Googleが展開するスマートフォン「Pixel」シリーズの上位モデルに位置付けられる「Pixel 7」と「Pixel 7 Pro」が発表され、国内外で販売が開始された。Googleストアでの販売に加え、auとソフトバンクでも販売され、同時に発表されたスマートウォッチ「Pixel Watch」も店頭に並ぶ。
筆者も実機を試すことができたので、インプレッションをお届けしよう。
使える、つながる、いっしょに
スマートフォンに何を求めるかは、人それぞれだ。見やすい大画面ディスプレイが欲しい人も居れば、バッテリー駆動時間を求める人も居る。パフォーマンスを重視する人も居るし、デザインや仕上げが気になる人、質感の良さを求める人も居るだろう。
こうした要素は、スマートフォンが普及しはじめてからの十数年の進化において、おおよそ満たされてきたとも言える。もちろん、価格帯によって、パフォーマンスやスペックは違うが、ディスプレイもバッテリーもカメラも着実に進化を遂げ、スマートフォンとしての完成度は確実に高められてきた。
そして、スマートフォンはどこへ進んでいくのか。昨年10月にGoogleが開催した「Pixel Fall Launch」では、1970年の名曲「New World Coming」(キャス・エリオット)をバックに流したオープニングムービーを上映し、「新しい世界がやってくる」ことを示した。
その新しい世界を生み出す原動力として、Google自ら開発したチップセット「Tensor」を搭載した「Pixel 6」「Pixel 6 Pro」を市場に送り出した。今年8月には同じチップセットを搭載した普及モデル「Pixel 6a」もリリースし、上位モデルと合わせ、市場で高い評価を得ている。
続く2022年秋。Googleは次期製品でどんな方向性を示すかが注目されたが、日本時間で10月6日深夜に開催された「Made by Google '22」では、再び製品ラインアップを軸にしたオープニングムービーが流れた。さまざまな場所にいる人々が身に着けた、あるいは手にしたデバイスで連絡を取り合い、セッションで音楽を奏でるというストーリーだ。つまり、Googleとして、デバイスやサービスを組み合わせることで、場所やシーンにとらわれることなく、より楽しいモバイルライフを奏でたいという意味なのだろう。
日本時間で深夜のオンラインイベントに続き、10月7日には国内でも発表イベントが催されたが、そこにはGoogleの最高経営責任者のスンダー・ピチャイ氏がサプライズで登壇し、メディア関係者を驚かせると同時に、Googleの並々ならぬ意気込みを感じさせた。ピチャイ氏はその後、岸田文雄首相を表敬訪問し、千葉県印西市に建設中のデータセンターをはじめ、日本のネットワークインフラに1000億円を投資することを明らかにしている。
今回、Googleから発表された製品ラインアップは、スマートフォンの「Pixel 7」と「Pixel 7 Pro」に加え、Wear OSを搭載した初のスマートウォッチ「Pixel Watch」になる。スマートフォンの「Pixel」シリーズについては、これまでも何度も製品レビューで触れてきているので、あまり詳しく説明しないが、かつてGoogleはサムスンやLGエレクトロニクス、ファーウェイなどと共に、Androidプラットフォームのお手本的なリファレンスモデルとして、「Nexus」シリーズを開発してきた。これに対し、「Pixel」シリーズはGoogleが提供する各サービスを活用するためのスマートフォンという位置付けになる。
ただし、単なるAndroidスマートフォンのスタンダードモデルということではなく、消しゴムマジックやリアルタイム文字起こし、リアルタイム翻訳など、Pixelシリーズだからこそ、利用できる便利な機能も数多く実現されている。
なかでも消しゴムマジックは従来の「Pixel 6」「Pixel 6 Pro」に搭載されて以来、各メディアで取り上げられ、「Pixel」シリーズのもっともわかりやすい機能のひとつとして、幅広い層にアピールされている。余談だが、つい最近も「Pixelって、背景の邪魔なものが消せるんでしょ。ちょっと見せてください」と言われ、認知度の高さに驚かされた。
Pixelシリーズのラインアップ
「Pixel」シリーズのラインアップについては、大きく分けて、2つのラインがある。
ひとつは「Pixel」シリーズの上位モデルで、今回の「Pixel 7」や「Pixel 7 Pro」、昨年の「Pixel 6」や「Pixel 6 Pro」などがこれに相当する。
もうひとつは普及価格帯に位置付けられるモデルで、俗に「A」ラインとも呼ばれる。今年8月に発売された「Pixel 6a」もそのひとつで、型番の末尾に「a」が付与される。ちなみに、完全ワイヤレスイヤホンの「Pixel Buds」シリーズにも「Pixel Buds Pro」と「Pixel Buds A-Series」がラインアップされ、同様に上位モデル、普及モデルに位置付けられる。
販路
また、「Pixel 7」と「Pixel 7 Pro」の違いについては、本稿で順に説明するが、ディスプレイサイズやボディサイズ、バッテリー容量、望遠カメラの有無などで、利用できる機能やサービスなどに、それほど大きな差はない。販売は冒頭でも触れたように、Googleストア(オンライン)に加え、auとソフトバンクでも販売される。
価格は別表の通りだが、もっとも手頃な「Pixel 7」(128GB)が8万2500円、もっとも高い「Pixel 7 Pro」(256GB)で13万9700円となっており、急激な為替変動による円安相場ながら、多くのユーザーが手にしやすい価格帯に落ち着いている。
― | 128GB | 256GB |
一括払い価格 | 12万4300円 | 13万9700円 |
分割払い価格 | 1万358円×12回 | 1万1642円×12回 |
端末返却時実質負担額 | 12万4300円(返却なし) | 13万9700円(返却なし) |
― | 128GB |
一括払い価格 | 13万4900円 |
端末購入プログラム | スマホトクするプログラム |
分割払い価格 | 3220円×23回+6万840円 |
端末返却時実質負担額 | 7万4060円 |
― | 128GB | 256GB |
一括払い価格 | 13万1760円 | 14万6160円 |
端末購入プログラム | 新トクするサポート | |
分割払い価格 | 2745円×48回 | 3045円×48回 |
端末返却時実質負担額 | 6万5880円 | 7万3080円 |
Googleストアでは一括払いと分割払いが選べ、auとソフトバンクは通常の購入方法のほかに、auの「スマホトクするプログラム」、ソフトバンクの「新トクするサポート」での分割払いでの購入も選べる。また、GoogleストアではAndroidスマートフォンやiPhoneを対象にした下取りをはじめ、18歳以上を対象にした学生割引(学生証の確認が必要)での販売も行なっており、今まで以上に買いやすい環境を整えている。
画面内指紋認証に加え、顔認証にも対応
「Pixel 7」と「Pixel 7 Pro」はディスプレイサイズとボディサイズが違うため、バッテリー容量は両機種で異なる。「Pixel 7」は4355mAh、「Pixel 7 Pro」は5000mAhのバッテリーを内蔵し、いずれも標準的な利用で24時間以上の利用が可能としている。スーパーバッテリーセーバーを有効にすることで、最長72時間までのバッテリー駆動時間を延ばすことができる。
充電は本体下部のUSB Type-C外部接続端子を利用する。USB PD3.0対応の急速充電に対応し、別売の「Google 30W USB-C 充電器」を利用した場合、約30分で最大50%まで充電することができる。ゆっくりと充電することで、バッテリーの劣化を抑えるアダプティブ充電にも対応する。Qi規格準拠の最大12Wのワイヤレス充電にも対応し、別売の「Google Pixel Stand(第2世代)」を利用すれば、「Pixel 7」を最大20W、「Pixel 7 Pro」を最大23Wでワイヤレス充電ができる。
本体のバッテリー残量を使い、他のワイヤレス充電対応機器を充電できる「バッテリーシェア」も利用できる。他のスマートフォンだけでなく、Pixel Buds Proなどの完全ワイヤレスイヤホンを充電したいときに便利だ。ちなみに、同時発表のPixel Watchについては、バッテリーシェアを有効にして、Pixel Watchを背面に当てると、充電開始のアニメーションが表示されるものの、Pixel Watchのワイヤレス充電には対応していないため、正常には充電できない。Pixel Watch用のマグネット充電ケーブルをACアダプターに接続するか、「Pixel 7」や「Pixel 7 Pro」のUSB Type-C外部接続端子に接続して、充電するしかなさそうだ。将来的に、Pixel Watchもバッテリーシェアでワイヤレス充電ができるようになることを期待したい。
生体認証については画面内指紋認証に加え、顔認証にも対応する。画面内指紋認証は光学式指紋センサーを採用する。レスポンスについては指紋によって、差があるものの、昨年の「Pixel 6」シリーズに比べ、良好な印象を得た。
顔認証については、意外にも従来の「Pixel 6」シリーズまで対応しておらず、今回の「Pixel 7」「Pixel 7 Pro」で初対応となった。セキュリティ面を考慮してか、顔認証は画面ロック解除のみに適用でき、支払いやサイトへのアクセスには、指紋認証やPIN、パスワードなどの入力が求められる。マスクやサングラス着用時にはロック解除ができないが、メガネについては顔情報登録時にメガネをかけていなくても解除できる。
ひとつ注意が必要なのは暗い場所での対応で、就寝中など、真っ暗な場所では顔認証が反応しなかった。さらに、睡眠中などに第三者が顔認証で画面ロック解除をしないように、顔認証の設定画面では「目を開く」という項目が表示されている。
Google独自開発チップセット「Tensor G2」搭載
昨年10月、Googleは「Pixel 6」と「Pixel 6 Pro」において、初の自社開発となるチップセット「Tensor(テンサー)」を採用し、今年8月に発売された「Pixel 6a」にも搭載した。今回の「Pixel 7」と「Pixel 7 Pro」では、第二世代となる「Tensor G2」チップを搭載する。
Androidプラットフォームのスマートフォンに搭載されるチップセットとしては、米クアルコム(Qualcomm)製の「Snapdragon」が圧倒的に強く、サムスンが発売する国と地域によって、自社製チップセットの「Exynos」を採用するほか、最近では台湾メディアテック(MediaTek)製の「Dimensity」を搭載したモデルを見かけるようになってきた。
Googleは自社でチップセットを開発した理由として、機械学習の情報を端末内で処理したり、自らの最先端研究で培った技術を活かし、AIや画像処理などをはじめとした各機能のパフォーマンスを高めていくことを挙げているが、裏事情としてはSnapdragonシリーズを選ぶ限り、設計などがクアルコム任せになってしまううえ、供給も不安定なことが報じられ、製品の開発スケジュールに影響が出てしまうことも指摘されている。
こうした状況であれば、自社でチップセットを設計し、あとはファウンダリー(Foundry/半導体製造工場)を確保することで、安定した調達が見込めるうえ、他製品との差別化も図りやすいという判断のようだ。ちなみに、GoogleのTensorチップは韓サムスンのファウンダリーを使い、5nmプロセスルールで生産されていると言われていたが、今回のTensor G2も同じプロセスルールで製造されているようだ。
今回のTensor G2で第二世代になったことで、どの程度のパフォーマンス向上が実現できたのかが気になるところだが、昨年のTensorを搭載した「Pixel 6」「Pixel 6 Pro」は、各社のベンチマークテストを見る限り、米クアルコム製「Snapdragon 888」を搭載した他のフラッグシップモデルに迫るパフォーマンスだとされていた。
今回のTensor G2について、Googleはどの程度の性能向上が図られたのかを具体的な数値で示していないが、「TPU(Tensor Processing Unit)」と呼ばれる機械学習の性能は、60%のパフォーマンス向上と20%の電力効率の改善を実現しているとしている。実際のベンチマークアプリなどで比較すると、Tensorを搭載した「Pixel 6 Pro」に比べ、全体のパフォーマンスは10~15%程度の向上に留まるが、AIの強化により、カメラでの夜景モードやポートレートモードの処理をはじめ、おなじみの「消しゴムマジック」や音声認識、リアルタイム翻訳など、多彩な機能がストレスなく、利用できるようになっているようだ。
もっとも現在のスマートフォンはある一定以上のクラスの製品であれば、実使用で十分なパフォーマンスが得られており、ベンチマークテストの値で一喜一憂するようなものでもないだろう。
メモリーやストレージの仕様については、「Pixel 6」「Pixel 6 Pro」から少し構成が変更されており、「Pixel 7」がメモリー(RAM)が8GBで、ストレージ(ROM)は128GBと256GBが選べる。「Pixel 7 Pro」がメモリー(RAM)が12GBで、ストレージ(ROM)は128GB/256GB/512GBが選べる。
microSDメモリーカードなどの外部メモリーは利用できないため、動画などを数多く撮影し、端末内に保存しておきたいのであれば、大容量のモデルを選びたいが、写真が中心であれば、Googleフォトにも多くのデータを保存できるので、他の容量のモデルでも問題はないだろう。ちなみに、auはいずれのモデルも256GB版の扱いがなく、128GB版のみを購入できる。
Pixel 7はSub-6、Pixel 7 ProはSub-6とミリ波に対応
ネットワークについては「Pixel 6」と「Pixel 6 Pro」の対応をほぼ踏襲しており、5G/4G LTE/3G(UMTS/HSPA+/HSDPA)/GSM(クアッドバンド)に対応する。5Gについては「Pixel 7」がSub6のみ、「Pixel 7 Pro」はSub6とミリ波にも対応する。国内の対応についてはauとソフトバンクが販売しているため、両社のネットワークには問題なく利用できるが、少し注意が必要なのはNTTドコモの5Gネットワークへの対応だろう。
この件は本誌でも石川温氏が記事で説明しているが、国内の5G対応バンド(Sub6)のうち、3.7GHz帯の「n77」「n78」はNTTドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルに割り当てられ、4.5GHz帯の「n79」はNTTドコモのみに割り当てられている。このn79というバンドは海外でもまだ多く利用されていないため、グローバル市場向けで展開されるモデルはサポートされていないことが多い。
たとえば、XiaomiやOPPOなどの国内向けの主力モデルは、いずれもn79をサポートしていない。逆に、iPhoneやGalaxyは生産台数の多さに加え、国内向けにはNTTドコモにも納入していることもあり、n79がサポートされている。少し珍しいところでは4年ぶりに復活したHTCの「HTC Desire 22 pro」は、日本市場を重視して、n79にも対応している。
こうした事情も影響して、現在はNTTドコモがPixelシリーズを扱わないようだが、ユーザー側の視点で見ると、当然のことながら、Googleストアで「Pixel 7」シリーズや「Pixel 6」シリーズを購入し、NTTドコモやNTTドコモ網を利用したMVNO各社のSIMカードを利用することが考えられる。そのため、同じNTTドコモのネットワークに接続した場合でも場所によっては、他の端末が5Gで接続できるのに、「Pixel 7」「Pixel 7 Pro」では4Gにしか接続できないことが起こり得る。
もっとも実際には4Gでも十分高速なうえ、NTTドコモはn78でもエリアが展開され、さらには4G向け周波数帯域を5G向けへの転用をスタートさせているため、実用レベルで明確な差が体感できることは少ないかもしれない。
SIMはnanoSIMカードとeSIMに対応する。eSIMについてはすでにpovoなどで動作確認情報が公開されており、「Pixel 6」シリーズ同様、幅広い環境で利用できる。
Android 13と多彩な機能を搭載
プラットフォームはAndroid 13が搭載される。「Pixel 6」シリーズ以降のモデルは、米国Googleストアでの販売開始日から最低5年間のOSバージョンアップとセキュリティアップデートが保証されており、「Pixel 7」と「Pixel 7 Pro」にもこれが適用される。
具体的には、Androidプラットフォームのバージョンアップが2025年10月まで、セキュリティアップデートは2027年10月までとなっており、長く使いたいユーザーにとっても安心できる要素であり、将来的な中古市場でもリセールバリューが下がりにくいと判断されることにつながるかもしれない。
冒頭でも説明したように、PixelシリーズはGoogleが提供するサービスや技術、AIなどを活かすためのスマートフォンという位置付けだが、「Pixel 7」「Pixel 7 Pro」にも多彩な機能が搭載される。この1~2年、筆者の周囲ではPixelシリーズを使う業界関係者が増えてきたが、その理由として、Pixelシリーズの音声認識やリアルタイム翻訳の機能が充実してきたことが挙げられる。昨年の「Pixel 6」シリーズのレビューでも触れたが、レコーダーで音声を録音しつつ、自動的に文字起こしをしたり、対話形式で翻訳しながら会話するといった使い方が着実に浸透しつつある。
折しも日本では入国制限が撤廃され、インバウンド需要が増え、円安の影響があるものの、日本から海外へも渡航しやすい状況になりつつある。こうした状況下において、Pixelシリーズによって実現されるリアルタイム翻訳や文字認識翻訳の機能は非常に有用なものであり、Pixelシリーズを選びたくなる大きな理由のひとつになるはずだ。
Googleは「Pixel 7」シリーズの発売に際し、若い女性のペアが「Pixel 7」や「Pixel 7 Pro」の多彩な機能を駆使しながら、タイを旅するCMを公開している。おそらく、テレビなどで見かけた人も多いだろうが、非常にわかりやすい内容で、「Pixel 7」シリーズを持って、旅に出かけたくなる仕上がりだった。YouTubeで公開されているので、ぜひ一度、ご覧いただきたい。
からの記事と詳細 ( Google「Pixel 7/7 Pro」、「Tensor G2」でモバイルライフを次のステージへ - ケータイ Watch )
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