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Saturday, March 11, 2023

【甘いものを減らすためには何をすればいい?】少しずつ糖類を減らすおススメの方法 - ダイヤモンド・オンライン

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健康法を知っているだけでは健康にはなれません。本当に正しいとされている健康法を、きちんと行動に移し、毎日無理なく続けるためには技術が必要です。本連載の「健康になる技術」とは、健康でいるために必要なことを実践するスキルです。簡単に言うと、健康になるために「What(何)」を「How(どのように)」行ったら良いのか、自分の環境や特性(弱点・強み)に合わせて実践する技術のこと。本連載では、話題の著書健康になる技術 大全の著者、林英恵が「食事」「運動」「習慣」「ストレス」「睡眠」「感情」「認知」のテーマで、現在の最新のエビデンスに基づいた健康に関する情報を集め、最新の健康になるための技術をまとめていきます。何をしたら良いのかはもちろんのこと、健康のための習慣づくりに欠かせない考え方や、悪習慣を断ち切るためのコツ、健康習慣をスムーズに身につけるための感情との付き合い方などを、行動科学やヘルスコミュニケーションのエビデンスに基づいて、丁寧にご紹介していきます。今回は、「少しずつ糖類を減らすおススメの方法」についてです。(写真/榊智朗)
監修:イチローカワチ(ハーバード公衆衛生大学院教授 元学部長)
*書籍『健康になる技術 大全』の「食事の章」はケンブリッジ大学疫学ユニット上級研究員 今村文昭博士による監修

【甘いものを減らすためには何をすればいい?】少しずつ糖類を減らすおススメの方法Photo: Adobe Stock

糖類は少しずつ減らせば、気にならない

 様々な食べ物の健康的な食べ方について、行動科学分野の研究が行われるようになってきています。しかし甘い物の摂取をどう減らしていくかに関する強いエビデンスは出ていないようです。だからといって、何もしないわけにはいかないので、役に立ちそうな情報を集めてみました。

 まず、1つの方法として、加工食品に糖類が含まれているものが多いので、自分が甘みを加えられるタイプのものであれば、甘みが初めからついていないものを選ぶのは1つの方法だと思います。加工食品に糖類が多く含まれる理由には、加えなくては消費者が好まなくなるからだといわれています(*1,2)。

 例えば、糖類がすでに含まれているような缶・ペットボトルに入ったコーヒーや紅茶や乳製品が当てはまります。こういったものは、自分で甘みを加えるタイプのものに変えていきましょう。そうすることで、糖類ではないもの(例えば私の場合ヨーグルトには果物を入れます)で甘みを加えたり、砂糖やシロップを入れるにしろ、自分でどの程度とっているのかが可視化できるようになるためです。

3割ほど減らしても消費者の嗜好はそんなに変わらない

 朗報として、いくつかの知覚に関する研究から、少しずつ砂糖を減らせば、人は砂糖が減らされても、ある程度までであれば許容できることが報告されています(*3-5)。ヨーグルトや、チョコレート味のミルクをどの程度減らしても消費者が受け入れられるか、試した実験があります。場合にもよりますが、3割ほど減らしても消費者の嗜好はそんなに変わらなかったという研究があります(*4)。

 ですので、業界団体の方には、ぜひ少しずつ減らす手法を加工食品に取り入れていただきつつ、個人でできることとして、砂糖を何かに加える場合は「少しずつ」減らしてみることをお勧めします。

 また、もはやおきまりのようになってきていますが、入手可能な状態をできるだけ制限すること、そして、一度に食べるサイズと量を小さくすることです(*6,7)。甘いお菓子やジュースは家にストックしない、キッチンやリビングのテーブルや仕事机の上などすぐ食べられるところに置かないことは基本です。また、例えば、お菓子類は、袋から出して小さめのお皿に小分けにして食べたり、1回に食べる量を減らすこともポイントです。

「埋め合わせの行動」に気をつける

 ただ、気をつけなくてはならないのは、砂糖などの糖類を含んだ食べ物を減らすことで、他の脂肪や塩気の多い食べ物、甘いものを多くとってしまう可能性があることです(*1,8)。これを「埋め合わせの行動」といいます(*9,10)。

 ですので、埋め合わせの行動を防ぎつつ、少しずつ気持ち的にも負担にならない程度に砂糖を減らしていくことが重要です。そして、砂糖がすでに入っている菓子や飲料を多く食べる人は、あえてそれを食べるのが「不便な」状況を作り出したり、量を減らすことを試してみると良いでしょう。

【参考文献】

*1 Hagmann D, Siegrist M, Hartmann C. Taxes, labels, or nudges? Public acceptance of various interventions designed to reduce sugar intake. Food Policy. 2018;79:156-65.
*2 Markey O, Lovegrove JA, Methven L. Sensory profiles and consumer acceptability of a range of sugarreduced products on the UK market. Food Research International. 2015;72:133-9.
*3 Chollet M, Gille D, Schmid A, Walther B. Acceptance of sugar reduction in flavored yogurt. J Dairy Sci. 2013;96(9):5501-11.
*4 Oliveira D, Reis F, Deliza R, Rosenthal A, Ana Giménez 4 GA. Difference thresholds for added sugar in chocolate-flavoured milk: recommendations for gradual sugar reduction. Food Res Int. 2016;89(Pt 1):448-53.
*5 Pineli LdLdO, Aguiar LAd, Fiusa A, Botelho RBdA, Zandonadi RP, Melo L. Sensory impact of lowering sugar content in orange nectars to design healthier, low-sugar industrialized beverages. Appetite. 2016;96:239-44.
*6 Steenhuis I, Poelman M. Portion size: latest developments and interventions. Curr Obes Rep. 2017;6(1):10-7.
*7 Arno A, Thomas S. The efficacy of nudge theory strategies in influencing adult dietary behaviour: a systematic review and meta-analysis. BMC Public Health. 2016;16:676.
*8 Gibson S, Ashwell M, Arthur J, Bagley L, Lennox A, Rogers PJ, et al. What can the food and drink industry do to help achieve the 5% free sugars goal? Perspect Public Health. 2017;137(4):237-47.
*9 Kirkpatrick SI, Raffoul A, Maynard M, Lee KM, Stapleton J. Gaps in the evidence on population interventions to reduce consumption of sugars: a review of reviews. Nutrients. 2018;10(8):1036.
*10 Bes-Rastrollo M, Sayon-Orea C, Ruiz-Canela M, Martinez-Gonzalez MA. Impact of sugars and sugar taxation on body weight control: a comprehensive literature review. Obesity. 2016;24(7):1410-26.

(本原稿は、林英恵著『健康になる技術 大全』から一部抜粋・修正して構成したものです)

【甘いものを減らすためには何をすればいい?】少しずつ糖類を減らすおススメの方法林 英恵(はやし・はなえ)
パブリックヘルスストラテジスト・公衆衛生学者(行動科学・ヘルスコミュニケーション・社会疫学)、Down to Earth 株式会社代表取締役、慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート特任准教授、東京大学・東京医科歯科大学非常勤講師
1979年千葉県生まれ。2004年早稲田大学社会科学部卒業、2006年ボストン大学教育大学院修士課程修了、2012年ハーバード大学公衆衛生大学院修士課程を経て、2016年同大学院社会行動科学部にて博士号取得(Doctor of Science:科学博士・同学部の博士号取得は日本人女性初)。専門は、行動科学・ヘルスコミュニケーション、および社会疫学。一人でも多くの人が与えられた寿命を幸せに全うできる社会を作ることが使命。様々な国で健康づくりに携わる中で、多くの人たちが、健康法は知っていても習慣づける方法を知らないため、やめたい悪習慣をたちきり、身につけたい健康法を実践することができないことを痛感する。長きにわたって頼りになる「健康習慣の身につけ方」を科学的に説いた日本人向けの本を書きたいと思い、『健康になる技術 大全」を執筆した。
2007年から2020年まで、外資系広告会社であるマッキャンヘルスで戦略プランナーとして本社ニューヨーク・ロンドン・東京にて勤務。ニューヨークでの勤務中に博士号を取得。東京ではパブリックヘルス部門を立ち上げ、マッキャンパブリックヘルス・アジアパシフィックディレクターとして勤務後、独立。2020年、Down to Earth(ダウン トゥー アース)株式会社を設立。社名は英語で「実践的な、親しみやすい」という意味で、学問と実践の世界を繋ぐことを意図している。現在は、国際機関や国、自治体、企業などに対し、健康に関する戦略・事業開発、コンサルティングを行い、学術研究なども行っている。加えて、個人の行動変容をサポートするためのライフスタイルブランドの設立準備中。2018年、アメリカのジョン・ロックフェラー3世が設立したアジアソサエティ(本部・ニューヨーク)が選ぶ、アジア太平洋地域のヤングリーダー“Asia 21 Young Leaders”に選出。また、2020年、アメリカのアイゼンハワー元大統領によるアイゼンハワー財団(本部・フィラデルフィア)が手がける、世界の女性リーダー“Global Women’s Leadership Fellow”に唯一の日本人として選ばれる。両組織において、現在もフェローとして国際的な活動を続ける。
『命の格差は止められるか ハーバード日本人教授の、世界が注目する授業』(小学館)をプロデュース。著書に、『健康になる技術 大全」(ダイヤモンド社)、『それでもあきらめない ハーバードが私に教えてくれたこと』(あさ出版)がある。
https://hanahayashi.com/

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