楽天グループが2023年度第3四半期決算説明会を行った。2023年1月から9月までの連結業績は最終損益が2084億円の赤字だった。赤字が続いているが、楽天モバイルの赤字は縮小傾向にあり、連結Non-GAAP営業利益は単月での黒字達成が見えてきたと業績の改善をアピールした。ここでは楽天モバイルについて説明会で語られたことを中心に紹介する。
赤字は続くもののモバイル事業は順調に改善
楽天モバイルの23年度第3四半期は、売上収益が557億円で前年同期比21.6%増、Non-GAAPの営業利益は767億円の赤字だが、前年同期比で351億円増となり改善している。
契約回線数は、「この9月、10月から会員数が非常に増えて」(三木谷氏)きており、10月の純増数は19.2万。そのうちの約11万は法人向けのBCP対策としての契約で、収益貢献は限定的だが、それを除いても大きく伸びている。損益分岐点となる800万から1000万回線の獲得を2024年末までに目指すとしている。
ARPUも上がり、前年同期比で590円アップ。また、三木谷氏が「一番重要」と言う解約率は第3四半期時点で2.06%。足元の10月は2%を切っており、開通月と同月で解約する回線を除いた調整後の解約率は1.44%まで改善してきた。
「世界のメガキャリアも注目している」(三木谷氏)楽天シンフォニーはタレック・アミン氏の退任に伴って経営体制を変更し、楽天モバイルの共同CEO兼CTOであるシャラッド・スリオアストーア氏が社長に、三木谷氏がCEOに就任して事業を展開している。楽天シンフォニーのプラットフォームを採用しているドイツのモバイル事業者1&1が12月にサービスを開始する予定だという。
700MHz帯の獲得や新ローミング契約でネットワークの品質を改善
楽天モバイルの事業は、「かなり大胆に、基地局の建設を進めて仮想化技術を確立した」フェーズ1(2020年から22年)を経て、23年はリーンな(無駄のない)経営体質を確立するフェーズ2。「マラソンを走れるようにしようということでやってきた」が、契約回線数の増加も順調で、「今年のうちに成長曲線に入りつつある」と三木谷氏は語った。
「黒字化および国内No.1モバイルキャリアへの道」を進む2024年からのフェーズ3に必要なものとして三木谷氏は「Quality(品質)」と「Growth(成長)」を挙げた。
Qualityは「とにかくネットワークが重要」(三木谷氏)。既存の周波数帯域の拡大をコントロールしながら伸ばすこと、KDDIとの新ローミング契約に基づいたネットワークの最適化、プラチナバンド認定の3つがポイントになるとした。
10月23日に総務省で認定式が行われ、楽天モバイルに700MHz帯が割り当てられたが、楽天モバイルが開設計画で示した基地局の開設数約1万局、設備投資額544億円という数値が少な過ぎるという声もある。これに対し三木谷氏は「仮想化技術のパワー」だと意に介さない。
「他社さんは、場合によっては新しいアンテナを設置するとか、新しいラジオユニットを入れなくちゃいけないが、われわれは(1.7GHz帯基地局の中に)700MHz用の無線機を設置するだけでプラチナバンドも同じアンテナから帯域を狭めることなく発射できる。単純計算すると1局あたり544万円でできるかっていう話だと思うが、これも十分、お釣りが来るような形でできる」
「工事の方々は、設置場所に行って、パカパカパカとはめて、つなぐと、700MHzも発信できる。これが仮想化技術の特徴で、拡張性が非常に高いことが、ここにおいても生きると思っている」(三木谷氏)
楽天モバイルが採用しているレディオヘッド(アンテナ)のパワーは「業界の1位、2位を争うぐらい」非常に高性能だという。スリオアストーア氏は「十分なアンテナゲインがある。感度が高いものを使っている」と説明。三木谷氏は「大きければいいってものじゃないということかな」とも述べていた。
700MHz帯のサービス開始日は、開設計画では2026年となっているが、準備が早期に整った場合は前倒しで運用を開始するとも記載されており、三木谷氏は「来年(24年)の春以降に使われる」と語った。
既存のネットワークについても、モバイルの独立系調査会社Opensignalの調査結果を出して、評価が上がっていることを示した。「他社に追い付きつつあるということ。半年から1年以内には追い付き、追い越そうと思っている」と意気込む。また三木谷氏は「他社でつながらないという話がいろいろ出ているが、楽天モバイルに関しては一貫した品質ということで高い評価を得ている」と胸を張った。
KDDIとの新ローミング契約基づくネットワーク最適化の進捗(しんちょく)は順調に進んでいるようだ。既に一部のローミング基地局は運用を開始しており、ほとんどは年内に開始されるという。少し残存が出るかもしれないが、「来年(2024年)の早い段階で運用開始できる」とのことだ。
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