内科にはしばしば眼科から患者さんが紹介されてきます。眼は瞳孔を通して血管の状態を直接観察でき、眼の奥の血管で見られる変化が全身的な異常からきている場合があるからです。私が糖尿病専門医ということもあり、紹介されてくるのは糖尿病の疑いのある患者さんが多くなります。糖尿病になっているのに長い間気付かなかったり、指摘されても放置していたりすると、眼底出血を繰り返していることがあります。これは眼科医が眼底を見れば分かるので、すぐに内科へ紹介されることになります。糖尿病以外でも眼科から紹介されてくる病気があります。
70代前半の女性患者さんが眼科から紹介されてきました。数日前から何となく見えにくい感じがあり、眼科を受診したそうです。検査で視野の一部が欠けていることが分かり、網膜静脈閉塞(へいそく)症と診断され、内科で検査を受けるように言われたとのことでした。これは、網膜の静脈が閉塞して血管が詰まって血液が流れなくなる病気で、糖尿病と並んで眼底出血を起こす代表的な病気です。
糖尿病もそうですが、この病気も動脈硬化(血管が硬くなってもろくなること)との関連が指摘されています。動脈硬化は、高血圧や脂質異常症、喫煙、肥満などの危険因子が重なることで進展しやすくなります。女性患者さんの検査をすると、血圧、悪玉といわれるLDLコレステロール、中性脂肪のいずれもが高めでした。そこで、動脈硬化を悪化させないために、血圧と脂質の治療を開始することにしました。
網膜静脈閉塞症と心血管病発症の関係を調べたたくさんの研究結果を解析した研究によると、網膜静脈閉塞症の患者はそうでない人に比べ、脳血管障害が50%、心筋梗塞が28%多く発症していました。また、韓国で健康保険のデータを用いて調べた研究では、網膜静脈閉塞症の患者はそうでない人に比べ、心筋梗塞の発症が25%多く、65歳未満では47%も多いという結果でした。65歳未満の男性だけに限ると、心筋梗塞の発症率は2倍になっていました。
網膜の動脈が詰まってしまう網膜動脈閉塞症もあります。急な視力低下や視野が欠けるといった症状が現れる場合が多いのですが、網膜の細胞が1~2時間と短時間で死んでしまうため、すぐに眼科を受診して治療を受けることが大切です。こちらも動脈硬化が大きく関係しています。
(しもじま内科クリニック院長 下島和弥)
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