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Saturday, December 7, 2019

観光と「健康」旅の有望株 ヘルスツーリズム、商品開発の動き|静岡新聞アットエス - @S[アットエス] by 静岡新聞

宿泊客に天城流湯治法のセルフケアを教える鈴木基文さん(左端)=伊豆市の船原館

 健康志向の高まりを受け、旅行の行程に健康増進プログラムを加えた「ヘルスツーリズム」が注目を集めている。きっかけは、NPO法人日本ヘルスツーリズム振興機構(東京都)などが設立した認証制度。2020年東京五輪・パラリンピックで観光客の増加が予想される中で、自転車競技が開催される静岡県でも世界遺産の富士山や世界ジオパークに認定された伊豆半島などの豊かな自然を活用したプログラム開発の動きが出てきた。

 ■独自プログラム
 ヘルスツーリズムは地域に伝わる健康食を振る舞い、旅行の行程に散策や運動、湯治などを盛り込んだプラン。同機構と日本規格協会、日本スポーツツーリズム推進機構の3団体が昨年、委員会を組織して認証制度を立ち上げたところ、登録申請が相次ぐようになった。
 認証自体はあくまで民間団体による“お墨付き”のため、登録で得られる直接的な利益は少ないが、プログラムやサービス内容について客観的評価を受けることで、旅行プランのブランド価値を高め、品質保証にもつながるという。これまでに登録されたのは全国で39プログラム。長野県木曽町の開田高原を歩く「健康ウォーキング」や、地元食材と「かみのやま温泉」で疲れを癒やす山形県上山市の「クアオルト膳とプチ湯治」など、いずれも地域資源を生かした特色あるプランが目を引く。
 静岡県でも、ヘルスツーリズムで観光客を誘致して地域経済の活性化を図ろうと、プラン開発を進める動きが加速している。とりわけ、地形や地質が世界的に貴重な伊豆半島と富士山を併せ持つ県東部は、変化に富んだ自然や食材、温泉などを活用してさまざまな健康増進プログラムを提案できる。伊豆地域の宿泊施設でつくる「伊豆かかりつけ湯協議会」は、健康をテーマにした旅行商品の開発支援を行っていて、同協議会の加盟旅館の中には工夫を凝らした独自プログラムを企画する施設も多い。

 ■高いハードル
 伊豆市の船原館はその一つ。館主の鈴木基文さん(66)自らがセラピストを務め、温泉に仰向けに浮かぶ米国生まれのリラクセーション「ワッツ」や、セルフケアの天城流湯治法などのサービスを展開している。
 ただ、ヘルスツーリズムを進める上で課題も見えてきた。それぞれの宿泊施設ごとに申請が求められる認証制度のハードルの高さだ。同協議会では認証取得に向けた勉強会も開催したが、申請したケースはまだない。「認証を取得するかどうかは個々の宿に委ねられている。個別での登録となると人手や費用面の負担が大きく、取り組みにくくなっている」(同協議会担当者)という。
 認証制度の認知度が低く旅行者に浸透していないのも懸念材料だ。船原館でも健康増進を一番の目的に訪れる客は少ない。鈴木さんは「運動や休養、食事、教養の要素をうまく組み合わせることが大事。満足度の高いサービスを提供する必要がある」と話す。
 ヘルスツーリズムは旅を通じて心と体を休め、健康を意識するきっかけにしてもらうのが狙い。観光客が名所や娯楽施設などを訪ねる旧来型の旅とは異なり、体験型観光ゆえに同じ場所に何度も通い詰めるリピート客を獲得しやすいとされる。「人生100年時代」と叫ばれる中で、健康長寿のためのプログラムでリピート客をつかむことができれば、交流人口の増加や地域経済の活性化につながる可能性も出てくる。

 ■自治体後押しも
 静岡県はこうしたヘルスツーリズムの可能性に着目し、プラン開発を後押ししている。昨年11月に開かれた中央日本4県サミットで、山梨、長野、新潟の各県とともにヘルスツーリズムを推進することに賛同。互いに情報共有を図り自治体として支援していく姿勢を示した。
 20年の東京五輪・パラリンピック自転車競技で盛り上がった機運を一過性で終わらせることなく、その後のレガシー(遺産)づくりへと結び付けるためにも、ヘルスツーリズムは有効な手だてだ。県内各地で取り組んでいるサイクルツーリズムや、伊豆半島ジオパークを巡るジオツアーはヘルスツーリズムの理念に通じるだろう。
 静岡県には、多様化する観光ニーズに対応できる豊富な地域資源がある。その中でも、ヘルスツーリズムは磨けば光る“有望株”。県観光政策課の担当者は「健康増進を意識した観光資源は既にたくさんある。各地域ごとの独自色を損なうことなく、ヘルスツーリズムにつなげていけたら」と、今後の進展に期待を寄せる。

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December 08, 2019 at 12:05PM
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