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Thursday, December 29, 2022

第996回:楽天モバイルがほしがる「プラチナバンド」とは――なぜ携帯電話各社が欲しがるのか? - ケータイ Watch

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 ニュースでもときどき耳にする「プラチナバンド」という言葉。楽天モバイルが「自社へ割り当てを」と主張し、一部で話題になっています。実は、過去を紐解くとソフトバンクが今の楽天モバイルと同じく「自社への割り当て」を求めていたもの。では、プラチナバンドとはいったいどんなものなのでしょうか? その特長とわたしたちユーザーへのメリットを解説します。

どこにいてもつながりやすい「プラチナバンド」

 プラチナバンドとは、700MHz~900MHzの周波数帯域を中心とする電波帯域を指す俗称です。総務省の研究会として開催された電波利用料制度に関する専門調査会では「ゴールデンバンド」と称されたこともあります。

 電波を始めとする電磁波は、その周波数が高くなればなるほど、つまりその波長が短くなればなるほど光の性質に近づき、直進性を帯びてきます。逆に周波数が低くなる、つまり波長が長くなると、今度は波の性質に近づき障害物があっても回り込む「回析」という現象を起こすようになってきます。また、障害物があっても減衰しづらく、屋内に浸透しやすくなります。

 携帯電話・スマートフォンで使用する電波はそもそも「極超短波」と呼ばれる周波数の高い電波なのですが、その中でも周波数の比較的低い方が、やはり障害物に対して回析して伝わりやすいという性質を持ち、使いやすい周波数帯であるとして知られています。

 ごくごく、簡単に言うと、ほかの周波数帯を使った携帯電話よりもプラチナバンドを使った方が、建物の中などにいても減衰、つまり電波が弱くなるということが起こりにくくなるわけです。

周波数が低いと電波は建物などを周り込めるが、高くなると性質が光に近くなり、周りこまず届かない「影」の部分を作ってしまう

 つまり、700MHz帯・800MHz帯・900MHz帯・1.5GHz帯・1.7GHz帯・2GHz帯・2.5GHz帯・3.5GHz帯と使える周波数の候補があれば700~900MHz辺りが、使いやすい周波数帯ということになります。ちなみに上に挙げた周波数帯は現在、4G LTEに割り当てられている周波数帯です。

各社の4G LTE割り当て
周波数帯 NTTドコモ au ソフトバンク 楽天モバイル
700MHz帯 B28 B28 B28
800MHz帯 B19 B18/B26 B18*
900MHz帯 B8
1.5GHz帯 B21 B11 B11
1.7GHz帯 B3 B3 B3 B3
2.0GHz帯 B1 B1 B1
3.5GHz帯 B42 B42 B42

楽天4G/LTE B18* はKDDIローミング時

各社の5G割り当て
周波数帯 NTTドコモ au ソフトバンク 楽天モバイル
700MHz帯 n28 n28 n28
800MHz帯
900MHz帯
1.5GHz帯
1.7GHz帯 n3 n3
2.0GHz帯
2.3GHz帯 n40
3.4GHz帯 n78 n77
3.5GHz帯 n78 n78
3.7GHz帯 n78 n77/n78 n77 n77
4.5GHz帯 n79
28GHz帯 n257 n257 n257 n257

1.7GHz帯しか持たない楽天モバイルにとってプラチナバンドは魅力

 従来から携帯電話事業をおこなってきた事業者3社(NTTドコモ・KDDI・ソフトバンク)はプラチナバンドを始めさまざまな周波数帯を利用して事業をおこなっています。

 しかし後発の楽天モバイルは、KDDIローミングで提供を受けている周波数帯を除けば、4G LTEに関しては、1.7GHz帯のみでサービスを提供しています。2021年5月には総務省のワーキンググループにおいて、楽天モバイルが、既存の3社が利用する帯域の一部を割譲することでのプラチナバンドの公平な再割当て、つまり自分たちにもプラチナバンドでのサービス提供の機会をという、意見書を提出したのです。

 プラチナバンドをめぐっては、過去にも、やはりプラチナバンドの割当てがなかったソフトバンク(当時はソフトバンクモバイル)が、エリア構築に苦心し強く割当てを要望したことがありました。

 総務省の移動通信システム等制度ワーキンググループ(WG)は、プラチナバンドについても「特別な扱いをせず」ほかの周波数帯と同じような普遍的な再割り当て制度を整備することを提言しています。

 ただし、細かい技術論などでは、話の噛み合わないところも多いようで、再割り当てに要する期間や、再割り当てに伴う費用を誰が負担するのかなど、ドコモやKDDI、ソフトバンクの3社と楽天モバイルとの間で、主張の内容が食い違う場面も見られました。

 たとえば、楽天モバイル以外の大手3社は、「レピーター」や「フィルター」といった装置の交換が必要であることなどを根拠に、再割当てに要する期間を「5年~10年ほど」と主張していますが、楽天モバイル側は「フィルター挿入・レピーターの交換には、3社が見積もるほどの時間はかからない」として、1年以内の利用開始を主張しました。

 12月26日に総務省が公開した携帯電話用周波数の再割当てに関する報告書(案)では、電波法の免許の有効期間が5年であることから、再割当て時の移行に必要な期間は5年間が標準とされており、一応の決着がつけられたかたちとなっています。

 一方で、従来領域以外の再割当ての方向も模索されています。11月にはドコモが、通信速度の遅い狭帯域ですが、700MHz帯のうち、携帯電話用の部分と、ラジオマイクや高度道路交通システム用途(ITS)との間が未使用の3MHz幅が利用可能であることを提言しました。700MHz帯の未使用分は、3GPPではバンド28と定義されている領域の一部で、対応するスマートフォンも多く、ドコモの試算では約1100万契約を収容でき、通信速度の理論値は下り30Mbps、上り11Mbpsを実現できるとしています。

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