世界中の30年にわたるデータを分析
今回の報告は、GBD(Global Burden of Disease study:世界の疾病負荷研究)2020の一環として、特にアルコールのリスクについて分析したものです。GBDは米国ワシントン大学保健指標・保健評価研究所(IHME)を中心に、152の国や地域の大学、 研究所、政府機関が参加して行われている共同研究です。
この研究のなかでは、アルコールが関係する病気として、脳卒中、糖尿病、がん、ケガなど22種類について1990〜2020年の30年間にわたるデータを調べました。ここには、世界204の国・地域に住む15〜95歳以上が関わる情報が含まれています。国や地域、年齢、性別によって病気の種類や死因が異なりますから、5年ごとの単位で、しかも国や地域別にリスクを詳しく検討しています。
ここから研究グループでは、1日の推定平均飲酒量、つまり安全な飲酒量を計算しました。これはある国や地域で病気になるリスクがいちばん小さくなる飲酒量です。
基準になる単位のお酒1杯は、純粋なアルコール10gを含む量(アルコール度数13%のワイン100ml、3.5%のビール375ml、40%のスピリット30ml)としています。
男女差は見られず
この分析からわかったのは、年齢が高いほど許容される飲酒量は増えるということでした。安全な飲酒量は国や地域ごとの違いはあるものの共通した傾向が見られました。
具体的には、安全な飲酒量は39歳以下が0〜0.6杯、40歳以上は0.1〜1.9杯の範囲になり、40歳を境に範囲が変わります。どの地域でも40歳以上のグループでは、少量の飲酒であれば、心臓や血管の病気、糖尿病になるリスクの低下が見られ、そのために安全な飲酒量が押し上げられるという結果です。39歳以下のグループでは、少量の飲酒でも健康によいということはなさそうでした。
また、年代による死因や病気の違いが安全な飲酒量に影響していました。39歳以下のグループでは、事故や自殺なども含めたケガが最も多く、40歳以上のグループでは、心臓や血管の病気と生活習慣病が最も多く見られました。すべての年齢グループで、健康リスクに男女差はありませんでしたが、男性は飲酒量が多いことから飲酒量の問題がより身近といえそうです。なお、世界全体で見たときに、2020年に健康にとって有害な量のアルコールを摂取していた人(およそ13億人)の8割近くが男性で、6割が39歳以下でした。
若い世代ではアルコールの影響を受けやすいという結果です。特にケガのリスクがそこに影響すると見られます。ノンアルコールや低アルコールなどのバリエーションは増えていますので飲み物の選択を工夫するのがよさそうです。この調査結果は、今後のアルコールとのつき合いをアップデートするきっかけになるかもしれません。
<参考文献>
GBD 2020 Alcohol Collaborators. Population-level risks of alcohol consumption by amount, geography, age, sex, and year: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2020. Lancet. 2022 Jul 16;400(10347):185-235. doi: 10.1016/S0140-6736(22)00847-9. PMID: 35843246.
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(22)00847-9/fulltext
The Lancet: Alcohol consumption carries significant health risks and no benefits for young people; some older adults may benefit from drinking a small amount of alcohol
https://www.healthdata.org/news-release/lancet-alcohol-consumption-carries-significant-health-risks-and-no-benefits-young
からの記事と詳細 ( お酒は健康にいい? 悪い? 海外研究によると40歳を境に「安全な飲酒量」が変化する!? - FYTTE )
https://ift.tt/bsf9eFK
No comments:
Post a Comment