KDDIは11月2日、2024年3月期第2四半期の決算を発表した。上期の売上高は前年同期比1.4%増の2兆7790億円、営業利益は同0.2%増の5603億円で増収増益。モバイル通信の収入がプラスに転じるなど全体的に収益が拡大した。同社の高橋誠社長は、「マイナスの部分がほぼなくなってきた。一番大きかったARPUの減収が反転できた」と話す。
通信ARPUが反転、今後さらに増収を見込む
政府主導による携帯料金の「4割値下げ」以降、携帯各社は通信ARPU収入が減少し、前年同期比マイナスが続いていたが、KDDIではこの第2四半期でプラスに反転。四半期単体では前年同期比37億円の増加。上期としては8億円の増加となる7381億円となった。
上期の付加価値ARPU収入は2290億円で、マルチブランド総合ARPU収入としては130億円増の9672億円だった。高橋誠社長は、「やっと対前年比でプラスになった。反転の方向に来たのは非常にいいこと」と安堵の表情。絶対額としては小さいが、方向性としては収入拡大に向かっているという。
第2四半期におけるマルチブランドIDは3094万となり、前年同期比28万の増加。マルチブランド通信ARPUは3960円となり、前四半期比で30円の増加となった。
売上拡大を主導するauの魅力を拡大する施策として、これまで「ニーズに合わせた通信と付加価値サービスのセットプランを他社に先駆けて提供してきた」と高橋社長。2023年には、「業界初」(高橋社長)という金融との組み合わせである「auマネ活プラン」をリリースした。
9月の新規加入、機種変更時に使い放題MAXプランを選択した利用者の3人に1人が同プランに加入しているとのことで、当初計画よりも順調な滑り出しだという。
コンテンツ利用の拡大によってARPUの増大を図る取り組みでは、「コンテンツのスマホ視聴ニーズが拡大している」(同)という状況下で使い放題プランの利用促進を図る。特に強みというパートナリングを生かして、スポーツの無料配信を強化。バーチャル高校野球では地方予選を含めて全試合を配信、過去最多視聴数を記録したという。
高校サッカー、春高バレーの配信も開始。「非常に順調に推移している」(同)。高橋社長は、「高校野球の予選からやったらものすごい数の人が見る。高校バレーなども予選からトラフィックが上がる。お客さまのニーズに沿った形で(視聴のために)データ通信を使ってもらっているので、次の四半期も(ARPUは)右肩上がりになるのではないか」との見込みを示す。
携帯キャリアとして生命線となるネットワークでは、生活動線に沿ったエリア展開を進める5Gネットワークが、鉄道47路線、商業地域384エリアをカバー。東京の山手線は全駅で5Gを利用可能になった。
「開設計画を大きく出してしまい、今年(2023年)中に9.1万局をやらなければならないので大きく広げた」とのスピード感が功を奏して、第三者機関の評価でも「エリアはいいポジションを取れている」(同)という状況。ただし、5Gだけでなく4Gのパケ止まりの問題も考慮した設計の見直しが必要との判断も示す。
また、5GのSub-6帯では、衛星通信との干渉が2023年度末に解消される見込みで、「(基地局の出力)パワーを上げられるので、品質は明らかに良くなる」と高橋社長。その状況に向けて、「技術のメンバーにも品質やエリアで(第三者機関の評価で)1位を取れるように発破をかけている」と意気込む。
通信関連では、楽天モバイルに提供しているローミング契約の終了で600億円という大幅な収入減が懸念されていたが、新たな契約を締結したことで、よりなだらかに減らしていくようになった。結果として減収要因が改善して203億円の減収にとどまった。
なお、楽天モバイルが新たにプラチナバンドである700MHz帯(3MHz幅×2)の周波数帯域を獲得したことに対して、「(既にKDDIらに割り当てられている)既存周波数が置き換えられるのではなく、新たなバンドでプラチナバンドの議論が終結するのは良いこと」と高橋社長はコメント。
ただ、楽天モバイルのプラチナバンドにおける開設計画が、2026年3月開始予定となっていることについて、「開設計画はすごく遅いペース。2年後では遅いのでは」と疑問の声を挙げる。
高橋社長は、楽天モバイルの鉄塔などは「ギリギリで作っているので、700MHz帯のアンテナを積むのは苦しい」との見方を示し、新たな鉄塔などを建設するエリアも出てきて、設備投資が必要になるのではないかと推測している。
また、2024年2月にスペイン・バルセロナで開催されるMWC Barcelona 2024に「KDDIとしては初めて」(同)出展する。「ドコモさんと一緒にブースを出展して、日本のプレゼンスを少し高めていきたいという思いもある」と高橋社長は話す。
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