【カイロ=久門武史】アフリカで携帯電話を使った決済が一段と広がっている。世界の昨年のモバイル決済額の7割に当たる7千億ドル(約100兆円)をアフリカが占めたとの調査がある。地元のフィンテック企業に域外から投資が相次ぎ、米カード大手ビザがケニアのモバイルマネー大手と提携するなど、成長性をにらんだ動きが相次いでいる。
米ビザなど外資進出
ケニアでモバイルマネーの先駆けとなった「エムペサ」を運営する通信大手サファリコムは6月、ビザと組み、インターネット決済に使えるバーチャルカードを発行した。「エムペサは過去15年で単なる送金から強固な決済の基盤に成長した」とサファリコムのピーター・ンデグワ最高経営責任者(CEO)は強調した。
エムペサは2007年に登場し、利用者は5千万人超に拡大した。ケニアのモバイル送金額は同国の国内総生産(GDP)の5割を超えたとされ、既に金融サービスの主要な担い手だ。ビザとの提携でエムペサの利用者は世界的な決済網を使えるようになり、ビザはエムペサの顧客基盤を足場にアフリカ市場への浸透を狙える。
通信会社の業界団体である英GSMAによると、21年に世界で決済されたモバイルマネー1兆ドルのうち、7014億ドルがアフリカでだった。前年比増加率は39%と世界の31%を上回った。
GSMAは「モバイルマネー」の定義について、携帯電話を使った送金やお金の受け取りで、銀行口座を持たない人にも使えるサービスとした。伝統的な銀行を利用する手段として携帯電話を使うモバイルバンキングは除外した。従来型の銀行やクレジットカードにリンクするアップルペイやグーグルペイのような決済サービスは含まないとも明記した。
GSMAは人口が急増する低中所得国で「モバイルマネー市場が飽和するのは遠い先だ」と指摘し、特に成長が見込める国としてナイジェリアやエチオピア、アンゴラなどを挙げた。
銀行口座を持たない人の間で広がる
アフリカの多くの国に共通するのは、従来型の銀行サービスが行き渡っていないところに携帯電話による通信環境が急速にととのったことだ。固定電話より先に携帯電話が普及し、手軽なモバイルマネーが銀行口座を持たない大半の人の間で広がった。
インフラが乏しかったためかえって技術革新が一足飛びに進む「カエル跳び」現象は、アフリカで金融分野のスタートアップ企業が飛躍する下地となった。ユニコーン(企業価値が10億ドル以上の未上場企業)も続々と現れている。デジタル決済を手掛けるナイジェリアのフラッターウェーブは2月に新たな資金調達ラウンドで2億5000万ドルを獲得し、企業価値を30億ドルに高めた。
こうして生まれた新興企業のサービスが、新たな市場を生み出す循環ができつつある。そのひとつが保険業だ。保険に縁の遠かった市民にモバイル決済で少額から加入できるデジタル保険をウガンダなどに提供するアヨ(aYo)は、利用者が1500万人を突破した。
日本企業も投資や進出に動く。ソフトバンクグループ傘下のビジョン・ファンドは21年、ナイジェリアのフィンテック企業オーペイにアフリカ向けでは初めて投資した。住友商事はエチオピアの携帯通信事業に参入すると決め、英ボーダフォングループなどと共同でエチオピアに合弁会社を設立した。
国連の推計によるとアフリカの人口は50年に約25億人とほぼ倍増する。米マッキンゼーは8月末の報告書で、アフリカでは決済の9割がまだ現金だとし「アフリカのフィンテック企業の収入額は25年までに現状の8倍に達する可能性がある」と分析している。
からの記事と詳細 ( アフリカのモバイル決済、一足飛びで普及 世界の7割 - 日本経済新聞 )
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