間もなく卒業シーズン。学校生活の思い出を凝縮したのが卒業アルバムだ。最近はスマートフォン版があるといい、デジタル技術で目をつぶった生徒の顔を差し替えることもできるらしい。今どきの「卒アル」事情を、広島県内で探った。
卒アル作りに人工知能(AI)が活用されていると聞き、三原市の三原小を訪ねた。6年生を昨春に送り出した森本直也教諭(35)が大型モニターで見せてくれた。アルバムに載せる写真候補が25枚ほど入ったフォルダーをクリックすると、それぞれの児童が写る枚数が自動でカウントされる。スマホのロック解除などに使われる顔認証と同じ仕組みという。
同校は3年前にこのシステムを導入するまで、候補の写真を並べた用紙の横に児童の名簿を添え、教員が正の字で数えていた。森本教諭は「作業量が大幅に減り、楽になった」と喜ぶ。システムを開発したIT企業エグゼック(東京)によると、全国約2千校が採用しているという。
デジタル技術の活用は顔認証にとどまらない。アルバム会社などによると、集合写真の撮影時に欠席した生徒を列の中に合成▽校則で持ち込み禁止のペットボトルなどを消す―といった修整は今や当たり前になりつつあるという。
デジタル化は、アルバムの形も変えている。大手のダイコロ(大阪)は2年前、モバイル版の卒アルの提供を始めた。動画や音声も記録できるのが利点だ。松本秀作社長は「『大リーガーになりたい』などと語る姿が当時の声で残る。大人になって見返したら楽しいはず」と強調する。
紙のアルバムの構成を工夫し、「自分だけの一冊」を作るのは安田幼稚園(広島市中区)だ。アルバムの1ページは、保護者が選んだわが子のベストショットでつくる。
ここで一つ、疑問が湧いた。今は多くの人がスマホに親しんでいる。中高生なら友達同士、交流サイト(SNS)で画像を交換し、顔の加工もお手のものだ。そんな時代に、若者は卒アルを必要としているのだろうか。
安西高(安佐南区)3年の松本弥月(みづき)さん(18)は「顔を加工できないので、アルバムを見たら『盛れてないー』ってなるけど、それも思い出かな」と笑う。
「開くときの緊張感はアルバムならでは」と話すのは、広島修道大協創高(西区)3年の前田羽喜(うき)さん(18)。「先生や関わりの少なかった同級生の写真もあり、見返した時に話が弾む」と教えてくれた。卒アルの重みは、いつの時代も変わらないのかも。
この記事を書いたのは
下高充生(社会担当)
カメラに向かって笑うのは苦手です。最新の技術で、程よい笑顔にしてくれたら。
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