全国農業協同組合連合会(全農)では、新型コロナウイルスによる大きな影響を受けた花の生産者を支援する取り組みを行っています。その一環として、連載「花のない花屋」にご協力いただきました。
あなたの「物語」も、世界で一つだけの花束にしませんか? エピソードの応募はこちらから。
〈依頼人プロフィール〉
室 惠子さん(仮名) 54歳 女性
千葉県在住
大学職員
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ジャズ体操を知っていますか?
スウェーデン発祥で、ジャズに合わせながらリズミカルに体を動かす、子どもからシニアまで誰でも楽しめる体操です。
81歳になる私の母は、このジャズ体操の教室を40年続けている現役指導者です。
母は東京女子大の体育科(現在廃止)を出て、体育教師をしていました。結婚を機に教師は辞めてしまったのですが、卒業後も大学時代の仲間たちとよく集まり、体育の勉強会を開いていました。海外の研修会へも積極的に参加していたので、私が高校生の頃などは母が数週間不在ということがよくありました。
その中で母はジャズ体操と出会います。ジャズのリズムにのって動きを次から次へとつなぎ合わせていくため、意外と頭を使うこの体操。母は「私たち日本人にピッタリ!」と感じたらしく、のめり込んでいきました。もちろん、スウェーデンの創始者の元へ何度も学びに行きました。
私たちは川崎市に居を構えていたのですが、当時は大気汚染が問題になっていました。そのためか、ぜんそくの子どもたちがたくさんいました。
母は知人から、ぜんそくの子どもも体力が付けられるよう、体操を教えてやって欲しいと頼まれました。近所の会社が体育館を貸してくれることになり、教室を開くことになります。
治療費が大変だからと月謝は1000円。就学前の子どもは、親子で参加してもらっていました。小学校へ上がると、子どもだけでの参加になります。
すると、参加していた親御さんたちからもっと続けたいとの声が上がり、大人の教室も持つことに。
子どもの教室は10年以上前にやめてしまいましたが、大人の教室は今も続いています。
川崎のまちの小さな小さな体操教室から巣立っていった子どもたちは1000人以上、大人は500人。当時はママだった人も、今はバァバに。
私や妹も運営を手伝わされたことも、生徒の子どもたちと一緒に毎年ささやかなクリスマス会を開いていたことも、いい思い出。母は持ち前の明るさで常に人に囲まれていました。
体操の研修会で知り合った友人も世界中にいます。好奇心も旺盛で、ぜんそく、母子関係、障害児教育とあらゆる分野にわたって勉強し続けてきました。最近は孫の影響でiPadにはまっているようです。
今、コロナ禍で母は悩みぬいています。体操教室の開催がままならず、生徒さんが身体を動かすことが出来ないこと、そして生徒さんのみならず、高齢者が外出を控えて筋力が衰えてしまうことへの危惧……。ただ「在宅用にDVDを録画して配るわ」と意気込んでいます。
重度の障害を持って生まれた長男(私の弟)を生後6カ月で亡くしたときも、父が失職したときも、母はその持ち前の明るさで乗りきってきました。そして81歳を迎えた今も「健康と笑顔」を届け続ける母に花束を贈りたいです。
花束を作った東さんのコメント
おお、80歳を超えられてiPadも使いこなし、DVDも録画して配られるとか。すごいお母様ですね。でも優しいお人柄なのが、エピソードから伝わってきます。そんな多彩でパワフル、かつ若々しいお母様のイメージで、宝石箱のような花束にしあげました。
緑と赤の実ものはどちらもヒペリカム。つやつやしていて本物の宝石のよう。淡い紫の花はスカビオサ、濃いめのピンクで黒の縁取り模様がついているのがナデシコ、など色々な小花が。まとまりつつも一つ一つが輝いて見えるよう工夫しました。周りの葉っぱにしのばせたゼラニウムは、アロマ精油にも使われるほど香りがいいです。
花を見て明るい気持ちになり、香りでは癒やされて、さらに元気を出してもらい、その元気と笑顔をこれからも色んな方に振りまいていって欲しいです。
(写真・椎木俊介)
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「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。
フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)
PROFILE
からの記事と詳細 ( 81歳の母は、ジャズ体操の先生 健康と笑顔を届ける現役です - 朝日新聞社 )
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