増収減益の第3四半期
2021年度通期での売上高は4兆1738億円。半導体不足などの影響を受けた流通事業を除いて増収を果たしたが、営業利益は8212億円で、法人事業やヤフー、LINEが利益を伸ばしたものの、携帯電話通信料金の値下げが影響した。
ソフトバンク 代表取締役社長執行役員兼CEOの宮川潤一氏によれば、通期業績予想に対する現在の進捗としては、順調で達成の見込みはたっているという。
携帯電話では、かねてからの通信量値下げの影響が大きいとしつつも、端末の販売回復により3%の増収だった。これについて宮川氏は「昨年度はコロナ禍で短縮営業など制限があった。大幅に伸びた端末があったというわけではない」と説明。
緊急事態宣言などの影響により、大きく経済活動を制限された2020年度第3四半期と比較して、制限が緩和されたことにより端末販売が順調だったことを明かした。
一方で、通信料金値下げなどの影響により、コンシューマー事業の営業利益は5187億円。前年同期の5751億円に対して、564億円の減益となった。
ワイモバイルが成長牽引
スマートフォンの累計契約数の伸びは順調で、2689万契約と前年同期比で6%増を記録した。
特に、低廉な料金でサービスを提供するワイモバイルが成長ドライバーとなったと宮川氏。その要因については「他社に見劣りしない、ワイモバイル自身の魅力」と分析する。ワイモバイルでは現在、990円(各種割引適用後)と低料金なプランが利用でき、MNPで他キャリアから乗り換えるユーザーが非常に多いという。
一方、ソフトバンクではオンライン専用ブランドである「LINEMO」も合わせて提供している。それでもワイモバイルが選ばれるのは、リアル店舗で実際に説明を聞いて、相談しながら加入できる環境があるという強みによるものと説明した。
モバイル契約の伸び悩みを心配していたというが、期を重ねるごとに順調な伸びを見せており、現時点で純増数39万件となった。今後もこの傾向は続くと見て「ようやくソフトバンクらしさが戻ってきた」と宮川氏は胸をなでおろした。
同社では、ヤフーやLINEをグループに持つ強みを活かし、PayPayやLINE MUSIC、PayPayカードなどとモバイルのサービスを連携させることで、解約率を大きく低減させることに成功した。宮川氏によれば、複数のサービスを利用するユーザーはモバイル単体のユーザーと比較して解約率は半分にまで低減するという。
今春には5Gで90%カバーを目指す
現在のソフトバンクの5G人口カバー率は85%。基地局数としては2万3000局を数えるという。
宮川氏は、今春までには人口カバー率を90%まで高めるべくエリア整備を実施している最中とした。同時にネット上でもたびたび叫ばれる5Gの「パケ止まり」問題についても言及。
5Gのエリアが十分でなく、4Gエリアとの行き来が多いためにそうした問題が発生すると説明し、これを解決するにはある程度のボリュームで5Gエリアを展開しなくてはいけないとする。
加えて、宮川氏が描くSA(スタンドアローン)普及後のイメージ像を語る。SAではNSAではできないさまざまなことができるようになるとした上で、それが一般的になればWi-Fiの利用とは違った進化があると説明。
一方で、現在の料金低廉化の流れが続くのであれば、収益構造の悪化により日本が最新の技術から置き去りにされる国になってしまうのではという危機感も示す。そうした事態を回避するため、収益性も確保しつつ中長期的な戦略を練っているとした。
5Gエリアの展開では最低でも5万局の基地局が必要という。下がり続ける携帯料金の中でこれまでと同じ工事計画・運用では収益性が低下するため、見極めが必要とした上で「5Gでは4G時代よりも投資が減るかも知れないという見方も少ししている」と見解を示した。
また、半導体不足が各所で叫ばれる中だが、これを見越して計画を進めていたため、工事の調整などは多少発生しているものの大きな影響はないという。
PayPayも順調な成長
PayPayの登録ユーザー数は、4500万人超。決済回数は26億3000万回と前年同期比で85%増と大幅に上昇した。
また、第3四半期累計での決済取扱高は3兆9000億円、売上高は207億円で前年同期比2.7倍と順調な成長を見せている。2021年10月より、中小店舗における決済手数料が有料化されており、一部では利用の落ち込みも懸念されたものの、安定した伸びを見せた。
宮川氏は「10月から逆転して、収益性が高まった。12月は相当いい数字だった」とコメント。さらに「4500万人程度でとどまるサービスではない」とさらなる利用者獲得に向けて意気込みを見せる。
キャンペーンなどの呼び込み施策は大きな支出になっていると見られるが「まだ伸びるな、と感じるうちは(顧客)獲得費を投入して成長を楽しみたい」と語った。また、スーパーアプリとしてコア事業に育てたいとも語り、グループ内で点在する金融関係のサービスを整理した上で連携させる考えも示された。
一方で、ユーザー数増加には限界があるということは承知しているとして、それがいつの段階なのかはわからないとしつつ、コード決済がいかに使われるかを見極めつつ、最終的な増加のゴールにしたいとした。
PayPayでは、利用金額を翌月にまとめて支払える「PayPayあと払い」の提供を開始しており、決済回数や決済単価の向上を図り、さらなるサービスの拡大を目指すとしている。
質疑応答では
――LINEの個人情報管理問題について、政府の検討会の決定に対する受け止めは
宮川氏
個人情報取り扱いは、我々からもチーフオフィサーを任命してZHD側とルール作りをしている。政府がすすめる個人情報の方針は、我々がついていかないと業界に残れないというくらいの危機感をもって本気で取り組んでいる。政府方針については賛同する。
我々としては、国内で展開するサービスは、現在のルールの中で要求されたものはすべてやっていくという姿勢。今の所なにかトラブルがあるわけではなく、このまま粛々と情報管理は強化していきたい。
――「BALMUDA Phone」について、なぜスマホに知見があるはずのソフトバンクが扱ったのか
宮川氏
ちょっと趣旨がよく理解できていないので、違う回答だったら申し訳ない。家電の頃からユニークなメーカーだと思い、好意的に見ていた。その会社が新たなデザインでスマホで勝負したいと。私は(話が進んだ)あとから聞いたが面白いんじゃないかと。
iPhoneも当時、独占で展開して今のソフトバンクができあがった。独占的な扱いが上手く講ずればいいなと思っていた。「なぜ」と言われると日本のメーカーがチャレンジしたいというのであれば、支援できるところはしたいと思った。
――正直、BALMUDA Phoneを扱って良かった?
宮川氏
良かった。言いたいことはわかるが、初めてみないと次につながらないと思う。よかったという答えにさせてもらえれば。
――LINEMOの契約数は? 今後LINEMOはどのような方向になるのか
宮川氏
毎月減ってはいないが、爆発的にユーザーが増えているわけでもない。ワイモバイルとLINEMOの差別化が今はない。リテラシーが高ければWebで手続きでき、差異もない。差別化はやっていこうと常々考えている。その時期が来たら、かたちとして示していきたい。
――PayPayの黒字の時期は?
宮川氏
獲得コストをどこで絞っていくかということだが、直近で言えばもうひと暴れさせてほしい。伸び盛りなのでほかへの投資を抑えてでも伸びているものに投資をしていきたい。何年も続けるのかというと、事業ですからどこかで収益は回収する。
たくさんのユーザーに使ってもらえるアプリに育ってきた。獲得のコスト効率が悪くなってきたなと思ったらそのコストを絞ってどの程度の黒字になるか試して見るかも知れない。
PayPayの子会社化時期としては、今のところは決まっていない。タイミングはどこかで来年度中には来るかなと想像はしている。PayPayの上場もサム・オブ・ザ・パーツ(Sum of the Parts、企業価値の評価で評価手法のひとつ)してもらうひとつの手法、選択肢でもある。バランスを見て考えていきたい。
上場はしたいが、それがゴールではない。上場後に一番成長するかたちはどれなのかというのを議論している。上場後も成長率が加速するのであれば、黒字がどのタイミングであるべきかを判断していきたい。
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