新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、満員電車を避けて時差出勤をしたり、出勤そのものを不要とする「テレワーク」などを導入するなどの動きが相次いでいます。
しかし、快適なテレワークをするには、ある程度高速な通信回線が必要です。そこで今回は、テレワークをする上で便利な通信回線について、その長短を交えながら紹介します。転職・転勤や入学・進級など、春の新生活に合わせて高速な通信回線を導入しようと考えている人も参考にしてください。
(料金は全て税別、通信速度は全て理論値)
理想は「固定回線」 しかし……
テレワークを含め、自宅を拠点として日々の業務を行うには、光ファイバーやCATV(ケーブルテレビなど、いわゆる「固定回線」のインターネットを使うことが理想的です。Wi-Fi(無線LAN)ルーターをつなげれば、スマートフォンやタブレットでも使えます。
固定回線の大きなメリットは、高速かつ安定した通信を実現しやすいこと。特に、上り通信はモバイル通信よりも高速な傾向にあるため、高品質なビデオ会議や、大きめのファイルを頻繁にやりとりする場合は特に有利です。
しかし、固定回線にはデメリットもあります。自宅にあまりいることがない人にとっては、月額料金が「割高」になるかもしれません。また、引っ越しをする際に、今までの固定インターネットサービスを継続して契約できるかどうかも分かりません。
さらに、これからの時期において特に顕著なデメリットとしては、申し込んでから利用可能になるまでに、どれだけ早くても数週間、場合によっては1カ月程度かかってしまうことです。新生活に合わせて、固定回線の新設や移転を申し込む人が増えるがゆえに、工事に時間を要してしまうのです。
ここで、筆者の連載を担当する編集者の、固定回線にまつわるエピソードを紹介します。
2019年3月に引っ越しをしました。以前から使っている「ドコモ光」を引っ越し先でも使う「転居手続き」をしたのですが、転居先でトラブルが発生しました……。
引っ越し前は、集合住宅向けの「マンションタイプ」の光配線(光ファイバーを自室に引き込むサービス)を使っていました。ひかり電話(ドコモ光電話)の電話番号を変えたくなかったのと、月々の出費を大幅変えたくなかったこともあり、マンションタイプの光配線に対応した物件を近所で探して、ちょうど良い所が見つかったので契約して引っ越しました。
ところが、工事当日になって、自室に光回線を引き込めないことが判明しました……。建物にスプリッター(光回線を各部屋に分配する装置)は設置されているものの、建物の電話回線の引き回し方の都合で、自室を含む同一フロアの全号室に光回線を引き込めないというのです……。「共有部分で追加工事をすれば引き込める」ということなのですが、建物のオーナーか管理者からの依頼が必要だそうです。
本来、構造の都合で引き込めない部屋(あるいはフロア)がある場合、回線提供元であるNTT東日本のデータベースに登録され、それが申し込み可否の判定ページにも反映される……はずなのですが、引っ越し先の部屋は、何らかの手違いでデータベースに反映されていなかったようです。
プライベートはもちろん、仕事でも光インターネットとひかり電話は欠かせません。「どうにかしてを引けないか?」と相談した所、自室が低層だったこともあり、戸建て向けのホームタイプ回線を直接引き込むことになりました。
本来なら、引っ越しから半月後には光インターネットが使えるようになるはずでした(それでも遅いのですが……)。それが、「工事当日に工事不可判定→数回の電話サポートとのやりとり→契約と工事の内容変更→再工事」と経て、結局引っ越しから2カ月近く経過してようやく「ブロードバンド難民」を卒業できました。
上記のような数カ月に及ぶ、ややこしいトラブルはめったにありません。しかし、契約や工事にまつわる軽微なトラブルは珍しくありません。トラブルが発生する可能性を加味すると、いつから使えるのか読み切れないのが固定インターネット回線が抱える最大のデメリットといえそうです。
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モバイル通信のメリットは「すぐ使える」こと
これに対して、モバイル通信サービスのメリットは、利用する場所がサービスエリア内であれば、宅内工事は不要で、店頭で契約した場合は契約が完了すればすぐに使えることが何よりのメリットです。
以前は、契約期間を2〜3年に設定し、中途解約時の解約金(違約金)が1万円前後(事業者によっては2年以内だと1万4000円〜1万9000円)と高額でした。しかし、法令の改正に伴い、記事掲載時点における新規契約については解約金の上限が原則として1000円となった上(※1)、解約金の設定自体を廃止したサービスも出てきています。
つまり、固定インターネットが開通するまでの“つなぎ”用途にも使いやすくなったということです。
(※2)解約金の上限額規制は、大手キャリア(UQコミュニケーションズを含む)、大手キャリアの特定関係法人が運営するMVNOと、契約数が100万件を超えるMVNOに適用されます
すぐに使い始められる上、契約解除料も値下がりしたモバイル通信ですが、固定インターネット回線と比べると、設置場所によって速度が低下する可能性があることと、データ通信に関する制約が厳しいことがデメリットです(制約については後述します)。
「UQ WiMAX」と「SoftBank Air」 それぞれの長短をチェック
固定インターネット回線代わりに使えるモバイル通信サービスとしては、UQコミュニケーションズが提供する「UQ WiMAX」と、ソフトバンクが提供する「SoftBank Air」の2つが代表格として挙げられます。それぞれ、特徴と注意点を簡単に記します。
UQ WiMAX
UQ WiMAXは、ハイスピードモード(WiMAX 2+単独利用時)において下り最大558Mbps、上り最大30Mbpsの通信に対応しており、同モードでは月間の通信容量制限はありません。UQコミュニケーションズが直接提供するものは、月額3880円から使えます。
ただし、以下のいずれかの条件にあてはまると、通信速度制限がかかります。
- 直近3日間の通信量が10GBを超過した場合
- 「ハイスピードプラスエリアモード」での月間通信量が7GBを超過した場合
1番の条件に抵触すると、翌日の18時から翌々日の2時までの通信速度が上下最大1Mbpsに制限されます。ただし、制限時間外の通信速度は通常通りとなります。
問題は2番の条件です。ハイスピードプラスエリアモードは、au(KDDIと沖縄セルラー電話)の「au 4G LTE」のネットワークも併用するモードで、ハイスピードモードよりエリアが広い上、最大通信速度も向上します。しかし、2番の条件に抵触すると、ハイスピードモードでの通信を含めて、当月末までの通信速度が上下最大128kbpsに制限されてしまいます。この速度では、さすがに何をやるにも厳しいです。
UQ WiMAXは、以下の条件に当てはまるととても快適に使えます。
- WiMAX 2+単独でも十分な通信速度を得られる
- 3日間の通信量が概ね10GB以下、または夜間・深夜にあまり通信をしない
なお、UQ WiMAXでは「公式オンラインストア」からSIMカードのみ購入することもできます。ただし、UQコミュニケーションズが指定するWiMAX 2+デバイスが必要となるため、「以前に使っていたWiMAX 2+デバイスがある」「中古のWiMAX 2+デバイスを買える」といった環境にある場合は、ぜひ検討してみてください。
SoftBank Air
SoftBank Airは、下り最大481Mbps(一部エリアで特定のルーターを使う場合は962Mbps)で通信できます。筆者が探した限りにおいて、ソフトバンクの公式サイトには上り速度の記載が見当たりませんでした。月額料金は4880円から(ルーターを分割払いで購入した場合:レンタル利用する場合は月額5370円から)です。
UQ WiMAXとは異なり、月間、一定期間共に明確な通信容量制限を設けていないことがSoftBank Airの大きな特徴です。しかし、以下の条件のいずれかを利用した場合に、通信速度を制限することがあるとしています。
- 音声通話やテレビ電話などをデータ通信で実現するサービス
- 動画ファイル
- 画像ファイル
- 動画閲覧、高画質画像閲覧、P2Pによるファイル交換、ソフトウェアダウンロードなどを伴うサイトやアプリケーション
基準は曖昧ではありますが、UQ WiMAXと同様に、「無制限の使い放題」ではないことを念頭に置いて契約する必要があります。
SoftBank Airの速度制限
「大容量プリペイドSIMカード」も選択肢に
最近は、通信容量が大きい割に月額料金が手頃なSIMカードもあります。以前この連載でも紹介した「Nomad SIM」はその一例です。
現在、Nomad SIMにはポストペイ(月額)契約に加えて、契約手続きなしで購入できるプリペイドタイプもあります。販売価格は3GBが2600円、10GBが3400円で、両社ともに利用開始日から最大90日間(利用開始日の翌々月末まで)使えます。
テレワークをする上で「普段のスマホの容量を使いたくない!」という人もいると思います。SIMロックフリーのルーター(またはスマホ)を別途用意することが前提とはなりますが、テレワーク用の通信回線として、気軽に使えるプリペイドSIMカードを用意しておくことも、1つの選択肢としては“アリ”だと思います。経費が会社から支給される場合は、SIMカードの費用を経費申請しやすいでしょう。
突然のテレワークは筆者の身にも
“突然”のテレワークは筆者も体験しました。
モバイル業界最大のイベント「MWC Barcelona 2020」が中止となった影響で、受託業務のスケジュールが変更になりました。この業務は本来は出勤が必要なのですが、変更後のスケジュールでは、子どもを預けられそうにありません。そこで、委託元と家族に事前の了承を得た上で、子どもの世話をしつつ、自宅でテレワークをすることになりました。
普段は出勤している業務ではありますが、取材先への問い合わせは電話やメールで済ませられます。その上、委託元とのやりとりは「Slack」などのチャットツールを普段から使っていたこともあり、テレワークをしやすい環境があらかじめ整っていたともいえます。
筆者の自宅には光インターネット回線があるのですが、今回は自宅から離れた環境でのテレワークが必要になった時に備えて、楽天モバイルのキャリア(MNO)サービスの回線を活用してテレワークをしてみました。
自宅近くに基地局が設置されているためか、それとも本格的に商用化する前でユーザーが少ないせいか、端末(Rakuten Mini)の最高通信速度に近い速度で快適に通信できました。これならテレワークでも十分に使えます。
間もなく本格的な商用サービスが始まる楽天モバイルのキャリアサービスですが、自社エリア内で使うことを前提に立つと、通信速度次第では固定回線の代替として使うモバイル回線として役に立つかもしれません。300万人限定で1年間無料で使えるので、試しに使ってみるのも良いでしょう。
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March 15, 2020 at 08:00AM
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