手がける同社は「例えば溶鋼の現場は高温になる。働く環境が過酷な面がある」(安全健康推進部の内藤幸宏部長)だけに従業員の健康への取り組みに気を配ってきた。
健康経営に関しては06年から安全推進部(現安全健康推進部)とその一部署としてヘルス改革室を設けるなど、先駆けて取り組んできた。
全従業員が健康診断を受けた後に産業医・保健師による面談を受けるほか、定期的な体力機能測定も実施している。20年7月に健康を意識付ける独自のロゴを制作するなど、きめ細かく健康をサポートする。
従業員の意識付け着実に
自動車関連各社の健康経営の仕組みは整ってきており、健康を推進する企業と評価されるケースは増えた。大同特殊鋼は健康経営優良法人の特に優秀な500社の「ホワイト500」に4年連続、東海理化は2年連続で選ばれた。今後は経営側が従業員や現場に寄り添い、健康への取り組みを自発的に行えるよう支援する取り組みが欠かせない。
「これからは従業員一人ひとりが健康を意識できるようになるのが重要」と大同特殊鋼の内藤部長は指摘する。同社は16年の健康経営宣言の策定、21年の健康経営銘柄の指定など、着実に歩を進めてきたが、次のステップとして、従業員らが健康を無理なく意識できる職場環境づくりが重要と捉える。
ファインシンターの井上社長も管理職への教育を含め、「従業員への動機付けが重要だ」と指摘する。
心身ともに従業員が健康であることが、変革期を乗り越えるエンジンとなる。経営側、従業員が一体感を持って健康経営に取り組む重要性が増している。
日刊工業新聞2021年4月30日
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