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携帯電話がつながりやすいとされる周波数帯「プラチナバンド」を巡り、興味深い展開となっている。総務省が「周波数の再割当制度」を新たに設け、携帯大手3社で使用中のプラチナバンドを新規参入の楽天モバイルが奪える仕組みを整備。周波数の再編に伴って大手3社側で発生する費用も自己負担、すなわち楽天モバイルが負担しなくて済むように決まったことは記憶に新しい。2022年12月のことだ。
この再編を避けるため、NTTドコモはプラチナバンドで未利用のまま残っていた700メガヘルツ帯に着目。新たな割り当てを2022年11月に提案した結果、急ピッチで検討が進み、現状では2023年秋ごろに実現する見通しである。2023年4月19日には楽天モバイルが早期の割り当てを希望するとのコメントを出した。
楽天モバイルはどちらでもプラチナバンドを獲得できるチャンスがある。早くも「当確」ムードが漂っているが、どのような決着となるだろうか。
最高評価の「S」がずらりと並んだ大手3社
このうち周波数の再割当制度に関しては、楽天モバイルが「開設指針制定」を総務相に申請する必要がある。この際、申出人には「有効利用の見込みが既存免許人の有効利用評価の結果と同等以上であること」「申請する周波数は契約者数やトラフィック量などを勘案し、必要十分な幅とすること」などが求められている。
総務省は2023年3月31日に既存免許人の有効利用評価の結果を公表した。これを受け、楽天モバイルは開設指針制定を申請できるようになったわけだが、既存免許人の有効利用評価(プラチナバンドの総合評価)は大手3社とも最高評価の「S」。大手3社がとりわけ設備投資に力を入れてきた周波数帯なので当然である。
楽天モバイルがプラチナバンドを大手3社から奪い取るには、これらと同等以上の計画を出さなければならない。総務省が公表する申請マニュアルを見ると、基地局数や人口カバー率、面積カバー率、契約数、通信量、技術導入状況をはじめ、事業収益や設備投資の見込みとその根拠なども提出が求められる。ハードルは高そうな印象である。
筆者は当初、ドコモ提案の新たな割り当てが実現しても、楽天モバイルはこれを狙わず開設指針制定を申請するのではないかと考えていた。ドコモ提案のプラチナバンドは上りと下りでそれぞれ3メガヘルツ幅しかないからだ。700メガヘルツ帯の3メガヘルツ幅では複数の周波数を束ねて高速化を図る「キャリアアグリゲーション(CA)」がまだ規定されていないため、最大通信速度は下りが毎秒29.4メガビット、上りが同11.3メガビットになる。
さらに楽天モバイルにとって当面は狭帯域で十分であることが話をややこしくする。狭帯域とはいえ、ドコモの契約数と帯域幅から比例計算すると、1100万件を収容できることになる。楽天モバイルの契約数は2022年12月末時点で449万件(MVNOサービスを除く)なので、ここを獲得すると開設指針制定の申請で大手3社から奪い取れる周波数が減ってしまう可能性が高い。前述の通り、申請する周波数は「必要十分な幅」という条件があるためだ。
ただ、大手3社のプラチナバンドは最高評価のSがずらりと並び、楽天グループの足元の財務状況などを踏まえると、まずは狭帯域を狙いにいくのが賢明といえそうだ。開設指針制定の申請は事業規模が大きくなってからチャレンジすればよい。
からの記事と詳細 ( プラチナバンド当確ムードの楽天モバイル、謎のライバル「A社」登場でどうなる? - ITpro )
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