新型コロナウイルス禍が2年以上続き、子どもの運動不足や、「スクリーンタイム」(スマートフォンなどを見る時間)の増加による健康への影響に懸念が上がっている。夏休みシーズンに入っても新規感染者数は増加の一途で外出をためらいがちだが、専門家は外遊びや運動時間を積極的に増やす対策の必要性を訴える。(原田遼)
◆来院、コロナ禍前の2倍
「きょうも首ガチガチだね」。整体院「快」(東京都世田谷区)の小沢明子院長(49)が施術中の中学2年男子(13)に話し掛けた。
男子は昨春から通院を続けている。コロナ禍で外出する機会が減り、友人とのオンラインゲームに熱中するうちに眼精疲労の症状が出た。その後、スマートフォンで短時間、ゲームをするだけで頭痛がするようになったという。
小沢院長によると、2020年春の緊急事態宣言が終わったころから来院する小中高生が増え始め、現在はコロナ禍前の2倍という。以前の子どもの来院目的は「体を柔らかくしたい」などだったが、今はほとんどが治療だ。患者の多くはスクリーンタイムが長いという。小沢院長は「肩痛、腰痛、頭痛など大人のような症状ばかり。姿勢の悪さも目立ち、発育が心配だ」と嘆く。
◆体力テスト、過去最低
コロナ禍では運動不足によって子どもの体力低下も指摘され、2021年度の全国体力テスト(小学5年と中学2年対象)では、持久走など8種目の合計点が19年度から最大3.2%下がり、男子は小中とも過去最低となった。
こうした状況に「武蔵小杉森のこどもクリニック」(川崎市)の大熊
小児肥満の患者約60人に運動の機会を尋ねたところ「ほとんどしない」「週に1、2回」がそれぞれ約4割を占めた。大熊院長は「一度染み付いた生活習慣を変えるのは難しい。コロナ禍で運動しなくなった子が、コロナが終息したとして、以前のように体を動かすかどうか」と話す。
◆震災後の福島と似通う
小児肥満は11年の東日本大震災後、原発事故の影響で外遊びが減った福島県で顕在化したことがある。同県の肥満傾向児は小学3年生で震災前に比べ5.12ポイント上昇し13.47%になるなど増えた。県は運動を促す子ども向けの指針をつくるなどして改善に取り組んでいる。
指針づくりに関わった同県郡山市の菊池信太郎医師は「コロナ禍の子どもの運動不足は、震災後の福島とそっくりで、影響は長引くだろう。子どもは感染しても重症化しにくいことを踏まえ、肥満リスクにも目を向けてほしい」と指摘。運動を促すイベントや商店での食育キャンペーンなどを例に挙げて、「行政や地域コミュニティー、保護者らで対策をしないといけない。子どもが大人になってから後悔しても遅い」と話した。
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