脂っこい物を食べても、このお茶さえ飲んでいれば大丈夫―。そんな印象を与える「免罪符型」健康食品の広告がテレビやインターネットで多く流されている。東京大学大学院医学系研究科の研究チームは、免罪符型広告を見た人の間で「健康食品を食べれば不健康な行動をしてもよい」との認識が強まったと発表した。
健康食品の免罪符型広告の影響
▽免罪符型広告が25%占める
「健康食品の効果は限定的とされています。健康食品は乱れた食事や運動不足を簡単に解消できる“魔法のつえ”ではありません」と、研究チームの奥原剛准教授は警告する。例えば、脂分の多い揚げ物を多く食べた後に、それを帳消しにしてくれる健康食品はないという。
ところが免罪符型広告では、健康食品が脂質の多い食品をたくさん食べることの「免罪符」になる。つまり、どんどん食べても大丈夫と思わせるものであるかのように描かれている。このため「健康食品を食べていれば、健康行動をしなくてよいという認識を視聴者にもたらす可能性があります」と指摘する。研究チームの調べでは、健康食品の動画広告の中で免罪符型が25%を占め、最も多かったという。
▽一歩引いた見方を
そこで今回、免罪符型広告が視聴者に与える影響を調べた。研究チームの家れい奈さんによると、調査会社に登録した男女788人(平均年齢40歳)を免罪符型の健康食品の広告動画を3本見る人(介入グループ)と、健康食品とは無関係の動画を見る人(対照グループ)にランダムに分類。見る前と後で、健康行動への認識に関する質問を行い、気持ちがどのように変化したかを比べた。
その結果、介入グループは対照グループに比べ、広告動画を見た後に「健康食品を食べれば健康行動をしなくてよい」という認識が強くなり、統計的に差が認められた。こうした認識が広告動画を見た後に強くなった人は介入グループでは45%と、対照グループの24%の倍近くなった。
家さんは「健康食品は、生活習慣が改善する方向に動くきっかけになるような使い方を勧めます」と指摘。動画広告の内容を改善することが重要と説いている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2022/07/28 05:00)
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