
高齢になって心身の活力が落ちた状態をさす「フレイル(虚弱)」。放っておけば介護が必要な状態になるが、独居の高齢者は自身では気づきにくい。そこで家庭の消費電力を人工知能(AI)を使って分析し、フレイルかどうかを見極める実証実験が、三重県東員町で進められている。
フレイルは、健康状態と介護が必要な状態の中間と位置付けられる。放っておくと、筋力量や活動量がさらに低下し、要介護に近づく。一方、栄養を十分にとって、適切な運動量を確保すれば、健康な状態への回復が期待される人たちだ。
フレイルかどうかは自身での判断が難しく、現状は医師による対面式の診察に依存している。このため、国内での把握には「漏れ」があるとされる。情報技術を利用して、手軽にフレイルと判別する手法の開発が待たれていた。
今回、東大発のAI企業「JDSC(旧・日本データサイエンス研究所)」が東大や中部電力などが出資する企業と連携し、消費電力量からフレイルの診断ができる手法を開発。東員町で昨夏から、実証実験に取り組んでいる。
実験に参加するのは町内の約30世帯。協力を得て、消費電力量を数値で記録する「スマートメーター」を各住宅に設置し、さらに人の動きを感知するセンサー機器を屋内のドアや冷蔵庫の扉に取り付けている。2種類の機器からデータが送られ、開発されたAIが分析。住民がフレイルなのかどうかを判別する。
JDSCによると、メーターに記録される消費電力量から、外出の頻度や睡眠時間を特定できるという。同社のプロジェクト担当者は「受け身で診断できるので、フレイル予防に興味が薄い人でも参加できる」と話す。
鶴田久明さん(76)は2人の娘が独立。妻には10年近く前に先立たれ、一人暮らしも長くなる。「もし、いま要介護の状態になったらという心配はある」と話す。食生活、起床時間、外出頻度を1人で管理するのは限界があると感じ、実験への参加を決めた。
実験にオブザーバーとして参加する県ライフイノベーション課の北川雅敏課長補佐は「東員町での知見はほかの自治体でのフレイル予防対策に役立つのではないか。三重県も高齢化率が高まっているなか、注目している」と話している。東員町での実証実験結果は、今春に報告される予定だ。(村井隼人)
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